「心に秘めたDIVAを目覚めさせたい」新時代のアイコン、ゆっきゅんが巻き起こす革命 | Numero TOKYO
Interview / Post

「心に秘めたDIVAを目覚めさせたい」新時代のアイコン、ゆっきゅんが巻き起こす革命

「私はDIVA。あなたも自分がDIVAだって、本当は気づいているんじゃないの?」。そんなメッセージを高らかに歌い上げる唯一無二の存在、ゆっきゅん。自らの活動を「DIVA Project」と名付け、アーティスト活動から執筆業まで活躍の場を広げている。そんな新時代のDIVAとは一体何者なのか? これまでの歩みとこれからの展望、今のゆっきゅんを形作るものに迫る。

カメラの前のゆっきゅんは、今日もピンクのさらさらヘアとドリーミーを極めたファッションでポーズを決める。そんなルックスとは裏腹に、取材には淡々とした語り口で受け応えるのが印象的。その手元には、ゴールドのノート。この日の取材で話すことを、事前にメモしてきたという。



「持ち物のほとんどが、ピンクかメタリックカラーか、あとはオーロラ色? それがきっと、私の基本色なんです。ファッションも、ピンク、フリル、レース……そういうものに目がなくて。直感だけで服を買うから、どれも主役級アイテムばかりになって着回しができない(笑)。ユニセックスの服が好きというのではなく、レディースのかわいい服が好きなので、とにかくサイズ探しが肝心。自分が着ることのできる服を、常に血まなこで探しています」

手にはカラフルなチャームが揺れるブレスレットも。「DIVAになりたい」と公言しているその世界観は、どうやって作り上げられたのだろう?  ソーシャルメディアを中心に世間のアテンションを集めてきたその活動形態から、ゆっきゅんのことをインフルエンサーと認識している人も多いだろう。でも本人によれば、肩書きは「DIVA」そして「アイドル」。まずは基本情報から見ていこう。


現在26歳で、岡山県出身。2014年に大学進学のために上京し、2021年3月に大学院を卒業。現在のような活動をスタートするきっかけは、2016年に「ミスID」コンテストに応募し、ファイナリストに選出されたこと。ここからアイドルユニット「電影と少年CQ」として音楽活動を開始し、同時進行でソロの写真集を出版したり、映画誌に寄稿したりと、活躍の幅を広げてきた。

「『電影と少年CQ』としての活動は、この秋で6周年。私はもともとアイドルに憧れがあったんですが、男性アイドルになりたいわけではなく、ガールズグループに入りたいわけでもなかった。自分のやりたいと思う形が、世の中に用意されていなかったんですよね。それでも『電影と少年CQ』となら可能性を見つけられる気がして、応募しました。コンセプトやイメージがちゃんと作られたユニットではあるけれど、個人としての活動や発言なども特に制限されることはないので、ゆるくのびのびやっています。完成された世界観があるユニット活動とは対照的に、ソロ活動のほうでは、より自分自身のパーソナリティを生かしたことをやっている感じです」



幼い頃から可愛いものが好きで、大学・大学院では映画を研究し、修士論文では日本少女漫画の実写化映画の歴史をテーマにしたという。幼い頃からポップカルチャーに親しみ、aiko、YUKI、椎名林檎、宇多田ヒカル、ハロプロ……数々の歌姫たちに心を寄せてきた。

「中でもずっと好きなのは、浜崎あゆみさん。歌を聞いていると、自分がこうなりたいという理想が明確にあって、その理想に届かない現実の自分を前に抱いている葛藤が、あちこちからこぼれ落ちている。私は、よくできた何かよりも、はみ出したものにひかれてしまうんです。時代のど真ん中で、しかもポップな曲の中で、個人的な感情や孤独について歌い、そしてヒットしていたのがすごいと思う」

パーソナルな視点の魅力は、大森靖子の歌からも教えられたそう。

「その文脈で見てるひとは多分いないんですけど、大森さんのライブを初めて見た時、あゆと通ずるソウルを私は感じたんだと思います。大森さんは、たくさんの人の孤独を歌ってくれる人。忘れ去ってしまいそうな日常を歌に乗せて、自分の人生の切れ端すら面白いものだと思わせてくれる。自分なりの固有の視点があるならばどんなことも歌になる、何を歌ってもいいんだと教えてくれた存在です。私はこういったことに感動してきたから、自分も人の心のごく個人的なところをテーマにしていきたい。心のいちばん奥で生まれる思いを表現していきたいんです」



個人の活動としてのニュースは、今年3月に念願だったというソロアルバム『DIVA YOU』をリリースしたこと。本人曰く、「修士論文を苦しみながら書いていた時期に構想した」というソロプロジェクトは、自ら企画立案し、作詞、ディレクション、スタッフブッキングまで全てを手がけているという。「どんな方にお願いするのかとか、どうやってコンセプトを具現化するかとか……そういうことから自分で考えて、企画書を送って……」と語る横顔は、プロデューサー以外の何者でもない。

「デザイナーやヘアメイク、作曲家……協力していただきたい方々にコンセプトを説明して、どうか手伝ってくれないかとお願いするのが、この構想のスタート地点。写真集を作った時も同じやり方でした。レコーディングのスタジオも自分で予約しますし、CDの封入も自分で。こんなに多くのことを自力でやっていると驚かれることがあるんですが、確かにそうですよね。それに、いろいろ大変。できるからやっているわけではなく、やりたいならばやるしかないという状況なので。でも、『一回自分でやって、全体を見ておくか』という気持ちもあるんです。最近は、そろそろ自力だと厳しいなと思っているんですが……」

そこまでしてアルバムを出した背景には、どんな思いがあるのだろう?



「自分の作品を残すことが大事だと感じるんです。自分の発言が世界に届く時代になったけれど、発言だけだと流れていってしまう。それじゃ弱いんですよね。だから作品という形にして、残したい」

その行動力にこちらが驚いている間にも、「やりたいことはまだ始まったばかり」というゆっきゅん。

「心のどこかにDIVAを秘めた人たちを、目覚めさせたいんです。”DIVA”って私が言ってるのは気持ちの問題で、”誇り高くあろうとする意志”みたいなこと。自分の意見を言うのか言わないのか、気に入った服を着るかどうか……そういう場面に、誰しも直面することがあると思うんです。そんな時に、自分の選択ができるように背中を押すようなことがしたい。私は10代の頃にポップスターがいることで勇気づけられたから。田舎で悩んでいる10代の男の子の力になるような存在になれたならと思いながら、活動を続けています」


『DIVA YOU』
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『遅刻/日帰りで』
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Photos: Kouki Hayashi Interview & Text: Leona Kawai Edit: Yukiko Shinto

Profile

ゆっきゅんYukkyun 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術専攻修了。修士論文の指導教員は三浦哲哉氏。2016年、ミスiD2017のファイナリストに選出され注目を集める。2021年5月にセルフプロデュースによる「DIVA Project」を始動。デビューシングル「DIVA ME」をリリース。2022年3月には1stアルバム『DIVA YOU』を発表。二人組ユニット「電影と少年CQ」としても活動するほか、『キネマ旬報』『ユリイカ』での執筆も行っている。
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