25周年を迎える「アンテプリマ」、荻野いづみにインタビュー | Numero TOKYO
Interview / Post

25周年を迎える「アンテプリマ」、
荻野いづみにインタビュー

イタリアを拠点にクリエイションを発信し続ける「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」が2018年で25周年を迎える。ひとつの節目を迎えた同ブランドを率いるクリエイティブ・ディレクター、荻野いづみのインタビューをお届けする。

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イタリアブランドのアジア展開を手がけるなど、ビジネスの世界で才覚を表した荻野が「アンテプリマ」を創立したのは1993年。1998年からは日本人女性として唯一ミラノコレクションに公式参加している。さらに同年ワイヤーバッグを発表し、ブランドを象徴する大ヒットアイテムに。今では全世界に約80店舗を展開するブランドへと成長してきた。ファッションを通してイタリアを広めたこれらの功績が認められ、2016年にはイタリアの文化人を表彰するTAOMODAのファッション部門を日本人としては初めて受賞するという快挙も成し遂げた。ブランド立ち上げから四半世紀という時を経て、今なお彼女が目指すものとは?

ワイヤーバッグが生まれるまで

──もともとはファッションビジネスに携わってきた荻野さんがブランドを立ち上げたきっかけとは何だったのでしょうか?

「私はイタリアブランドのファーイーストすべてのマーケットを広げていくという仕事をしていましたが、幸運にもそのブランドが成長していく過程をずっと見る機会に恵まれました。アジア、特に日本でのマーケット拡大に貢献することができた頃、社長に『いづみもブランドを立ち上げたら?』と提案されたんです。成功事例を間近に見てきたので、私にもできるかもしれない、とにかくチャレンジしてみようとそのとき思ったんです」

──ビジネスウーマンから、クリエイティブ・ディレクターへ。華麗な転身を遂げた荻野さんが掲げる、25年間変わらないブランドコンセプトとは?

「上質であること、そしてしっかりしたものづくりを提供したいという思いが常にあります。それは25年間ずっと変わりません。そして誰も見たこともないものを作りたいという思いが強かったんです。何かスペシャルなマテリアルを使ったアイテムを作りたいというところからワイヤーバッグは生まれました」

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25周年を記念した2018年春夏メインコレクションの新作、RINASCERE(リナッシェレ)

──ワイヤーコードという素材に出会ったきっかけは?

「スペシャルなアイテムを作ろうと模索していた頃、『アンテプリマ』を立ち上げるより以前からの知り合いだったエスタ・マルチアーニというバッグデザイナーと素材展に行き、そこでワイヤーコードを見つけました。『アンテプリマ』はニットを得意としていましたので、そこでワイヤーを編んでみようと思いついたのです。できあがったサンプルを見て、周りからは『こんなものは売れません!』という散々な反応。ショックを受けましたが、せっかく作ったものだからと伊勢丹で販売したところ、1週間で売り切れてしまったのです。周りからの期待も薄かったため、何も宣伝していなかったのですが、当時はファッションに興味があって、自分でいいものを探そうとしているお客様が多かったのだと思います」

──荻野さんの強い思いで作り上げたワイヤーバッグの大ヒットにより、ブランドの成長が加速していったのですね。25年という年月、常に新しいアイデアをファッションやバッグのデザインに落とし込んできた原動力とは何でしょうか?

「現状に満足していないということでしょうか。次はもっとうまくできるんじゃないかって、常に思っているんですよね。よりよいものを作りたい思いはいつもあります。ワイヤーバッグももっと細いワイヤーコードでできないかなど、今なお試行錯誤を続けています。そのスピリットは常に持っていたいですね」

──荻野さんにとって一番のインスピレーション源とは?

「インスピレーションって色んなところで得られると思うんです。旅行しているときだったり、自宅でお風呂に入っているときだったり、ふとアイデアが降りてくることが日常的にあります。ただ、柔軟な頭を保つためにはモダンアートを鑑賞することは欠かせないと思います。私は森佳子さん(=森美術館理事長)と親しくさせてもらっていて、各国のビエンナーレなど、アート旅行に定期的にご一緒させてもらっています。周りにもアート好きな人がたくさんいて、皆が先生のように私に知識を授けてくれます。既成概念を見事に覆してくれる作品が、脳に刺激をくれるのです。周りの若いデザイナーたちは結構真面目なので、もっと型破りな発想を持ってもいいんじゃないかと思うことも。私自身はどんどん頭のなかが若返っている感覚があります(笑)」

info@imaxtree.com
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幸せを凝縮した25年目のコレクション

──18年春夏コレクションでは、大胆なカラーブロッキングなど80’sのエッセンスを取り入れたルックが印象的でした。80’sの要素を取り入れた理由は?

「今回のコレクションは“幸せの再来”をテーマに、幸せな時を思い出そうという思いでコレクションをつくりました。80年代という時代は、やはり私の中でとても幸せだったという思いがあるのです。ですから、80年代のファッションを象徴するグラフィカルなパターンを、オレンジ、ブラック、イエローといったストロングな色で取り入れてみました。また、スズランの花言葉が”幸せの再来”ということで、スズランをモチーフにしたアイテムも発表しました。ただ、あまり甘いイメージにはしたくなかったので、アクセントとして象徴的に使っています」

info@imaxtree.com
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──だからこそハッピームード溢れるコレクションになったのですね。

「また同時にヨーロッパのファッション業界で日本人としてここまでやってきたので、自身のアイデンティティとして日本人デザイナーならではの服づくりのルールを破るというエッセンスも加えたいと思いました。私は服が主張するというよりも着る人の内面を輝かせたいと思うので、ほんの少しだけですけれどね。シンプルなブラウスだけれども袖を少し長くして、色をプラスしたり、アシンメトリーなシルエットにしたり。少しだけルールを破り、少しだけ大胆に、でも着る人のことを一番に考えてコレクションを作りました」

info@imaxtree.com
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──25周年を記念して、スペシャルなアイテムなどを発表するのでしょうか?

「ワイヤーバッグをともに手がけたデザイナー、エスタが、さまざまなブランドを経て引退することになったのですが、『アンテプリマのためなら手伝う』と言ってくれました。そうしてできたのがALISEA(アリセア)というバッグラインです。コレクションからインスパイアされたストロングなカラーを取り入れ、さらにコンパクトなサイズ感や、ブランドの頭文字Aをメタリックで表現するなど、これまでにないデザインになります。また、幸せの再来ということで、これまでにヒットしたバッグを復刻させています。現代のライフスタイルに合うよう、サイドにスマホが入る機能なども新たに追加しています」

ALISEA(アリセア)_AB18S55008_Group_59000yen
ALISEA(アリセア)_AB18S55008_Group_59000yen

25周年を記念したバッグライン、ALISEA(アリセア)

──25年を経て、さらに進化を続ける「アンテプリマ」のこれからの展望についてお聞かせください。

「昨年ブランド初となるレストラン『アンテプリマ カーサ・クチーナ』を銀座旗艦店に併設しました。今の時代、なかなか外に出て行く場所や機会が減ってきています。けれどおしゃれをして出掛ける場所を作っていかないとファッション業界も動いていかないのです。海外のファッション業界では、ラグジュアリーブランドがレストランやホテル、バーなどをオープンし、大成功しています。ファッションの力はそれだけパワーがあると思うのです。ですから私ももっと色んな分野で活躍したいと思っています。今計画しているのは、“アンテプリマツアー”なるもの。ミラノでショウを見て、私がおすすめするアートや食も楽しんでもらうというツアーです。ほかにはないスペシャルな体験を欲している人にはきっと満足してもらえるのではないでしょうか」

「アンテプリマ」が展開するイタリアンレストラン「アンテプリマ カーサ・クチーナ」もぜひチェックして。

「アンテプリマ」25周年記念バッグ
ALISEAを2名様にプレゼント!

Text:Etsuko Soeda Edit:Michie Mito

Profile

荻野いづみ(Izumi Ogino) 東京で生まれ育ち、1980年代に香港へ移住。イタリアンブランドのアジア展開を手掛け、リテイラーとして活躍する。「タイムレスなラグジュアリーさと現代のスタイルを持ち合わせたモダンな女性」をブランドコンセプトに、地球の反対側のミラノで、1993年自身のブランド「アンテプリマ」を立ち上げる。5年後の1998年、荻野いづみはミラノコレクションに参加する初めての日本人女性として、アンテプリマのミラノ・モーダ・ドンナデビューを果たす。同年、ブランドの象徴となったワイヤーバッグが発表される。現在、アンテプリマのクリエイティブ・ディレクターとして世界を飛び回りながら、ファイン・アート、文学、音楽、ダンスや演劇などの様々なアートに対しての情熱や、宝飾デザイン、生け花、メイクアップなどの幅広い知識などからインスピレーションを得ながら、クリエイションに生かしている。ファッションの才能のある次世代のクリエイターを、スポンサーとしてサポートする活動にも意欲的に取り組んでいる。

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