イタリア生まれの新世代ロックバンド「マネスキン」に インタビュー | Numero TOKYO
Interview / Post

新世代ロックバンド「マネスキン」に インタビュー「誰もが完全に自由で、自分らしさを受け入れるべき」

イタリア生まれのZ世代新星ロックスター、マネスキン(Måneskin)グッチのクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレの熱いラブコールを得て、これまでブランドのキャンペーンにも登場したり、ライブやMVでも着用するなど、彼らの勢いはさらにヒートアップしている。8月中旬東京で、「EXQUISITE GUCCI」コレクションを纏ったいま最もホットなバンドグループを捉えた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』12月号掲載

イーサンが纏う白黒ボーダーのシアリングケープとレザーネクタイ、トーマスのイエローのパイソン柄のセットアップ、ヴィクトリアのファーコートにパイソン柄のペンシルスカート、そしてダミアーノのファーがあしらわれたハンティングチェックのセットアップ。フラッフィーと光沢ある素材の対比で、艶めくロックな色気を醸して。〈上から時計回りに〉【イーサン】ケープ シャツ ともに参考商品 ネクタイ¥63,800 【トーマス】ジャケット パンツ ともに参考商品 ネックレス¥253,000 【ヴィクトリア】コート¥1,595,000 ブラ¥91,300  スカート¥495,000 【ダミアーノ】ジャケット¥638,000 シャツ¥88,000 パンツ¥165,500/すべてGucci(グッチ ジャパン 0120-99-2177)  その他のアクセサリー/すべて本人私物
イーサンが纏う白黒ボーダーのシアリングケープとレザーネクタイ、トーマスのイエローのパイソン柄のセットアップ、ヴィクトリアのファーコートにパイソン柄のペンシルスカート、そしてダミアーノのファーがあしらわれたハンティングチェックのセットアップ。フラッフィーと光沢ある素材の対比で、艶めくロックな色気を醸して。〈上から時計回りに〉【イーサン】ケープ シャツ ともに参考商品 ネクタイ¥63,800 【トーマス】ジャケット パンツ ともに参考商品 ネックレス¥253,000 【ヴィクトリア】コート¥1,595,000 ブラ¥91,300 スカート¥495,000 【ダミアーノ】ジャケット¥638,000 シャツ¥88,000 パンツ¥165,500/すべてGucci(グッチ ジャパン 0120-99-2177) その他のアクセサリー/すべて本人私物

「自由」に生きるメッセージを発信。マネスキンの現在地を知る

マネスキン(Måneskin)について、今や多くの人が一度は耳にしたことがあるかもしれない。イタリア・ローマ出身で、もともと中学校で一緒だったボーカルのダミアーノ・デイヴィッドとベースのヴィクトリア・デ・アンジェリス、そしてギターのトーマス・ラッジ、Facebookを通じて知り合ったというドラムのイーサン・トルキオの4人が2015年に結成したロックバンド。

メンバーが1999年から01年生まれという「Z世代」で、17年にイタリア版のコンテスト番組『Xファクター』の第11シーズンに出場し、2位になったことで一躍名を馳せた。その後、イタリア代表として「ユーロビジョンソングコンテスト2021」に出場し、優勝。彼らの実力が確かなものであることが証明されたのである。

彼らの魅力は、そのバンドとしての実力だけではない。「マネスキン」という唯一無二のアイコニックな存在であり、特に女性メンバーであるヴィクトリアはバイセクシュアルを公表していて、トップレスの衣装でパフォーマンスを行っていることでも知られている。そんな「社会的メッセージ」を発しながら活動している彼らは、グッチのキャンペーンにも起用されるなど、ファッション業界からもラブコールが絶えないのだ。

そのマネスキンが今回、サマーソニックに参加するため、待望の来日を果たした。グッチをクールに纏った彼らの撮影とともに、彼らの「今」を知るべく、特別インタビューを敢行。バンドとしての彼らのアティテュードや初来日について、そして今後の展望などについて話を伺った。

イーサンはホースビットのパターンが上品に煌めくスーツ、トーマスは切りっぱなしのジャケットに赤いリボンでフェミニンさをほんのりプラス。ダミアーノは、肩に背負えるように紐がついたユニークなコートに、ヴィクトリアはチェックのスーツにそれぞれレザーネクタイ、レザーのスタッズドベルトでパンクにコーディネートした。落ち着いた雰囲気であっても捻りを忘れないのがマネスキンのスタンス。【イーサン】ジャケット¥462,000 シャツ¥93,500 ネクタイ¥63,800  パンツ¥181,500 【トーマス】ジャケット¥379,500 シャツ¥88,000 パンツ¥495,000 ネクタイ¥63,800 ジャケットに付けたリボン¥93,500 シューズ ¥132,000【ダミアーノ】肩にかけたコート¥544,500 シャツ¥88,000 ネクタイ¥63,800 パンツ¥511,500 ベルト¥134,200 シューズ¥231,000 【ヴィクトリア】ジャケット¥429,000 シャツ¥88,000 ネクタイ¥63,800  パンツ¥181,500 ベルト¥134,200 シューズ¥159,500/すべてGucci(グッチ ジャパン 0120-99-2177) その他のアクセサリー/すべて本人私物
イーサンはホースビットのパターンが上品に煌めくスーツ、トーマスは切りっぱなしのジャケットに赤いリボンでフェミニンさをほんのりプラス。ダミアーノは、肩に背負えるように紐がついたユニークなコートに、ヴィクトリアはチェックのスーツにそれぞれレザーネクタイ、レザーのスタッズドベルトでパンクにコーディネートした。落ち着いた雰囲気であっても捻りを忘れないのがマネスキンのスタンス。【イーサン】ジャケット¥462,000 シャツ¥93,500 ネクタイ¥63,800 パンツ¥181,500 【トーマス】ジャケット¥379,500 シャツ¥88,000 パンツ¥495,000 ネクタイ¥63,800 ジャケットに付けたリボン¥93,500 シューズ ¥132,000【ダミアーノ】肩にかけたコート¥544,500 シャツ¥88,000 ネクタイ¥63,800 パンツ¥511,500 ベルト¥134,200 シューズ¥231,000 【ヴィクトリア】ジャケット¥429,000 シャツ¥88,000 ネクタイ¥63,800 パンツ¥181,500 ベルト¥134,200 シューズ¥159,500/すべてGucci(グッチ ジャパン 0120-99-2177) その他のアクセサリー/すべて本人私物

──ようこそ日本へ! 初来日の今の気分は? 何かエキサイティングな経験はありましたか。

全員「最高!」

ヴィクトリア(以下V)「日本で多くの観客の前でライブできることを楽しみにしていたので、とてもうれしい。日本は街を歩いていても、人々の服装、レストラン、お店、広告など、すべてがまったく違う。あと、カラオケに行ったんだけど、いい思い出になった。今回、あまり自由な時間がなかったので、それほど多くのものを見ることができなかったのが残念」

トーマス(以下T)「イタリアから見ると日本は遠い国だけど、本当にかっこよくて、ここにいるのが「現実なのか!」みたいな感覚になったよ」

ダミアーノ(以下D)「僕は新しい龍のタトゥーを上半身に入れたんだ。とても痛かったけど、すごくクールだよ」

全員「ショッピングもしたよね。特にヴィンテージショップ巡りは、私たちが旅行するときの楽しみのひとつなんだ。日本食ももちろん毎日食べたよ」

──サマーソニックのライブはどうでしたか。

T「日本でのライブは本当に素晴らしかった。とてもエネルギッシュで、多くの人が日本の人たちは本当に静かだと思っているみたいだけど、そんなことはなかった。ここ1年で最もエネルギッシュなライブだった。だから、僕らにとってはうれしい驚きだったよ!」

V「とっても良かった!トーマスも言っていたけど、私たちが演奏したときは、観客にすごくエネルギーがあって本当に楽しめたし、とても充実した気分だった。それに、1年前はここに来るなんて想像もできなかったしね」

イーサン(以下E)「ライブで僕たちが感動したことの一つが、観客の手拍子や手の動きがすべて本当に同じタイミングだったこと。普通は、あまりないことだし、みんな完璧に同じタイミングでジャンプしていたよ」

──ロックの人気は低迷していましたが、今までずっとロックの力を信じてこれたのはなぜでしょうか。

D「最初のUKツアーの後、ロックが一番楽しい方法はライブだということがわかったんだ。だから、それにこだわるようにしているし、それが僕らの好きなことだし、僕ら自身が楽しめることだから、そうしているんだ。そのほうがシンプルだしね」

──「ユーロビジョンソングコンテスト2021」で優勝したこともキャリアに影響していますか。

V「大勢の観客と自分たちの音楽を共有するチャンスをもらえたし、素晴らしいことだった。開催場所に行ったときは、こんなことになるなんて思ってもみなかったし、その後、私たちがこんなにビッグになるとは思ってもいなかった。もちろん、ユーロビジョンに参加できたことはとてもうれしかったけれど、それが主な目的ではなかったの。参加することで、イタリア国外の人たちが私たちを見てくれるかもしれないし、いろいろな国でもライブができるかもしれないと思ってたの。そうしたら、大成功したからとてもハッピー」

──グループ名の「マネスキン」はデンマーク語で月光を意味しますが、なぜそれに決めたのですか。

全員「良い質問だね(笑)」

V「特に決めてなかったの。というのも、私たちは当時まだ15歳くらいで、一緒に演奏し始めた頃に、ある音楽コンペに申し込んだんだ。でも、私たちがとりかかるのが遅くて、あと2時間で登録終了という段階になって、ランダムにデンマーク語でワードを出して『マネスキン』に決まったのがきっかけ。あとで変えてもいいって言われたけど、結局このグループ名でうまくいってるわ」

──イタリア語の曲が英語圏でヒットしたことについて、何が一番影響していると思いますか。また、SNSを通して世界中のファンと交流することで何か気づいたことはありますか。

D「ここ数年、非英語圏のグループやアーティストが有名になるのを目にすることが多くなっているよ。なぜなら、ソーシャルメディアやインターネットによって、誰もが今まで以上につながっているからね。だから、言語の境界線がなくなってきているように感じてる。それに、僕たちの世代は聴いている曲の言語についてあまり気にしないかな。ただ音楽とともに過ごしたいだけで、もし言葉の意味に興味があれば、翻訳して外国語を学ぼうとするから」

──メンバーそれぞれの役割はありますか。 それぞれのキャラクターは?

D「バンド内での役割分担みたいなものはないかな。もちろん性格は全然違うよ。ヴィクトリアとトーマスは外向的で、話し好きで、パーティーや出かけるのが好き。疲れることを知らないんだ(笑) 僕とイーサンはもう少し内向的で、パーティー嫌い。最近、僕はグループの中でおじいちゃんだと思ってる。年を取ったなんて感じるのは早すぎると思うけど、今までで一番いい感じだよ。でも、それぞれの性格によっていいバランスが取れてると思う。音楽を作る良いレシピになっているよ」

──大きなケンカや議論はしますか。

V「時々ある。この6年間は基本的に毎日一緒に過ごしてきたし、私たちは第一に友人であり、第二に仕事仲間でもある。そして、そこには大きな責任が伴うので、時にはそれがストレスになることもあるわ。芸術的な方向性や見解が異なることもあるし。だから、4人で協力して妥協点を見つけなければならないこともたくさんある」

D「グループ活動というのは、みんなで何かを作り上げるのが本来の姿だと思う。議論がないと、誰かがすべてを決めてしまうことになり、不健全じゃないかな。みんなが自分の意見を主張し、議論して解決していくものだと思うよ。もちろん、常に建設的なことを目指すようにしているし、そうすることでみんなが満足するんだ。ルールとして、すべては音楽のためでなければならず、一人の人間のためであってはならない。 僕たちが音楽を作るのであって、音楽が僕たちのために何かをするわけではないんだ」

──衣装やメイクについて。インスピレーションは何でしょうか。

V「ニューヨーク・ドールズや、T・レックス、デヴィッド・ボウイなどの70年代のグラムロックはもちろんだけど、基本的にインスピレーションについてあまり考えないようにしているんだ。ただ自由に遊びながら、表現の一つとして、境界線や制限を設けずに楽しむことができるから。自分たちが心地よいと思うこと、楽しいと思うことをやるだけだよ」

E「もちろん、外から何か新しいインスピレーションを得て、トライしてみようということもしているよ」

──ジェンダー問題が昔よりもかなり広く受け入れられてきていると思いますが、音楽やバンドを通してのメッセージとは?

V「私たちが伝えたいのは、あらゆるトピックにおける『完全な自由』のメッセージなんだ。私たちが正しいと思うのは、誰もが自分らしく自由に生きて、他人から差別されたり批判されたりするべきではないということ。でも、私たちが若かった頃や、ちょっと自信のない人たちは、そのことで本当に傷つくことがある。自分が正しいと思うことと違うことがあると恐れる、とても閉鎖的な人たちがたくさんいて、彼らはそれについてコメントし、批判し、他の人たちが自由になるのを止める権利があると感じているみたいよね。でも、それってすごく間違っていると思うし、今でも多くの固定観念がある。男性は何を着るべきか、女性は何をすべきか、どのように見えるべきかといった性別に関するすべての固定観念は、他の人々に与える憎しみや制限を増大させるだけよ」

──では、自分たちのファッションスタイルはジェンダーレスも意識されてますか。

全員「服に性別はなく、誰もが好きなものを気持ちよく着ることができるというメッセージを共有することがとても重要だと思っている。さっきも話した固定観念をなくすために、性別の枠にとらわれず、自分の好きなもの、気分がいいと思う服を着ているの。人と違うことをするのは怖いと思っている子どもたちに勇気を与えることができればと思っているよ」

V「22年になった今日においても、女性の体は性的なものとして判断されているので、そのことについて何か変化がなければならないと思う。私たちは、誰もが自分の体をどう見せようと自由であるべきで、そのために特別視される必要はないと考えているの。だから私も自分の体を使って自由なメッセージを送ろうと思っている。上半身裸でプレイすることは他の男性がやっていることと変わらないはずなのに、女性が同じことをすると、注目を浴びたいからとか、あるいは才能がないからと思われてしまうのよね」

──グッチのクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレもまた、ジェンダーレスやノンバイナリーのスタイルを作っています。彼のクリエイションに共感していますか。また、グッチとのコラボレーションはどうでしたか。

全員「アレッサンドロとグッチは、さまざまな人に『表現すること』を与えていて、通常美しいとされるものだけでなく、より多くの人々にアピールするものをあえて見せているのだと思う。彼らは独自のヴィジョンとメッセージを持ち、独自性に美しさを見いだし、規範やルールに従うのではなく、それに逆らうんだ。大企業で同じようなことをしているところはあまりないと思う。彼らはファッション業界だけでなく、人々の認識にも大きな変化をもたらしているよね。グッチとのコラボレーションで、彼らと一緒に美しいものを作る機会を得たことはラッキーで、とても誇りに思っているよ」

V「すべてがオープンでクリエイティブなこと、箱やスキームにとらわれない。とても自由なの。そして、グッチが掲げるものは、私たちが正しいと思うものと同じよ」

──今号のテーマである「違和感」という言葉についてどう感じますか。

全員「私たちは、本物のものはすべてユニークで特別だと考えているんだ。誰もが異なっていて、『ルール』に従うためだけに合わせるのは残念なこと。創造性や自己表現に制限はなく、誰もが何が正しいとか間違っているとか言うべきでなく、誰もが完全に自由で、自分らしさを受け入れるべきだよ」

──発売されたばかりの新曲「The Loneliest」について教えてください。

D「音楽的には、大好きなロックバンドの素晴らしいバラードからインスピレーションを得たんだ。これは僕たちがバラードをリリースするために、ここしばらく経験なかったこと。歌詞は僕やバンドにとってとても重要で、基本的には愛と希望の手紙。自分自身の旅立ちのための別れと、ラブレターであり、強く力強い感情を持っているんだ」

──今後のヴィジョンはありますか。

D「具体的な目標があるわけではないけれど、もちろん、成長し続けたいとは思っている。成長し、音楽をする。僕たちは、ただ好きで幸せと誇りを感じられることにフォーカスするんだ。特定の賞やステージなど、何かを目指しているわけでもない。自分たちの音楽が成長し、それがどこへ導いてくれるのかを知りたいだけなんだ」

──最後に「MTVビデオ・ミュージック・アワード2022」で最優秀オルタナティブ・ビデオ賞の受賞、おめでとうございます!  今のお気持ちとファンへのメッセージをお願いします。

全員「とても幸せで誇りに思っているよ!私たちを信じてサポートしてくれた人たち、ファンの皆さん、そして一緒に制作した素晴らしいチームの皆さんに感謝している。You are 最高!」

Photos:Sasu Tei Interview & Text:Kurumi Fukutsu Fashion Director:Ako Tanaka Hair:Shingo Shibata Makeup:Chantal Ciaffardini Fashion Editor:Midori Oiwa

Profile

マネスキンMåneskin 右からイーサン(ds)、トーマス(g)、ダミアーノ(vo)、ヴィクトリア(b)から成るイタリア・ローマ出身のZ世代4人組バンド。ユーロビジョン・ソング・コンテストを優勝し、全世界で注目の的に。Spotifyで、イタリアの楽曲として史上最多の再生回数を記録している。今年8月には満を持して、サマーソニックのため初来日。そのわずか後に「MTVビデオ・ミュージック・アワード2022」で『スーパーモデル』が最優秀オルタナティブ・ビデオ賞を受賞するなど、大活躍中の彼らの今後にも注目したい。

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