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ファッショナブルなMVにも注目! ドリーム・ポップデュオ、ジオウルフの最新アルバム
最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Geowulf(ジオウルフ)の『My Resignation』をレビュー。
曇りない明るさを陰影が引き立てた、カラフルなドリーム・ポップ
ギターのトマ・バンジャミンと、オーストラリア出身のヴォーカル、スター・ケンドリックからなる男女デュオ、Geowulf(ジオウルフ)。現在、バンドとしてはロンドンを拠点にしているようだが、デビューアルバム『Great Big Blue』(2018年)を聴く限りでは、よく晴れた日のLAのビーチだったり、南国のリゾートなんかを思い起こさせられる、突き抜けるように爽やかで開放的なサウンドが印象的なバンドだ。男女デュオのドリーム・ポップ・バンドといえば、ついビーチ・ハウスと比べたくなるが、神秘的で翳りのある彼らを“影”とすれば、ジオウルフはネオアコ~ギター・ポップの明るさを根っこに感じさせる、“光”のドリーム・ポップと言えるだろう。その彼らのセカンドアルバム『My Resignation』は、前作同様、全編を通してキラキラと色あざやかなギター&シンセサウンドに彩られた、ピュアなドリーム・ポップ・ワールドが繰り広げられている。コケティッシュなスター・ケンドリックのヴォーカルは聴き手の心を浮き立たせる良い意味での能天気さもあるし、そのメロディラインや所々に聴こえるハープシコードやストリングスの音色は、前作以上の昔懐かしさを演出している。また今作ではベースやドラムのリズム・セクションが分厚く仕上げられていて、ディスコ・チューンの間にかかっても楽しく踊れそうで、クラブ・ユースも期待できそうだ。ただ一方で、楽曲のテンポが落ちるアルバム後半ではアコースティック・ギターの音色でしっとりと聴かせる展開に。寂寥感と夢見心地が入り混じることで、持ち前の明るさを引き立てる陰影が生み出された、カラフルな1枚だ。レトロでファッショナブルなMVにも要注目。
Text:Nami Igusa Edit:Chiho Inoue
Profile
井草七海Nami Igusa
東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。