ついに劇場公開!『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
嬉しいニュース! 映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』がいよいよ6月12日(金)に劇場で公開されることが決定しました。
本作品はアメリカで2019年12月に公開され、当初日本では2020年3月に公開予定でしたが、コロナウイルスの影響であえなく延期に。1月末、試写室で一足お先にお先に観せていただいた編集部のメンバーは、それぞれに「絶対この作品は紹介したい!」という想いに駆られ、『ヌメロ・トウキョウ 5月号』の特集で作品紹介を、ここNumero.jpでもプロデューサーのエイミー・パスカルにインタビューをしていました。早くこの映画の素晴らしさをみなさまに共有したくてたまらなかった!!
少女たちの永遠のバイブル『若草物語』
さて、改めまして。
原作『若草物語』は、ルイーザ・メイ・オルコットによる自伝的小説。1868年に初めて出版され以来、世界中の少女たちのバイブルであり続けてきました。この物語の魅力はなんといっても4人姉妹の豊かな個性と、成長の過程における夢と現実の間の“葛藤”を普遍的に描いたことにあるのではないかと思います。
例えば、長女メグは美人で優しい心の持ち主ですが、本当はぜいたくが好きで、きらびやかなドレスを着ている友人たちと自分をつい比べてしまう。次女ジョーは本の虫で夢想家。女の人は家にいることが当たり前だった時代において、いつか「とてもすばらしいなにごとか(※1)」を成したくてもがきます。三女ベスは学校に行けないほどはずかしがりやで内気な性格ながら、大病と静かに闘う。四女エイミーは絵の才能があり、学校でも人気者ですが、見栄や意地を張るあまりたびたび事件を引き起こします。
150年以上前の物語だなんて思えないほど、彼女たちの悩みは生々しく、普遍的。世界中の多くの人が4姉妹の誰か、もしくはそれぞれに少しずつ自分を重ね合わせてきました。
物語を“等身大”に落とし込むグレタ・ガーヴィグの手腕
俳優として活躍し、映画監督としても評価急上昇中のグレタ・ガーヴィグも『若草物語』に共感したうちの一人。「ジョー・マーチを誰だか知らない時はなかったと思う。ずっとジョーが大好きだった。彼女になりたかったし、自分が彼女だったらいいな、と思っていたわ」(※2)。
ガーヴィグはプロデューサーのエイミー・パスカルに、この物語の脚色は自分がするべきだと直談判したのだそう。「私はこの原作が本当に伝えたいことは何か、はっきりとわかっていたの。アーティストとしての女性、そして女性と経済。ルイーザ・メイ・オルコットの文章にはその全てが詰まっている。でも、この物語のその側面はまだスクリーン上で探求されたことがなかったの。私にとって、この作品は本当に自分に身近で、今現在の自分にも極めて近く、今まで作ったどの映画よりも自伝に近いと感じるわ」(※2)
結果、彼女はジョーの視点を中心に、少女時代と大人時代の時間軸を交差させることで、物語を現代的に再構築することに大成功。『レディ・バード』で少女が大人になる過程を痛々しくも愛おしく描いた彼女だからこそ、より等身大で、観る人誰もがそれぞれの登場人物と一体感を得られる作品に。有名なエピソードも忠実に、いやそれ以上に表現していて、決して原作のファンも裏切りません。
実力派の豪華俳優陣が多面的にキャラクターを掘り下げる
前出『レディ・バード』でも主人公を務めたシアーシャ・ローナンは、誰よりも想像力に溢れ、自由と自立を求めた次女ジョーを軽やかに演じ、それでいて彼女の弱さも繊細に表現。「女の幸せが結婚だけなんておかしい。そんなの絶対間違ってる! でも…どうしようもなく孤独なの」 (劇中ジョーのセリフ※3)
エマ・ワトソンはつつましくも芯を持った長女メグを好演。結婚したその先まで演じ、家庭的でありながらも自分らしくいることができることを示してくれました。「フェミニストになるためには、結婚に反発しなくてはいけない、という考えもあるけれど、結婚がメグが心の中で一番欲しかったもの。結婚式の日にジョーに言うように。私の夢があなたと違うからって、重要じゃないわけではないのよ、と」(ワトソン※2)
エリザ・スカンレンは新人ながら豪華俳優陣の中、三女ベスに抜擢。「姉妹たちと比べると、彼女はシャイだけど、静かなエネルギーとパワーを持っている。(中略)私はこの映画によって、みんなが内向的な人たちにもっと感謝できるようになったらいいと思うの。私たちはとても外交的な世界に生きていて、その報いは集団性や騒々しさ、興奮。だから、静けさや親切さの中に強さを見出して欲しい。物思いに更けることはとてもワクワクすることよ」(スカンレン※2)
今最も注目を浴びる女優の一人、フローレンス・ピューは圧倒的な存在感で”ただ甘やかされた少女”から”情熱を秘めたリアリスト”として四女エイミー像を一新。「(前略)グレタの脚本に私がすぐに恋に落ちたのは、エイミーの自分の輝きのための探求や、失敗した時の彼女の人間らしさが描かれていたから。もしかしたら、私たちはみんなジョーよりエイミーに近いのかも」(ピュー※2)。 「フローレンスは、今まで誰も演じたことのないエイミーを作り上げたわ。彼女のスパイスが効いてるの」(ガーヴィグ※2)
ほかにも4姉妹の母親役のローラ・ダーンはマーチ夫人の“完璧な”母親の弱さも垣間見せることで姉妹と対等な目線で話す一人の女性として演じたし、マーチ伯母はレジェンド俳優メリル・ストリープによって厳しくもコミカルに演じられ、親近感の湧く存在に。
ティモシー・シャラメはマーチ家の隣に住む孤独な少年ローリーをときに儚く、ときに茶目っ気たっぷりに演じ、またしても世界中の女の子を夢中にさせてくれます。物語の重要なキーである、ローリーとジョーの関係には、結末は原作で知っていたとしても終始やきもき。
自分らしく進むために自信を与えてくれるストーリー
原作が出版された時代と比べ、現代は女性も芸術を創造し、お金を稼ぎ、結婚も自由に選択することができるように。
「この物語は、いつの時代よりもまさに今に適切よ」とジョーを演じたローナンは言います。「なぜなら、若い女性が自分の道を進むための自信を見つけるストーリーだから。人生のどんなタイミングに立っているかによって、物語の見方も変わってくるわ。数年間エイミーになっていたら、今度は突然ジョーになって、次はメグで、マーミー(母親)になって、もしかしたらベスに戻るかも。どのキャラクターにも自分を見出せるわ」(※2)
現代を生きるすべての女性の、あるいは性別に関係なく夢と現実の間でもがく人々の新たな指針として、この映画も原作同様に長きにわたって愛される作品になるに違いありません。
本年度アカデミー賞6部⾨にノミネート、⾐装デザイン賞を受賞
アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した本作、衣装にも注目です。デザイナーは『アンナ・カレーニナ』でも同賞を受賞した、ジャクリーン・デュラン。物語と時代背景に忠実でありながら、登場人物の個性を最大限に引き出しています。例えば、同じ生地を所々で使って姉妹の服を縫い、一つの時代で使った生地を次の時代でも使うことで、おさがりでの節約を反映したりなど、そのこだわりは細部にまでおよびます。
ほかにも19世紀のレシピ本を用いて当時を再現した食事、裕福ではないけれどカラフルで温かく、居心地のいいマーチ家のインテリアなど、見どころが盛りだくさん。
ああ公開が待ち遠しくてたまりません! おおげさでなく、きっと公開中に10回、DVD化されてから100回は観るだろうな、と思っています。みなさんもぜひ、観てみてください。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
監督・脚本/グレタ・ガーウィグ(『レディ・バード』)
原作/ルイーザ・メイ・オルコット
製作/エイミー・パスカル、デニーズ・ディ・ノヴィ、ロビン・スウィコード
音楽/アレクサンドル・デスプラ
出演/シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、エマ・ワトソン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2020年6月12日(金)全国ロードショー
storyofmylife.jp
※1『若草物語』オルコット/著 山主敏子/訳(文研出版)より
※2『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』プレスリリースより
※3予告編動画より