スパングル・コール・リリ・ライン活動20周年を記念したオールタイムベストと新曲 | Numero TOKYO
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スパングル・コール・リリ・ライン活動20周年を記念したオールタイムベストと新曲

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Spangle call Lilli line(スパングル・コール・リリ・ライン)のベスト盤『SCLL』と、新曲「長い愛」をレビュー。

色あせることのないたおやかな美しさと、心地よいさみしさ

Spangle call Lilli lineの音楽は、空の色の移り変わりや雲の流れに似ている。そんな風にたおかに姿を変えていくものを彷彿とさせるのだ。今回リリースされた『SCLL』は、マイペースに活動を続けてきた彼らの20周年を記念したベスト盤。楽曲はリリース順に並んでいるわけではなく、キャリア初期の初期衝動を感じさせるプログレッシブな曲の次にはエレクトロニックなフレーズを絡めた洗練さが際立つ近年の曲が続いたりと、押しては返す波のような構成がまた新たな世界観を提示してくれている。とは言え、全編を通して音楽性にブレはない。透明感あふれるサウンドによるミニマルなフレーズに、平熱のまま紡ぎ出されるヴォーカルが作り出す、やわらかで流麗な美しさ。歌いこなすのが難しい掴み所のない旋律も相まって、ニューウェーブやポストロックの影響を受けながらも唯一無二と言うしかないその音楽性は、20年のキャリアのどの時期を切り取っても、決して色あせる事がない。

そんな本作には、「長い愛」と題された新曲も収録されている。彼らの曲の中でもキラキラと生命力あふれる……というよりは、アルバム『PURPLE』(2008年)を思わせる「翳り」が魅力的。冒頭に書いたような彼ららしさを特に堪能できる楽曲だ。コーラスをたっぷりかけたギターやさりげないシンセに骨太なベースが絡み合い、まさにMVのような夜明けや暮れなずむ夕景が目の前に思い浮かんでくる。そんな自分だけの時間に浸る時に聴いていたい、どこか心地よいさみしさをも感じさせるのが彼らのユニークなところだ。

なお、この曲のリリックは元チャットモンチーの福岡晃子によるもの。ヴォーカル・大坪以外がリリックを手がけるのはレアだ。これまでよりストレートな言葉選びが彼らの世界への間口を少し広げていて、初心者にも優しく、また長年のファンにとっても新鮮な、ベスト盤にぴったりの1曲となっている。

Spangle call Lilli line『SCLL』
2CD+1DVD ¥5,400(felicity/2020年2月5日リリース)

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Text:Nami Igusa Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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