国内外の気鋭アーティストが集結! 「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2021」へ | Numero TOKYO
Art / Editor’s Post

国内外の気鋭アーティストが集結! 「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2021」へ

京都で開催される国際的な写真祭 「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2021」。国内外作家の貴重な写真作品や写真コレクションを京都市内各所の歴史的建造物や近現代建築の空間に展示。第9回目となる2021年のテーマは「ECHO」。

「KYOTOGRAPHIE」は、主催するルシール・レイボーズと仲西祐介が、東日本大震災での原発事故報道のあり方をきっかけに、アートフェスティバルをメディアとして捉え、ダイレクトに伝える力のある写真に特化した展覧会として2013年にスタート。

「今年、東日本大震災から10年目、コロナ感染拡大から2年目を迎え、過去に起きたことが現在・未来へどう影響していくのか一緒に考えていきたいと思い、『ECHO』 をテーマにしました。二条城で展示する国内外5組のジャンルの異なるアーティストたちそれぞれによる3.11へのオマージュ作品『ECHO of 2011── 2011 年から今へエコーする 5 つの展示』に注目してほしいですね。 それから世界的に有名なフォトグラファー、アーウィン・オラフがコロナ禍で制作したこれからのヨーロッパを象徴する作品、難民や移民、LGBTQなどマイノリティにフォーカスした『I m Wald 』と、ロックダウン中の隔離生活を自分を被写体にして撮った『エイプリルフール』を展示します。他にも日本とフランスの古来種野菜と農業にフォーカスした作品や、水をテーマに生命の循環を考える作品など、強いメッセージのある作品が多数展示されます」とふたりは話す。「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2021」の展示の一部をレポートします。

Erwin Olaf 「アヌス ミラビリス -驚異の年-」

社会問題や社会のタブーをめぐるテーマを視覚的に緻密に捉えた作品を発表することで名高いアーウィン・オラフ。ドイツのバイエルンの森で撮影した映画並みのランドスケープ作品は必見。撮影裏を収めたドキュメンタリームービーを見てから(展示会場2階で上映)、作品をもう一度見るのがおすすめ。

Ngadi Smart 「多様な世界」「ごはんの時間ですよ」

イラスト、写真、デザイン、コラージュなどのミクストメディア制作を手がける、西アフリカ・シエラレオネ出身のヴィジュアル・アーティスト、ンガディ・スマート 。人種、ジェンダーなど弱者の声を表現。カラフルでエネルギッシュな作品から、みなぎる生命力を感じる。フライングタイガー コペンハーゲン 京都河原町ストアーでの展示のほか、出町桝形商店街とコラボレーションし、商店街の古写真と現代写真とアフリカをエコー (呼応) させたコラージュ作品「ごはんの時間ですよ」を商店街アーケードに展示。ンガディの独創性に刺激を受けること間違いない。

「ECHO of 2011─2011年から今へエコーする5つの展示」

二条城では、国内外5組のジャンルの違うアーティスト達による、3.11へのそれぞれのオマージュ作品を展示。

四代田辺竹雲斎 「STAND」

竹によるインスタレーションや現代的なオブジェを制作する四代田辺竹雲斎は、自然の脅威に対する奮起をテーマにした新作を展示。今にも動き出しそうな躍動感。展示後は分解され、竹は次の作品に再利用されるそう。

片桐功敦 「Sacrifice」

華道家・片桐功敦は 2013年から1年間福島県南相馬に住み、震災の爪痕が色濃く残る場所に花を生けた写真作品を制作。汚染土や廃棄物を入れる「黒い袋」を彷彿とさせる袋と共に展示。自然の強さと人間の過ちが心に刺さる。

二条城エリアではほかに、シャネル日本法人会長、作家、写真家でもあるリシャール・コラスが、東日本大震災後のボランティア活動を通して触れた現地の人々の哀しみを文章と写真で表現した「波――記憶の中に」や、小原一真による福島第一原発作業員を追った作品と新型コロナウィルスの医療・介護従事者に焦点を当てた作品「空白を埋める」、世界的な振付師ダミアン・ジャレがアーティストのJRや作曲家・ピアニストの中野公揮らとコロナ禍のパリ・オペラ座に招聘され制作した美しいダンス映像「防波堤」が鑑賞できる。

 

榮榮&映里(ロンロン&インリ)「即非京都」

榮榮&映里は「京都」の文化的景観の根底に水循環が深く影響していることに着想を受け生まれた新作『即非京都』を発表。展示会場である琵琶湖疏水記念館と作品の融合感は格別。

Thomas Dhellemmes、八木夕菜

両足院では、ヴェルサイユ宮殿の歴史ある「ポタジェ・デュ・ロワ(王の菜園)」で栽培が続けられている古代種の野菜を撮影したトマ・デレーム「Légumineux 菜光-ヴェルサイユ宮殿庭園の古代種」と、長崎県雲仙市の「種採り農家」岩崎政利氏の活動に着目した視覚と現像の融合作品、八木夕菜「種覚ゆ」の二展示が。野菜の美しさ、自然の力に惹き込まれる。

MIROIRS – Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか

人気作『約束のネバーランド』の原作者・白井カイウ&作画家・出水ぽすかが、シャネルというブランドからインスピレーションを受けマンガ『miroirs』(今春刊行)の作品と著名写真家による写真作品、シャネルの貴重な資料を融合させて展示。別世界へ迷い込んだかのようなワクワク感を味わって。

 

「MEP Studioによる5人の女性アーティスト展ーフランスにおける写真と映像の新たな見地」

パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)が選出した5人のフランス人若手女性アーティストによるグループ展。それぞれの写真作家たちの表現の多様性と独自性に触発される。

KG+2021

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭と連携し、同時期に開催することで、国際的に活躍する写真家やアーティスト、キュレーター、ギャラリストと出会える「KG+2021」。今回は京都市内に50を超える展示が。
その中でNumeroTOKYOでも活躍されている蓮井元彦さんの「家家」(haku kyoto)へ。コロナ下であらためて身近のものを見つめなおし、それまで見過ごしていた近所の家を題材にされたそう。写真から住まう人や、家族というものを想像する人もいると思うし、私は写真の色合いのせいか、ミニチュアの家を見つめている子供のような気持ちに。

三条両替町ビルでは新プログラム「KG+SELECT」を開催。公募から選出された9組のアーティスト作品を展示。メッセージ性の強い作品が一堂に会する。

作品に触れ何を思うか、自分のエコーを感じ取るのが、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2021」の醍醐味ではないかと思います。

京都国際写真祭 KYOTOGRAPHIE:2021
会期/2021年9月18日(土)〜10月17日(日)
場所/京都市内10カ所
http://www.kyotographie.jp

Profile

水戸美千恵Michie Mito マーケティング・ディレクター/エディトリアル・ディレクター。大学時代にジャーナリストアシスタント、ライターとして書籍、雑誌に携わる。卒業後扶桑社へ入社し、女性ファッション誌を経て『NumeroTOKYO』創刊1年目より副編集長に就任。ファッションページ制作や取材のほか連載「YOUのテキトーく」「佐久間由美子が聞く 女性表現者たちの闘い」を担当。食、旅、アートも好きなもの。座右の銘は「いつも心にナンシーを」。Instagram: @mitomiche

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