リアーナを魅了したアーティスト、ロイ・ナチャム
2017年8月、東京に初上陸した話題のNY発クラブ「1OAK」の空間を手がけるアーティスト、ロイ・チャナム(Roy Nachum)にインタビュー。
現代社会において何が本当に大切かを知ってほしい
──2016年に発売されたリアーナのアルバム『Anti』のアートワークを手がけましたが、どういう経緯でコラボレーションすることになったのでしょうか?
「リアーナがレコーディングのためにジェイ・Zのオフィスに来ていたときに、そこに飾られていた僕の作品を見て気に入ったようです。ただ、それをまわりに話すとすぐ広まってしまい、真似されると困ると思ったみたいで、こっそりとプロジェクトを進めました(笑)。王冠で目隠しをし、バルーンを手に持った女の子を描き、点字も入れていたのですが、リアーナ自身にも目の見えない状況を体験してもらいました。彼女と仕事をすることで、彼女の謙虚さや素晴らしい人間性も感じることができた一方、リアーナを通して多くの人に作品を見てもらえるきっかけになったことはとても感謝しています」
──リアーナ以外にもジェイ・Zやジャスティン・ティンバーレイク、アリシア・キーズなど、多くのアーティストが作品を買っていますが、もともと音楽とのつながりは強いのでしょうか?
「いえ、もともとはレオナルド・ディカプリオが最初に僕の絵を購入し、そこから彼の友人に広まりました。ジャスティン・ティンバーレイクとはもう10年以上の付き合いですが、今では家族ぐるみで仲良くしていますよ」
──アートを通じて表現したいことは?
「目を見開いて、何が本当に大切なのか、シンプルなものに本当の価値があるのではないだろうかということを考えてほしいです。そして、価値のあるものを自分自身で見つけてほしい、そんなメッセージを込めています。『1OAK TOKYO』の2階にあるインフィニティミラーの中には、ジオラマと動物の剥製が入っているのですが、これは死と美しさが無限に続いていることを意味しています。人間はいつか死ぬと思うことはあまりなく、いつまでも生きられるのではないかという錯覚に陥いります。それを見直し、大切なものを見つける、という意味があります」
──今後の活動について、これから予定している展示やコラボレーションなどがあれば教えてください。
「モナコで展覧会が終わって、10月にはドバイ、香港、2017年3月にはロンドン、NYで個展を開く予定です。アートしても歴史のあるノーホー地区にコンドミニアム『22 Bond』が新しくできたのですが、ここではパブリックアートとして王冠を使ったインスタレーションを展示しています。また、NYで見られる“Vault Light”(歩道にあるガラスのレンズ)があるのですが、これを作っている会社とのコラボレーションで、ガラスを使わず点字でポエトリーを読ませる作品も制作しました」
Interview & Text:Kurumi Fukutsu
Edit:Masumi Sasaki