かりん&ほのか インタビュー「ポッドキャストをやめようと思ったことはありません」 | Numero TOKYO
Interview / Post

かりん&ほのか インタビュー「ポッドキャストをやめようと思ったことはありません」

普段は会社員として働くかりんとほのかが配信するポッドキャスト番組『ゆとりっ娘たちのたわごと』は累計リスナーが40万人を超える大人気番組だ。
彼女たちが発信を続けるわけを聞いてみるとその人気の秘密が見えてきた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年10月号掲載)

ラジオへの憧れから フェス開催までの道のり

──二人の出会いは?

ほのか(以下、H)「大学3年のときの就活塾で知り合って、社会人になってもみんなで飲みに行くような友達だったんです。2017年の秋頃に二人で新潟に旅行して、そこからぐっと仲良くなりました」

かりん(以下、K)「私が彼氏と別れたばかりで傷心していたので、気さくに話せる女友達と旅行に行きたくて。鈍行列車で6時間くらいかけて新潟の自然を見に行ったんですが、その間、ずっと会話が途切れず続いたんですよ」

「これだけ会話が続くなら、一緒にポッドキャストができるんじゃないかと思って誘いました」

──ラジオが好きだったんですか。

「大学時代によく聴いていたんです。特に『朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポン0』は1年間休まずに毎回聴いて、その時期の心の支えになっていました。そこからラジオをいろいろ聴きはじめて、ポッドキャストにもたどり着いて」

「かりんちゃんのツイッターでラジオが好きなのは知っていたけど、『ゆとたわ』を始めるまでそういう話をすることはなかったと思います。私も就活の時期に『久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン』やラジオドラマ、ポッドキャストも聴いていて。寝る前に人の声を聞いてリラックスするのが習慣になっていました」

「一人の時間が長いような時期にラジオはありがたい存在だよね」

「寄り添い系だからね」

──ほのかさんがかりんさんを誘って、ゆとたわが始まったんですね。

「はい。おしゃべりへの憧れがあって、私もしゃべりたいという気軽な気持ちで、とにかくやってみようと、配信を始めたのが17年のクリスマス頃です。当時はまだそんなにポッドキャストが流行してなかったので、苦戦しながらに申請したのを覚えています。誰かに聴いてもらえるなんて思ってなかったから、静かにぬるっと始めました」

「そこから1カ月もしないぐらいの頃に、ポッドキャストのヘビーユーザーの方からメールがあり、そこから同世代の方からのお便りも徐々に増えていきました」

「ツイッターで感想を見かけたり、イベントに誘ってもらったり、聴いてますと声をかけてもらったりして、本当にリスナーさんが実在するんだ!と徐々に実感していきました。初期からのリスナーの一人が、お笑いコンビ、ティモンディの前田(裕太)くんだったとわかり友達になったり、私たちがファンだったシンガーソングライターのさとうもかさんにゲスト出演してもらったりと、番組を通して、たくさんの出会いもありました」

──二人は仕事も続けていますが、仕事とポッドキャストの両立は?

「土・日に収録してます。仕事が忙しいからポッドキャストをやめようと思ったことはありません」

「仕事が行き詰まったときも、私にはゆとたわがあると思えるし、ゆとたわのネタを探していると、仕事中に見つかることがあって、日常に仕事とゆとたわの両方があってバランスが取れているのかもしれません」

「サードプレイス感があるよね」

──番組では映画やドラマなどの話題も多いですが、学生時代からカルチャーに興味があったんですか。

「そうでもなくて。サークルはダンス系だったし、家族や周りにカルチャー好きがいたわけじゃなくて、一人でいそいそと映画を見たり漫画を読んだりしていました」

「私も好きなものを一人で楽しむことが多く、SNSで発信したり誰かと共有することはなくて」

「ドラマや映画をテーマに話し始めたのも、第42回〝菅田将暉が元カレになった日〜映画『花束みたいな恋をした』より〜〞が最初。その回の反響が大きくて、専門家でも批評家でもない私たちが感想を話してもいいんだと思って、映画やドラマなどの話をするようになりました」

「あの回から同世代のリスナーもぐっと増えました」

セレピが導くゆとたわの未来

──仕事とポッドキャストで忙しいと思うのですが、面白いものはどうやって探しているんですか。

「リスナーさんからお勧めしてもらうことも多いですね。あとはフラッと行動してみる。初めての場所での偶然の出会いを面白がるというか」

「私たちはそれをセレンディピティ(偶然の産物)の略で〝セレピ〞と呼んで大事にしていて。さくらももこさんの『ももこのいきもの図鑑』に、韓国でポンテギというサナギの料理を食べるエピソードがあるんです。そういう場面で『一応食べておくか』と思うか『絶対に嫌だ』と思うかに分かれたとき、私たちは二人とも『一応食べとくか』というタイプなので気が合ったのかも」

「セレピが行動原理なんです。いきなり『キング・オブ・コント』に出てみたり、フェスを開催してみたり、はたから見ると脈絡がないように見えるかもしれないけれど」

「雑談の回は台本も打ち合わせもないんです。話が思わぬ方向に転がっていくことが喜びになったりするので、それも自主的に残しているセレピの種です」

「話が意外な場所に着地すると、ドーパミンが出るんです(笑)」

──二人が考える、これからのゆとたわの未来は?

「私たちが楽しめなくなったらおしまいだから、苦しくならないように楽しいままでバランスを保ちつつ、ずっと続けられたら」

「目標があるわけではなく、続ける過程で偶然の出合いや面白いものを見つけることが目的なんですけど、昨年、コロナの禍中で配信になった『ゆとフェス』のリアルイベントのリベンジをしたいと思っています」

「来年、30歳なので『30祭』というイベントを開催したいです」

「30年間で一度もできなかったこと、例えばマジシャン風の動きをしてみるとか、着ぐるみを着るという欲求を叶えてみたいと思っていて」

「ポッドキャストでクォーターライフ・クライシスについて話したとき、かなり反響があったんだよね」

「30歳が本当の成人なんじゃないかと村上春樹も言っているんですね。20歳だと内面が成長しきれていない。だから本当の成人式をするのが今の目標です」

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Photo:Anna Miyoshi Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Mariko Kimbara

Profile

かりんKarin 番組のアートワークを担当。少女漫画雑誌『りぼん』や映画『ハリー・ポッター』シリーズ、ラジオ番組『朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポン0』などが原点。最近気になるお笑い芸人はダウ90000。
ほのかHonoka 音楽が好きで、番組のBGMを担当。原点となるカルチャーはラッパーのKREVAやアイドルグループのモーニング娘。、綿矢りさの小説『蹴りたい背中』など。最近つい見てしまうTV番組は『ウチ、“断捨離”しました!』。

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