松下洸平が奏でる、もうひとつの魅力。「音楽でしか表現できないことがある」創作への思いを語る
不思議な魅力で、観る者の心を惹きつけてやまない松下洸平。2008年にシンガーソングライターとしてCDデビューして以来、ミュージシャンと俳優というふたつの表現の場で活躍を続けている。 7月17日に配信リリースするデジタルシングル『Journey』は、自身の音楽的なルーツでもあるゴスペルを取り入れた一曲。そこに込めたのは、人生の道標になる“大きな愛"と、限りある人生を大切に生きたいというまっすぐな想い。40歳という節目を目前にした今だからこそ見えてきた、人生観、音楽や芝居への姿勢について、誠実な言葉で語ってくれた。
「不器用な僕だから、道標になる“愛”を真正面から歌いたい」

──今回のデジタルシングル『Journey』が生まれた経緯について教えてください。
「これは、来年のツアーに向けて作った新曲のひとつです。とてもハッピーな曲ができたので、結果的に『これをリード曲にしよう』ということになったのですが、そもそもは、Shin Sakiuraくんとまた一緒に曲作りをしたかったというのがスタートでした。Shinくんとは以前から『ゴスペルをやりたいよね』という話をしていたので、Shinくんの自宅でリファレンスとなるような曲を聴きながら、ライブではどんなことがしたいかを話し合ったりして。それからふたりでベーシックなデモ曲を作りました。それを持ち帰って、『これに合う歌詞のテーマってなんだろう』と考えたときに、大きな愛の歌がいいと思ったんです。それでこの曲が生まれました」
──松下さんにとって、ゴスペルとはどんな存在ですか。
「自分のルーツとなる音楽のひとつです。そもそも、僕に『音楽をやりたい』と思わせてくれたのはゴスペルだったんですね。『天使にラブ・ソングを…』というゴスペルを題材にした映画で、続編の『天使にラブ・ソングを2』が、主人公が高校生たちにゴスペルを教えるストーリーで。それを観たとき、音楽のパワーってすごいんだな、こういうことが自分にもできたら楽しいだろうな、と思ったんです。高校生役として出演していたモニカ・カルフーンやローリン・ヒルの歌声にも衝撃を受けました。それで、『自分も音楽をやってみたい』と思い、そこからR&Bやソウルを好きになっていきました。だから、ゴスペルは僕にとってはルーツですし、いつか自分もという思いがありました」
──それにShin Sakiuraさんも賛同されて?
「そうですね。ShinくんはソウルやR&Bにもすごく精通しているので、ぜひやろうと言ってくれました。クワイアは、僕の10年来の友人でシンガーのMARUさんと、エリアンナさんにお願いしました。2人の声を何度も重ねて、10人ぐらいのクワイアのようにして。そういう作業も一つひとつ楽しかったです」
「限りある人生を、1秒でも長く、愛で満たしていたい」

──ハッピーな愛の歌でありながら、「だって制限時間付き」「終わりに向かって進んでく Freeway」という歌詞には、人生観のようなものを感じました。
「今回は、恋愛に限定されたラブソングではなくて、もっと広い意味での愛を意識して言葉を選びました。僕自身、ここ数年、人生は一度きりなんだと、よく考えるようになったんです。限りある時間の中で、どれくらい人を愛したり、誰かに愛されたりできるのだろうか、と。自分の人生を1秒でも長く愛で満たしていきたい。それは、人の心の中に自然に生まれるものだと思うんです。それは、恋人や家族だけではなく、自分の周りにいるすべての人やものに対して。そういうメッセージを、この曲では真正面から歌いたいと思いました」
──力強いメッセージが込められているわけですね。
「ハッピーでポジティブなメッセージを詰め込んでいるけれど、僕自身が常にポジティブかというと、もちろんそうではなくて。ついネガティブなことを考えてしまったり、うまくいかない瞬間もあります。迷子になったときにこの曲が導いてくれる、ピンのような存在にもなってほしいから、歌詞に『この愛が目印』という言葉も入れました。人生は、まっすぐな一本道を進んでいれば、必ず幸せになれるわけではないし、右往左往して、どこに行けばいいのかわからなくなる瞬間もある。でも、愛することを忘れずにいたいんです」
「不器用な自分の音楽を、求めてくれる人がいるなら」

──俳優としても忙しい毎日だと思いますが、音楽と俳優というふたつの活動があることで、いい相互作用があるということは?
「曲を作っている時間は、何にも囚われず、等身大の自分でいられるんです。音楽を“趣味”だと表現すると、関わってくださる人の数が多いので少し語弊があると思いますが、でも、“自分の好きなこと”という感覚で続けられていて、今の生活には欠かせないものになりました。音楽の喜びを感じる瞬間が、今の僕にとって大切だし、それがあるから俳優の活動も、ほかのことも頑張ることができる。生きるエネルギーを、音楽からもらっているような気がします。ただ、その分、限られた時間を音楽に充てているので、諦めなくてはいけないこともあります。今回、ソニー・ミュージックレーベルズに移籍して、改めて自作曲にこだわろうと、全ての楽曲を自分で制作しています。そのぶん、時間は必要ですが、妥協せずにこだわったものを作ることができる。これを選択したのも僕の責任です。でも、精神的にはすごくいい影響があると感じています」
──音楽、俳優、そして絵画などの創作活動もされていますが、ご自身で自分はどんなクリエイターだと捉えていますか。
「不器用な人間だなと思っています。物事を理論立てて計画的に実行される方もいらっしゃいますが、僕は基本的には感覚的にしかできないんですね。隣の芝生が青く見えることは何度もありました。でも、もう変えられないんですよね。遠回りしたり、間違えたりすることもありますが、これでやっていくしかない。ものを作るときは、僕なりの正義やこだわりがあります。でも、それはあくまでも自分の中での基準なんですね。音楽もそうです。『Journey』のように真正面から愛を歌う、それが自分の音楽だし、僕のできることをして、それを求めてくれる人がいるなら、こんな生き方でもいいのかなと思っています」

──そして、来年からホールツアーが始まります。今回のツアーで楽しみにしていることはありますか。
「今回は、新曲が多いので、今からとてもワクワクしています。来てくれたみなさんと一緒に歌いたい曲や、ツアーで歌う自分を想像しながら作っている曲もあるんですね。ツアーがスタートする頃には40歳になるので、よりストイックにこだわりをもってステージを作っていきたいですし、来てくださるみなさんと一緒に、ひとつの空間を作ることに徹して、今まで以上に没入感のあるツアーにしたいと思っています。音楽をど真ん中に置いて、より完成度の高いツアーを目指して、準備をしているところです」
──最後に、アーティストとして、俳優として、そしてひとりの人間として、今どんな“旅”をしていると思いますか。
「30代を振り返ってみると、たくさんのものを背負い、時には何かを手放さなければいけないときもありました。それはこれからも同じだと思いますが、なるべく今ある大切なものを手放さずに、10年後、20年後の未来にも持っていけるような自分でいたいと思います。そのためには、今の自分にとって必要なものとそうでないものを、ちゃんと考えなきゃいけない。なんとなく保険として持っているものを整理しながら、本当に守りたいものをちゃんと守れるようにならないと。まだまだ旅の途中です。これからたくさんの挫折も成功も待っていると思います。それでも、自分のことを信じて、いつも胸を張ってみなさんに作品をお届けしたいし、すべての人へ感謝とリスペクトの気持ちを忘れずにいたいと思います」
Photos: Shim Kyutai Hair & Make-up: Yuki Akagi Stylist: Noriko Sugimoto (WHITNEY) Interview & Text: Miho Matsuda Edit : Naho Sasaki
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