リアーナを魅了したアーティスト、ロイ・ナチャム | Numero TOKYO
Interview / Post

リアーナを魅了したアーティスト、ロイ・ナチャム

2017年8月、東京に初上陸した話題のNY発クラブ「1OAK」の空間を手がけるアーティスト、ロイ・チャナム(Roy Nachum)にインタビュー。

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NYで誕生した世界中のセレブが集うナイトクラブ「1 OAK」が、国外初となる東京に新店舗をオープン。話題のスポットを手がけるのは、リアーナ(Rihanna)のアルバム『Anti』のアートワークを担当したNY在住のアーティスト、ロイ・ナチャムだ。なぜ、クラブとアーティストがコラボレートするのか? そして、彼が創る作品のその意味やメッセージとは? 来日したロイに、これまでの経歴やアーティストとしての生き方について話を聞いた。
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「1 OAK」はアートインスタレーションの連続 ──「1 OAK TOKYO」の空間デザインを手がけることでこだわった部分はありますか? 「インテリアデザイナーではなく、アーティストとしてのスタンスで、クリエイティブなデザインをコンセプトに落とし込んでいく──。それが僕の仕事です。NYをはじめ、アメリカ国内にある『1 OAK』はすべて、僕のやっているデザイン会社Mercer Projectが手がけています。いつもデザインとして考える前に、アートインスタレーションの連続として考えているので、実際にお客さんが1歩踏み入れた時にどのように感じるのか、それを汲み取ることが大切です。例えば、メインエントランスにはステンシルアートがあるのですが、これはNYの都会的なイメージを表現していて、壁のグラフィティは『ダーウィンの進化論』の一部を現しています。まずはそういった都会的な雰囲気を感じさせ、アートに引き込む。そんな仕組みにしています」
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──東京にしかない仕掛けはありますか? 「2階にあるウッドシャンデリアは、東京オリジナルのものです。『1 OAK』のNYが10周年を迎え、リニューアルした際に新しくなったものをさらに新しくしているので、東京が最新のデザインですし、世界で1番大きいんです。その中でも、ウッドシャンデリアは特殊。ひとつひとつのシャンデリアがLEDビデオライトになっていて、普通のものとは違って映像を流したり、照明を変えたりと、ユニークな演出ができるようになっています。もともと『1 OAK』のコンセプトは、タイムレスなデザインを大切にしながら最新のものを取り入れること。そして、その最先端のものとアートを組み合わせ、街に合った独特な雰囲気を創り上げるのです」
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──クラブ空間の中でアートを表現する場合、自身が考えているアートのあり方や視点は変わりますか? 「僕のギャラリーはクラブにアートを置くことを嫌がりましたし、大反対でしたが、自分自身がやりたいと思うことを貫きました。『1 OAK』では、僕のあらゆる創造性を表現したかったので、デザインだけでなくアートも含めてすべて手がけたいと思いました。もちろん、クラブに絵を飾ったりというのは普通では考えられませんし、他ではやっていないことです。ただ、僕のアートは皆のものであって、ギャラリーや美術館、そういうところに来る人だけが見るものではありません。いろいろな場所で見られるのがアート。そういうように僕は考えているので、『1 OAK』でも見せたかったのです。クラブにはお酒飲んだり踊ったりという意味合いがありますが、『1 OAK』はその名の通り“唯一無二”の場所であって、クラブではありあせん。70年代後半から80年代に流行ったNYの伝説的ディスコ『スタジオ54』のようにさまざまなジャンルの人が集まり、つながる。そんなことが現代にも起こっているだろうと感じています」

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Interview & Text:Kurumi Fukutsu
Edit:Masumi Sasaki

Profile

Roy Nachum(ロイ・ナチャム) 1979年生まれ、イスラエル出身。NYを拠点に活動するアーティスト。王冠や目隠しをした人物、点字など使った作品を制作する。妻と一緒にデザイン会社Mercer Projectも主宰。『1 OAK』の空間デザインを手がけるほか、リアーナのアルバム『Anti』のアートワークを担当したことでも知られる。

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