リアーナを魅了したアーティスト、ロイ・ナチャム | Numero TOKYO - Part 2
Interview / Post

リアーナを魅了したアーティスト、ロイ・ナチャム

2017年8月、東京に初上陸した話題のNY発クラブ「1OAK」の空間を手がけるアーティスト、ロイ・チャナム(Roy Nachum)にインタビュー。

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NYに住み始めた時は存在意義について考えた ──『1 OAK』でもご自身のアート作品が至るところに展開されています。盲目をテーマにした作品や点字、王冠を使った象徴的な作品などを制作するのはどうしてですか? 「現代人の価値観のズレに注目しているからです。目から得るさまざまな情報から遮断することで、何が大切なのかに気づくことができるのです。僕自身、1週間ほど赤いリボンを目に縛って盲目の状況を続けました。そうすると、聴覚が敏感になっていきます。その時に僕は、宗教とかそういうものは関係なくて、人間みなある意味平等なんだ、そんな気持ちになりました。シンプルなものが実は大切だということに、“盲目“になっているのでは? そんなメッセージもあります。点字の作品は、実はポエムになっているのですが、内容には意味があるけれど、点字だけ見ても何が書いてあるか分からない、触って初めてその内容に気づくという経緯を表現しています。小さい男の子の王冠というのは、富や名誉を象徴します。その富や名誉が人々を盲目にさせている、ズレを生んでいることを示しています」
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──ヴィヴィッドな赤を使った作品が多く見られますが、赤を使う何か理由はあるのでしょうか? 「赤は力強い色であり、危険や停止、一度立ち止まらせるといった意味があるので、“立ち止まって本当の大切なものを考える“ような自分の創るものと関係性があると思っています。今は別の色のものも作っていますが、過去の経験などが反映されていたり、夢で見たものが作品につながりますね。僕はなぜか赤い色の夢のものをみるから、そういうものが多いのかもしれません」
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──NYを拠点に活動されていますが、自身のルーツである“イスラエル”がアートにも表現されているのでしょうか? 「僕は4歳の時からペインティングを始めたのですが、今でも絵を描くときはイスラエルにいた幼少期のことを思い出すことが多いですね。イスラエルはとても小さい国で、お互い誰もが知っているような場所です。道で会えば話をするし、困ったことがあれば助け合う。そんなあたたかいところで育ちました。NYは反対で、人が多いのに皆が孤独を感じているように見える街です。誰もお互いを知らない、道で会っても特に話をするわけではない。いわゆる都会という場所ですよね。その時に僕は、“存在”とは何か? その意味とは?と考えるようになりました。NYに来て初めて書いた作品“Self Portrait”では、自画像を意味するけれど自分の顔は描いていません。自分の顔というもの自体に意味を持たないのではないか?と思ったからです。顔を書いても人に見られない、NYはまさにそういうような場所のように感じたのです。つまり、人とコミュニケーションしたときに初めてその人のことを知ることができる、そういう意味合いを込めています。最初は英語もあまり話せずに孤独を感じていましたが、実際にNYは冷たい場所ではない。大都会だけれども、とてもあたたかい場所です。今では自分がニューヨーカーとして、ウェルカムな心を持ち、生活しています」

リアーナとのコラボはどうやって生まれたか?

Interview & Text:Kurumi Fukutsu
Edit:Masumi Sasaki

Profile

Roy Nachum(ロイ・ナチャム) 1979年生まれ、イスラエル出身。NYを拠点に活動するアーティスト。王冠や目隠しをした人物、点字など使った作品を制作する。妻と一緒にデザイン会社Mercer Projectも主宰。『1 OAK』の空間デザインを手がけるほか、リアーナのアルバム『Anti』のアートワークを担当したことでも知られる。

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