NOAインタビュー「韓国で学んだ世界への意識と、日本から発信する意味」
作詞作曲を自ら手がけるソロアーティスト・NOAが、R&B、ポップス、ヒップホップなどジャンルを横断し、彼自身の“今”を表現した1stアルバム『NO.A』をリリースした。さらに、5月には東京を皮切りに、香港、台北、バンコク、ソウルのアジアツアーの日程も予定され、ますます勢いが止まらない。そこで、彼の創作の源や、韓国での暮らし、NOAが見据える目線の先についてロングインタビュー。
名刺代わりのアルバム『NO.A』制作秘話
──3月で23歳になりましたが、日本でのライブや、アジアツアーも予定されていて、忙しい1年になりそうですね。
「あっという間に23歳になりました。19歳から20歳まではとても長く感じたんですが、20歳から23歳、特に22歳の1年はすごく濃かったので、すごく早く感じました。今年はツアーの他に、これから公開される情報もいっぱいあるので、僕自身、今からすごく楽しみです」
──22歳の終わりにリリースされた1stアルバム『NO.A』について伺います。自分の名刺のような一枚になったということですが、この14曲を選んだ理由は?
「曲選びはすごく悩みました。ジャンルのバランスもあるし、なるべく偏らないように意識しながら、でも初めてのアルバムなので、新曲は今の自分を表現したもの、すでに発表していた曲は、今と過去のNOAが対比できるような曲を選びました」
──1曲目が、デビュー曲の「LIGHTS UP」ですね。
「1曲目は絶対にこの曲にしたかったんですよ。2020年にリリースしたときは、デビューに向けた想いを込めたのですが、今回のアルバムも自分にとっては新たなデビューのつもりで挑んでいるし、今も僕にとっては“LIGHTS UP”というタイミングなんです」
──今回のアルバムでは、UTA、SUNNY BOY、KMという日本のトップのプロデューサー陣が参加していることも話題です。UTAさん、SUNNY BOYさんとは、8LOOMでの活動がきっかけですか?
「UTAさんはそうですね。8LOOMの制作中に、僕がいつか個人的にもご一緒できたらとお伝えして、今回その願いが叶いました。SUNNY BOYさんとは、以前から一緒に曲を制作していて、『True Colors』(2022)もそうですし。アルバムに収録した『Runaway Love』は初めてSUNNY BOYさんと作った曲です」
──KMさんとは?
「以前からKMさんが手がけた曲のファンでした。『It Ain’t Over』でご一緒したときは、僕が全体の曲を作り、KMさんにプロデュース・アレンジという形で入っていただいたんですが、デモの段階とガラッと雰囲気が変わって、本当にすごい方だなと改めて思ったし、すごく勉強になりました」
──「Lonely Hearts」では、BLACKPINKの「Kill This Love」などを手がけたベク・ボーン(Bekuh BOOM)さんが参加していますね。この経緯は?
「ベクさんは、僕がYGにいたときに、ずっとお世話になっていた方です。日本に戻ってからも連絡していて、初めてのアルバムを制作するので、曲をお願いしたら快く引き受けてくれて。これまでもプロジェクトに関係なく一緒に曲を作っていたので、今回こうやってみなさんに届けられてすごく嬉しいです」
──ということは、まだ未発表曲も?
「たくさんあります」
──いつか聴けることを楽しみにしてます。コラボレーションということでは、デビュー前から交流のある音楽プロデューサー・DJのtofubeatsさんとの2曲も収録されています。tofubeatsさんのエッセイ『トーフビーツの難聴日記』にもNOAさんとの出会いが書かれていたり、NOAさんのYouTubeチャンネルにも出演されていたりと、すごくいい関係ですよね。
「元々、tofubeatsさんのファンのひとりだったのに、今ではこうやって親しくさせていただいて、曲もご一緒させていただいて、今でも不思議な感覚です。tofubeatsさんは『君の花になる』も全部観てくれて、しかも8LOOMのコンサートにも来てくださって。本当に長い間、僕のことを見守ってくれてとても感謝しています」
──NOAさんにとって、tofubeatsさんの魅力とは?
「tofubeatsさんの曲には、tofubeatsさんだけの色を感じます。tofubeatsさん独自の都会感や、都市生活の感覚が大好きで、それが僕の曲に加わると、新しいパワーが生まれるというか。『TAXI』では、tofubeatsさんのパートで東京の風景が広がったし、プロデュースしてくださった『Paradise』は、楽園の中に都会の感性もあって。デモの段階より圧倒的にカッコよくなって、しかも僕が求めていた世界観を100%作り上げてくれて、さすがとしか言いようがないです」
韓国で学んだこと、同世代アーティストからの刺激
──それから、Ayumu Imazuさんや、コレオグラファーのReiNaさんという同世代のコラボレーションもありました。
「二人は同世代なんですが、僕にはないアイデアを持っているのですごく刺激を受けます。同世代だからこそ生まれるコミュニケーションというか、仕事というより遊びの延長線上という感覚なんです。制作中はすごく楽しいし、この二人と作品を作ると、必ずいいものができる確信がありますね。Ayumu君とはデビューのタイミングが近いし、同じソロアーティストということもあって、考えていることや見ているものが近いんですよ。仲良くなったきっかけは『Just Feel It feat. Ayumu Imazu』ですけど、そこから2人で何度もご飯に行ったり、遊びながら曲を作ったり。すごくいい仲間です」
──ReiNaさんが振り付けに参加したのは2021年の「Highway」からですか。
「実はその前から、ReiNaさんのダンスレッスンを受けていたんです。ReiNaさんは表現力が素晴らしいですよね。いろんなジャンルの曲の振り付けやダンスをされていますが、毎回、こう来たかと驚かされます。身体の使い方やスキルだけじゃなくて、メッセージ性も強いダンスですよね」
──そういえば、先日、ReiNaさんのワークショップで『Step Back』のミニライブを披露したとか。
「すごく楽しかったです。やっぱりダンサーならではの曲の感じ方があって、いつもと違うところで歓声をもらったりして。僕は踊ってほしくて曲を書いてるという部分もあるので、ダンサーのみなさんに踊っていただけることがすごく嬉しいです」
──Ayumu ImazuさんもReiNaさんも、世界を視野に入れているという共通点がありますが、NOAさんが世界を意識し始めたのはいつ頃から?
「やっぱりYGの影響が大きいと思います。12歳で練習生になって、YGの教え方が最初から世界を目指すことが基本にあったので、その考え方がベースになっているんだと思います。ただ、今は日本をベースにアジアから世界へ発信しようと思っているけれど、将来は考え方が変わるかもしれないし、突然、拠点を韓国にするかもしれないし、そこは柔軟でもいいのかなと思っています」
──楽曲制作する上で、韓国から影響を受けた点は?
「韓国に行かなかったら、今、この仕事をしていないかもしれないし、日本で活動していたとしても今とは違ったものになったと思います。元々BIGBANGさんのファンだったんですが、K-R&Bも大好きで、JAY PARKさん、DEANさん、DPRさん、Sik-Kさんたちの歌詞はいつも研究しています。歌詞の書き方、音の使い方、韓国語ならではの表現の仕方もあるし、みなさん常にアップグレードしているので憧れの存在です」
──韓国語の曲は、ついフローに注目してしまいがちですが、歌詞に魅力があるんですね。
「歌詞が面白いんですよ。韓国語は、英語に似ている発音が多くて、音として洋楽に近い雰囲気があります」
──『Too Young』は三か国語だったり、英語と日本語の二か国語の歌詞の曲も多いですが、言語の使い分けは?
「以前は、英語や韓国語で考えてから日本語に変換していたんですが、今はできる限りその時に思い浮かんだ言語で歌詞を書くようにしています。言葉を変換するとメッセージが100%伝わりきらないような気がして」
──日本のマーケットや“J-POPらしさ”はどのくらい意識しますか。
「実は最近、より強いメッセージにするには、ひとつの言語のほうがいいのかもしれないと思っていて、『Purple Sky』や『Ticket』は日本語を意識して作りました。ただ、それは日本のマーケットというよりは、自分の軸はそのままで、伝え方を変えたというだけなので、日本でリリースするからこうしようというのは特に必要ないかなと思っています。今後は、例えば英語だけ、韓国語だけの曲を作っても面白いんじゃないかなとか、色々考えています」
ライブだから伝わること、伝えられることがある
──話は変わりますが、先ほど名前が出たDPRやKeshiなどのライブ会場でもよくNOAさんが目撃されていますが。
「昨年の秋ぐらいから、海外からアーティストの来日がとても増えましたよね。コロナ中、ずっと我慢していた分、ライブを観たいという気持ちが強くて、どうにか都合をつけてライブに行っています。実は、DPRさんのライブの日は、レコーディングと重なってしまったのですが、自分のコンディションが万全ではなかったので早めに切り上げることになって、都心から羽田までタクシーで、いつもなら絶対に払わないような高額のお金をかけて、最後の数曲に駆け込んだんです。それでもすごく満足感があって、やっぱりさすがだなと思いました」
──韓国で一緒に練習生をしていたグループのライブにも、よく足を運ばれていますよね。CIXのライブでもお見かけしました。
「あの時は、BXとスンフンがMCで『今日は友達が来ています』と言っちゃって(笑)。突然だったのですごく驚きました」
──やっぱりライブを観に行くことはいい刺激になりますか?
「すごく刺激になります。コロナ禍の2年間、オンラインライブがたくさん開催されました。僕も1度オンラインライブを経験して、オンラインの可能性も分かったけれど、やっぱりライブだと、より多くのものを感じられる気がします。よく、今までそんなに聴かなかった曲なのにライブで突然、好きになるってことがありますよね。やっぱり生でパフォーマンスを見ると感じられることの量が全然違うので、なるべく会場に足を運ぼうと思っています」
──NOAさんのライブも、5月6日のEX THEATER ROPPONGIを皮切りに、香港、台北、バンコク、ソウルのアジアツアーが行われますね。
「ぜひみなさんに、ライブならではの魅力を感じていただけたら。今回の新曲も、ライブのことを想定しながら制作したんです。それに今回のライブは客席からの歓声もOKなので、一緒に歌ったりもできるのかな。これまでよりもっと積極的に一緒に楽しめライブになると思います」
──アジアツアーで楽しみにしていることは?
「実は、香港、台北、バンコクは初めて訪れる街なので、時間があったら観光もしたいですし、みなさんがどう反応してくれるのか、少し不安もありつつすごく楽しみです。ずっと、たくさん応援してくださるNOANAのみなさんに、ちゃんと恩返しできていないんじゃないかと心配だったので、少しでも多くみなさんの街に会いに行って恩返しできたら」
──今回、久しぶりのソウルでやってみたいことは?
「韓国にいた時、漢江の公園が大好きだったんです。週末に友達と電動スクーターを乗ったり、一人でランニングしたり、悩みがあるとよく漢江をながめなたら考えたり、たくさん思い出がある場所なんですけど、そのときはまだ未成年だったので、漢江でビールを飲みながらチキンを食べたいですね」
──ところで、昨年のドラマ『君の花になる』では俳優デビューも果たしましたが、今後はどんなバランスで活動する予定ですか。
「今後も引き続き、チャンスがある限りお芝居には挑戦したいと思っています」
──デビュー当時のインタビューでも、演技の練習をしていると仰っていましたが、韓国にいた頃から俳優としても活動していきたいと考えていたのでしょうか。
「元々、5歳のときに映画『ハイスクール・ミュージカル』を観て、歌とダンス、お芝居がミックスされた表現方法に興味を持ったんです。韓国では、演技のレッスンは受けていなかったんですが、帰国のタイミングで挑戦してみようとずっとレッスンを受けて、昨年やっとその機会に恵まれました」
──ドラマに出演した感想は?
「毎日が勉強の連続でした。今回のアルバムのレコーディングは、ドラマの撮影の時期と重なっていたんですけど、だからこそお芝居の経験が活きて、歌や歌詞の表現力がより増した気がしています。以前にレコーディングしたときよりも、深く感情移入することができました」
──ちなみに、歌詞は実体験ですか?
「どこかしらに自分の体験を反映させてます。例えば恋愛の歌だったら、自分が見た風景の中にいたカップルをモデルにしたりとか」
──ということは、これから演技やアジアツアーなどの経験を重ねることで、歌詞の表現が変わってきそうですね。
「そうですね。表現の幅が広がるかもしれません」
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通常盤・初回プレス(CD)¥2,200
各種配信はこちら
URL/www.universal-music.co.jp/noa/
NOA 1st LIVE『NO.A』TOUR IN TOKYO
日時/2023年5月6日(日)
昼公演 OPEN 14:30、START 15:30
夜公演 OPEN 18:00、START 19:00
会場/EX THEATER ROPPONGI
価格/スタンディング ¥5,500(税込/1Drink別)
指定席 ¥5,500(税込/1Drink別)
チケット販売開始日/4月8日(土)10:00〜
URL/www.creativeman.co.jp/event/noa_2023/
Photos: kisimari Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto