コロンビア出身の人気女性シンガー、カリ・ウチス待望の新曲
最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Kali Uchis(カリ・ウチス)の「Solita」をレビュー。
自身のルーツを色濃く打ち出した、魅惑のラテンR&B
2019年、そして2010年代が終わろうとしている。この年代を振り返ってみると、特にその後半では、欧米圏のポップミュージックにおいて多種多様な人種のアーティストが自身のルーツを表現に色濃く打ち出し、それらがかつてないほどに世界的に広く聴かれるようになっていったことにとてもワクワクさせられた。ルイス・フォンシとダディー・ヤンキーによるスペイン語の楽曲「Despacito」の2017年の大ヒットを思い出す人もいるだろう。カリ・ウチスもそんなムーヴメントを代表する1人だ。両親がコロンビア人でアメリカとコロンビアを行ったり来たりしながら育ったという彼女。早くからスヌープ・ドッグら大御所からタイラー・ザ・クリエイターなどのトレンド・セッターからも注目を集め、豪華な客演を招いた2018年のデビューアルバム『Isolation』も絶賛を浴びた。「Solita」はそのアルバム以来の新曲。アルバム同様、R&B、ネオ・ソウルやファンクを下地にした楽曲だが、リバーブの効いたヒヤリとした質感のリフレインがサイケデアを演出し、彼女の甘くスモーキーな歌の蠱惑(こわく)的な魅力を存分に引き立てている。なにより興味深いのは、そのリフレインのフレーズやヴォーカルのメロディが、非常にラテン・オリエンテッドな音階を使っていること。ビートは「Despacito」と同じレゲトン風のリズムとなっていて、歌詞も大部分はスペイン語だ。「悪い男と付き合うくらいなら、一人でいるほうがマシ」という独立した強さを歌ったその歌詞は(“Solita”とは”一人で”という意味)、アルバム『Isolation』の意味とも通じていて、自分のルーツをはっきりと打ち出していく彼女の姿勢を感じ取れる。でありながらも、英米の音楽シーンとも密接に混ざり合い、ラテン・ミュージックというジャンルに留まらない広がりを見せる彼女は、まさに時代を代表するポップ・アーティスト。来年以降に期待される次作の仕上がりも楽しみだ。
Kali Uchis 「Solita」
https://smarturl.it/KaliUchisSolita
Text:Nami Igusa Edit:Chiho Inoue