ラランド、レモンジャム設立5周年── 「カルマ」と「愛方」のコンビで歩む新章

お笑い、音楽、小説、俳優——フィールドは増えるほどに、ラランドの世界は豊かになる。今年でコンビ結成11年、個人事務所「レモンジャム」設立5周年を迎えるラランドのサーヤとニシダ。「お笑い界の異端児」と呼ばれながら、独自の道を切り拓いてきた彼らに、これまでの歩み、そしてこれから見たい景色について聞いた。
コンビ結成11年。それぞれの覚悟と決断とは?

──大学のお笑いサークルで出会い、コンビを結成してから11年。その間、アマチュアからプロになり、フリーから事務所を立ち上げ、気持ちはどのように変わってきましたか?
ニシダ「一番の変化は『たくさんの人に見てもらえるようになった』ことだと思います。メディアに出るようになってから、いい意味でも悪い意味でも反応をもらえるようになった。そこから意識が変わって、立ちションしなくなったのが11年という時間のなかでの大きな変化ですかね」
サーヤ「いや、最近もしてたと思いますけど…」
ニシダ「してねえよ。お前の前で立ちションするわけないだろ」
サーヤ「11年前のラランドは本当にファンがいなくて、出待ちもないからいつもスムーズに帰宅できるコンビだったんです。2019、20年の『M-1グランプリ』のセミファイナリストになったのをきっかけに気持ちも状況もガラッと変わりました。それでも『5,000円も払って素人の漫才見たくない』と言われることはあって、反骨精神で頑張ってました。それがコロナ禍になって、働き方や慣習というものに対して、みんなの意識が変わり始めた。大手事務所に所属していない私たちみたいな芸人が肯定的に受け入れてもらえたのは、タイミングが大きいと思います。時代が追いついてきてくれた感じがありました」

──2021年に個人事務所「レモンジャム」を設立。当時は個人事務所で活動する芸人は珍しい存在だったこともあり、注目されました。
サーヤ「どうしたって、得体の知れないフリーの芸人よりも事務所に所属しているほうが、社会的信用がありますよね。『M-1グランプリ』以降、スケジュールやお金の管理をすべて一人でやるのが大変になっていて、なんとかしなきゃという思いもありました。事務所に入ることも考えたのですが、当時私は広告代理店に勤務する会社員で、ニシダは大学生。そんな二人をそのまま受け入れてくれるところはなかなかなくて。じゃあ自分たちで事務所をやるしかないかとなりました。でも結果、それが自分たちのカラーになったのでよかったです」
──サーヤさんは自身が代表取締役になることへの怖さはなかったですか?
サーヤ「実は迷ったんですよ。自分が社長にならずに誰かを上に立てることも考えたんですが、何かあったときに責任を取って謝るのも、感謝するのも、私が直接できたほうがいいなという思いがあって。だったら私がやるのがいいだろうと腹を括りました。当時友人だったマネージャー(通称マネたく)が副社長を引き受けてくれたのも、安心感として大きかったですね」
──設立当初は目標を立てたりもしていましたか?
サーヤ「初期は特に細かく目標を立てていましたね。事務所として一番の課題は、ニシダと私の仕事量の格差。それを埋めるために、ニシダに広告を背負わせたり、地方で仕事をバラすドッキリをかけたり、いろんな企画を考えてはトライしました」
ニシダ「僕、フェス会場で電子タバコを配ったり、ゴルフ場でお茶を配ったり、芸能人はやらないような仕事ばっかりしてるんですよ」
サーヤ「でもそのかいあって、この5年で格差はぐんと縮まってきたので、ひとつ会社としての課題はクリアできたかもしれません」
音楽も、演技も。芸人という肩書きに逃げずにやりたい
──サーヤさんはミュージシャン、俳優として、ニシダさんは小説家、俳優としても活動されています。新しいフィールドに踏み込むとき、怖さや不安はなかったですか?
サーヤ「私はもともと子役だったのでお芝居にも興味があったし、音楽も学生のときからやっていたので、実はやりたいことはずっと変わっていないんです。たまたま一番最初に花開いたのが芸人だっただけで、やりたいことをやるタイミングが来た、という感覚かもしれません。だから怖いとか不安もあまりなくて」
──ニシダさんが小説を書き始めたのはサーヤさんに勧められてとのことですが、もともと書きたいという気持ちはあったんですか?
ニシダ「まったくなかったです(笑)。書き始めてから褒めていただけることもちょこちょこあって、嬉しいなと思いながら続けています。そもそも小説家ってみんな副業しながらのイメージがあるので、芸人だからどうこうというのはあまりなかったですね。あとは今後、お芝居ももう少し頑張っていけたらと思っています。まだ犯罪者か、すぐ死ぬ役しかやったことないんですけど(笑)」
サーヤ「ニシダは俳優業もやるようになって、コントの演技が変わってきたんですよ。初期は照れてやらなかったのが、まっすぐに演じられるようになったというか」
──今後、個人活動をラランドに還元したい、という気持ちはありますか?
ニシダ「書くことでも俳優でも、頑張ったら何かしら還元できるのかも、という気はしています。どんな仕事も屋号がついているから呼んでもらっているという気持ちはあるし、やっぱり帰る家はラランドかもしれないですね」
サーヤ「もちろんラランドの活動に生かせることもあればいいなとは思っていますが、私は、藤井隆さんみたいな別の分野でも本格的に活動する人が憧れで、音楽も演技もやるなら本気で、芸人という肩書きに逃げずにやりたいと思っています」
解散危機を乗り越え、「カルマ」と「愛方」という唯一無二の存在に


──これまでニシダさんの遅刻や無断欠席などにより、度々解散危機もあったと聞いています。どう乗り越えてきたのでしょうか。
サーヤ「当初は話し合いもしていましたけど、今は『同じ人間だと思わない』ことにしています。もうこれはカルマだと思っていて、私はニシダみたいな人間を抱えることによって、幸せを手に入れることができるんだろうなと。神が私に与えた試練だと捉えるようにしています」
ニシダ「僕もやっぱり解散は避けたいので、クビにならないように頑張るしかないです」
──常に独自の道を突き進んできたお二人。それは、自由でありながら一方では孤独を覚えることもあったのではと感じます。思い悩んだり、落ち込んだりしたこともありましたか?
サーヤ「そんな夜はニシダとマネたくの3人で肩を寄せあってシクシク泣いて」
ニシダ「『ちいかわ』みたいな感じでね」
サーヤ「つらいよ〜って(笑)。でも、足を引っ張ってくる人たちって、私の経験上いなくなっていくんですよ。だから周囲からの評判を気にしたり、思い悩んだりということはなかったかもしれないです」
ニシダ「思ったよりみんな優しいですしね」
サーヤ「3人とも周りに興味がないだけかもしれません。結局自分たちのことが大好きなんだと思います(笑)」
──5年という月日をともにして、いま相手のことをどんな存在として見ていますか?
ニシダ「相方の『愛』を、ラブのほうに変えた『愛方』だと思っています」
サーヤ「私はあの…社員です」
「レモンジャム」5周年フェスを開催。来世も3人で
──7月4日(本日)に「レモンジャム5周年Fes」を開催されるとのこと。意気込みや想いを聞かせてください。
サーヤ「個人事務所で5周年を迎えられたのは、やっぱりファンの人たちのおかげという、感謝の気持ちが強くあるんです。だからそれを伝える場をつくりたくて。来てくれた人が『応援していてよかった』と思えるライブにしたいですね。このフェスで初出しの発表もいくつかあって、ニシダが『逃走中』(フジテレビ)で勝ち得た賞金314万円の使い道とか……」
ニシダ「僕もまだ何に使われるのか知らないので不安です(笑)」
サーヤ「あとは、私たちのフィギュアだったり、Tシャツだったり、ファンの人がニヤリとするグッズも登場します。内輪ノリの部分もありつつ、初めて来る人も楽しめるようなイベントにしたいですね」

──5年という節目を迎えて、この先変えたいこと、変えたくないことはありますか?
サーヤ「都市開発でこの渋谷の事務所自体がなくなってしまうので、また新たな場所でレモンジャムを続けていくことになるんです。それにあたって、まず渋谷区を変えていきたいですよね。我々はこれまで渋谷区にかなりお金を落としているので……」
ニシダ「選挙出ろよ、そんなの」
サーヤ「変わっていく渋谷の感じとラランドって何かマッチしているんですよね。完成しない感じというか。その都度やりたいことを全力でやってきたので、この先もまた新しくやりたいことができるかもしれないけど、とにかく働いて働いて働いてまいります」
ニシダ「それ、もう国のトップが言ってるんだよ。僕はそろそろ肩書きを上げてもらいたいなと。やっぱりずっと平社員っていうのも恥ずかしいじゃないですか(笑)」
サーヤ「そもそもニシダは資本金を出していないので、社会の仕組みとして平社員のままですね。そういえば最近マネたくに子どもが産まれたので、その子は役員にしようと思っています」
ニシダ「……変えたくないのはこういう雰囲気かもしれないです(笑)。3人の事務所なので、変えようと思っても変わらないこともあるだろうし、でもそれが好きでいてくれる人もたくさんいると思うので、それはそれでいい気がするんです」
サーヤ「ですね。私もニシダに対してはずっと変わらず、常に懐疑的でいようと思います」
──レモンジャム、改めていい会社ですね(笑)
ニシダ「はい、僕は来世も二人の部下でありたいなという気持ちでいます」
サーヤ「私は嫌です」
ニシダ「いえいえ、そう言わないでください社長!」
『レモンジャム5周年Fes』
日程/7月4日(土)
会場/Kanadevia Hall (旧 TOKYO DOME CITY HALL)
配信チケット料金/3,000円
チケット販売URL/https://lemonjam.zaiko.io/e/5th-fes
※7月20日(月)23:59までアーカイブ視聴可能

Photos:Chikashi Suzuki Interview & Text:Renna Hata Edit:Miyu Kadota
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