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Culture Editor's Post

フラワーアーティスト東信の巨大な花の彫刻が沖縄のビーチに

「ヌメロ・トウキョウ」の連載「今月のフラワー・アート」でもお馴染みの、フラワーアーティスト東信が世界各地の様々な場所を舞台に行っているアートプロジェクト「Botanical Sculpture」。ブラジルのサンパウロ、スリランカの海の上、タイのバンコクの街中で展開してきた巨大な花の彫刻を、2018年10月11日、12日の2日間、沖縄の百名ビーチで制作すると聞きつけ駆けつけました。

これまでもフラワーアーティスト東信として、フラワーアレンジやブーケを作るという花屋としての仕事以外に、花を贈るという行為そのもの、そこに込められた意味をライフワーク的に追求してきました。例えば、世界各地を訪ね、人々に花を配ることで、希望を届ける、フラワーショップ「希望」。そして、この「Botanical Sculpture」もそういった活動の一つ。ある時は、スリランカの海の上で、ある時はバンコクの街中で巨大な花の彫刻を作り出すというように。


Botanical Sculpture in Thailand

干潮時の姿を現す「アマミキヨ」が久高島から上陸した地点を示す石碑「ヤハラヅカサ」。
干潮時の姿を現す「アマミキヨ」が久高島から上陸した地点を示す石碑「ヤハラヅカサ」。

今回の制作の場に選んだのは、沖縄県南城市にある有数のパワースポットとしても知られる百名ビーチ。琉球の創成神「アマミキヨ」が聖なる神の島、久高(くだか)島から本島に渡ってきた場所として地元では大切にされている浜辺なのだとか。

そんな神聖な浜辺で制作する今回の「Botanical Sculpture」に使うのは、全国一位の生産量を誇る、沖縄を代表する花、ストレチア(またの名を極楽鳥花)。東さんの作品には、よく用いられる花ですが、沖縄では仏花のイメージが強く、身近な花にもかかわらずあまり気に留められてない。そんなストレチアの魅力を改めて伝えたいという思いもあったという。

残りわずかとなったストレチアを次々に生けていく。制作の様子を記録する、アフロヘアがトレードマークのフォトグラファー椎木さん
残りわずかとなったストレチアを次々に生けていく。制作の様子を記録する、アフロヘアがトレードマークのフォトグラファー椎木さん

現地の生産者から調達した約8300本のストレチアで、高さ6メートルものこれまで以上に巨大な彫刻を作りあげる。朝から制作しはじめ、次第に日が落ちはじめる中、夕方満潮を迎える頃に全部のストレチアを飾り終えた。

翌日はあいにくの雨模様、しかもかなりのザーザー降り。にもかかわらず、朝から作業を再開し、さらに赤いヘリコニアを約700本を組み合わせて、「Botanical Sculpture」は昼ごろに完成。

1日かけて制作し、翌日には解体。たった2日限りのパフォーマンス。それでも、降りしきる雨の中、東さんの作品を見に、周辺の住民やたまたま居合わせた観光客、今回の制作の様子が掲載されていた沖縄日報を見た人たちが次々と浜辺を訪れ、東さんから手渡されたストレチアの花束を抱えて帰っていく。

雨にもかかわらず、東の作品を一目見にやってきた人たち。彼らに一つ一つ束ねた花を配る東さんたち。こんもりとしていたストレチアの彫刻が丸裸の骨組みだけになっていくのを見ているとなんだかジーンとしてきました。

配りきれなかった花は全て、翌日、ひめゆりの塔といった沖縄にある、戦争祈念施設に献花しに歩いたのだそう。東さんは、実は、毎年、広島の原爆死没者慰霊碑や、長崎の平和祈念像に花を手向けているんです。そういう戦争への思いを込めた写真展「戦争と花」も、今夏、自ら企画し開催しました。

一見、派手で華やかなアート作品という側面だけでなく、地元の花農家を盛り上げるべく土地の花を使い、花を通して人と人を繋いでいく、人の心を豊かにする、花の持つ根源的な存在意義を掘り下げるべく、さまざまな形でアプローチする。フラワーアーティスト東信の活動をこれからも追いかけて行きたいと思います。

東信の希望プロジェクトとは?

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Profile

佐々木真純(Masumi Sasaki)フィーチャー・ディレクター/ウェブ・コンテンツディレクター。大学在学中から編集プロダクションにて雑誌などに携わる。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツを手がける何でも屋。操上和美が撮影する「男の利き手」や「東信のフラワーアート」の担当編集。ここ数年の趣味は山登りで、得意芸の“カラオケ”は編集部名物。自宅エクササイズ器具に目がない(なんならコレクター)。

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