桜井ユキ×高橋一生 対談「挨拶の後に濃厚ラブシーン、次の撮影ではさよなら」 | Numero TOKYO
Interview / Post

桜井ユキ×高橋一生 対談
「挨拶の後に濃厚ラブシーン、次の撮影ではさよなら」

映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』で共演した桜井ユキと高橋一生が、映画とはひと味違う大人の恋を演じてくれたビジュアルと、二人の映画&人生トーク。(「ヌメロ・トウキョウ」2017年11月号掲載

「11日間の撮影ですべての感情を振り絞った」(桜井)

──今日の撮影はどんなイメージで臨まれましたか? 桜井ユキ(以下S)「映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』では、私の役アキのほうが高橋一生さん演じるカイトに対して、思いが強かったんですね。それが今日は対等な男女の設定だったので、そう見えたらいいなと」 ──『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』は桜井さんの初主演映画ですね。高橋さんの印象は? S「高橋さんとは何が来るかわからないところでお芝居できたのが心地よかったです。自由にキャッチボールができて、お芝居をしています感がなかった。撮影はたったの11日間だったんですよ」 高橋一生(以下T)「そのうち、僕が参加したのは何を隠そう、2日でした」 S「『よろしくお願いします!』と言ったその日に濃厚なラブシーンがあって、次の撮影でお会いしたときにはさよならでした」 ──では高橋さんは台本を読んで、一発撮りみたいな? T「はい。けれど、演じるのに時間が足りないということはなくて、いつもどおりでした。ただやるべきことは多かったから、撮影は深夜までかかりました」 S「終わったのが朝の6時。私は毎日、目の前にあるその日のシーンのウィッグをかぶり、ただただ必死でした。11日間という限られた時間で、自分の中にあるすべての感情を振り絞った。これを撮り切れれば、終わった後にどうなってもいいと思えたくらい。その結果がこの世界観として結実したと思います」 T「斬新な映像で、それだけ自由度が高い映画。過去も現在も未来もすべて同時に存在するという考えを具現化しています。ストーリーも見る人によってさまざまな解釈ができるでしょう。アキの精神世界の話かもしれないし、脳の思考回路がケンカをしているだけかもしれない」 S「二宮健監督からは、ここまでが妄想、ここは現実と説明をいただいてました。でも撮影終了後『俺もこれが現実かどうかわからない』と言われて、曖昧な世界なのだなと」

「10代は藪の中にいた感じ」(桜井)

──アキは17歳でカイトと出会いますが、桜井さんは17歳の頃、どんな女の子でしたか。

S「10代は楽しくなくて、人が好きじゃなかったです。藪の中にいた感じ。年齢を重ねて、だんだん楽しくなってきました」

──女優になろうと思ったのはいつですか?

S「小学生の頃には女優になると言っていました。親に反対された時期もあって、高校を卒業して悶々とした日々を過ごし、上京してお芝居を始めたのは23歳の終わりです」

──高橋さんは子役出身で、17歳の頃はすでに俳優さん。芸歴何年?

T「考えたくもないですが、芝居をはじめてからはもう30年近いです」

S「(目の前にずらっと並んだフルーツを見て)食べていいですか?」

T「(二人で食べ始めて)なんだか貧乏なカップルみたい。次に食べられるの3日後、みたいな(笑)」

──お芝居でもそんな感じで想像して話を膨らませているのでは?

T「ええ、9割はハッタリでできているのかもしれません。想像力よりもっとチープな、こうだったらどうなる?という初期衝動みたいな発想で動いている気がします。まず演じてみて、後からこれでよかったのか?と考える。理論づけてから動くのとは逆です」

S「私も役作りって何をしていいのかわからない。とにかく台本を読み倒します。あとは妄想。子どもの頃から妄想癖がすごくて」

──恋愛でも妄想しますか。

S「好きな人がいて、この人とこれがしたい、ここに行ったら楽しいだろうなあ、ふむふむという妄想をひたすら繰り広げたりはします。もはや癖みたいなもので、妄想しているという感覚すらないかも」

──桜井さんはこれまで園子温さんや三池崇史さんなど、そうそうたる監督作に出演なさってきましたね。

S「エキセントリックな役が多くて。特に園さんの現場は基本的に自分が用意したものは使えません。どうしても台本を読むうちに、決めなくても無意識に自分の中で固定されていくものですが、それが一切通用しない。現場でいかに真っさらな状態でいられるか。その経験が今回の映画で生きた気がします」

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「近くにいる好きな人たちのためにお芝居がしたい」 (高橋)

──高橋さんは、2017年度上半期俳優ブレイク第一位、抱かれたい男俳優部門第三位。この秋以降も立て続けにドラマ出演と大活躍です。

T「不思議なんです。僕、そうだったかしら?って思います。盛者必衰と言いますし、今はチヤホヤしてもらえるけれど、浮き足だってはダメだと自分に言い聞かせています」

──ご自身の中で変化は?

T「何も変わっていないです。いつものペースで仕事していますし。ただ、この流れの合間に再確認しています。僕、何も変わっていないって。それができたのはよかったと思っています。時には思い切り調子に乗って、とことん転ぶのもいい経験かもしれませんが」

──演じるのはどこが楽しいですか。

S「人の人生を演じることで、それまでにない経験ができること。いま、次の作品に向けてパラグライダーを練習中なんです。自発的にやろうなんて絶対に思わない。でもやってみたら、素晴らしい! 仕事で挑戦すると、いつもやってよかったと思えます。この仕事の醍醐味ですね」

──これからも演じ続けたい?

S「はい、もちろん」

T「僕ははっきりとはわからないんです。立て続けに、素敵だと思える作品に出させていただいて、正直、この先はもうないだろうと思っていて。僕、この間ある人に『ここからは余生です』と言ったんです。もう自分が満たされるためではなく、近くにいる好きな人たちのためにお芝居がしたい。見る人が笑ってくれたら、感情が豊かになってくれたらと思いますし。僕のための人生は36歳ぐらいで終わり(笑)」

──ええっ!? では突然、旅に出てしまう可能性とか?

T「最高の夢かもしれません、海外に行って、エベレストで死んじゃうとか(笑)」

S「死にたい願望?」

T「全然死にたくないんですが、死ぬときは死ぬ。そういうのが楽しいんです、決め打ちしない人生。もしかしたら、どこか辺鄙な地でお土産物屋さんになって、変な石を売りつけていたりするかもしれません(笑)」

S「うわ、強烈すぎます!」

映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』の情報はこちら!

Photos : Takaki_Kumada Styling : Yoshiko Kishimoto(Yuki Sakurai), Babymix(Issey Takahashi) Hair&Makeup : Hiroko(Yuki Sakurai), Hiroe Mishima(Issey Takahashi) Interview & Text:Maki Miura Edit : Michie Mito, Sayaka Ito

Profile

桜井ユキ(Yuki Sakurai) 1987年生まれ、福岡県出身。2015年から、石井岳龍の『ソレダケ / that’s it』、園子温の『リアル鬼ごっこ』、三池崇史の『極道大戦争』といった日本の映画界が誇る鬼才監督の作品に出演。16年にはフジテレビ月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』に出演。18年公開予定『真っ赤な星〜A CRIMSON STAR』のW主演も決定し、注目の女優の一人『THE LIMIT OF SREEPING BEAUTY』で映画初主演を飾る。
高橋一生(Issey Takahashi) 1980年生まれ、東京都出身。TV、映画、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作品に映画『シン・ゴジラ』、ドラマ『カルテット』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』など。10月から放送のNHK連続テレビ小説『わろてんか』、フジテレビ系ドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』に出演。また、NHK海外ドラマ『THIS IS US 36歳、これから』(10/1〜)では主人公の声を務める。来年公開の映画に『嘘を愛する女』(1/20 公開)、『blank 13 』(2/3 公開)、『空飛ぶタイヤ』がある。

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