Cocomiインタビュー「フルート奏者として、クラシック音楽の楽しさを伝えたい」
モデルでありDiorのアンバサダーとしても活躍するCocomiが、フルート奏者としてデビューアルバム『de l’amour』を4月29日にリリースする。幼い頃から親しんだクラシック音楽の中から大好きな曲と思い入れのある曲を選曲し、数々の映画音楽を手がける村松崇継が全曲をアレンジ。
クラシック界のスターとの共演など、クラシック初心者から愛好家まで幅広く楽しめる1枚だ。そこで、本格的にフルート奏者として活動を始めたCocomiにインタビュー。彼女が伝えたい、クラシック音楽やフルートの魅力とは?
フランス語の発音のよう、フルートの音色に魅かれて
──幼少期からピアノをヴァイオリンを習っていたそうですが、11歳でフルートに転向した理由は?
「ヴァイオリンを習っていたとき、通っていた音楽教室で、ひとりの女性がフルートのレッスンを受けていたんです。その音色を聴いたとき、なんて素敵なんだと感動して。それがフルートに興味をもつきっかけになりました。幼い頃は、ヴァイオリンとピアノ、フルートを習っていたんですが、私が一番魅かれてもっと学びたいと思ったのがフルートだったので、プロの奏者になろうと決心して、高校ではフルート科に入学しました」
──Cocomiさんが感じるフルートの魅力とは?
「以前からフランスがとても好きなんですが、街並みや文化、特にフランス語の発音が素敵で、それにフルートのアーティキュレーション(※)が似ているように感じました。それがフルートに魅かれた理由のひとつです。それにフルートはリードを使用しない楽器なので、声楽のように自分の身体から音楽を奏でられるということが魅力です」
(※)アーティキュレーション…演奏技法のひとつ。音の区切り方やつなぎ方でフレーズに表情をつけること。
──練習は厳しいと思いますが、挫折しそうになったことは?
「それはもう毎日(笑)。いつも練習は大変ですが、一度も離れたいと思ったことはありません。練習は厳しいけれど、それを越えて新しいものを得たいという意欲の方が強くあります」
──Cocomiさんご自身が感じる、演奏の特徴は?
「フルートは奏者の個性がはっきりと現れる楽器です。歌声のようにクリアな音や、太くてしっかりした音など、奏者によって全く違う音色が生まれます。私の演奏の特徴を挙げるならば、よく『優しい音色』という言葉をいただきます。演奏する曲によって曲調を変えていますが、もし今回のアルバムで気になった曲があれば、ぜひ他の奏者の演奏も聴いてみてください。フルートの面白さを感じていただけると思います」
──演奏するときには、ストーリーや風景を思い浮かべることがあるそうですが、今回も?
「その日の気分によって変わることもありますが、思い浮かんだ情景や色にインスパイアされますし、『アヴェ・マリア』や『夢のあとに』など歌詞のある曲はその物語を大切にしています。『愛の小径』は、主人公が愛する人に寄り添う気持ちや、ともに過ごした美しき日々の思い出を想像して音を奏でました」
オーケストラが演奏するアニメのサントラのように
──プライベートではいろんなジャンルの音楽を聴くそうですね。
「アニメのサウンドトラック、R&B、ポップス、ロック、ジャンルを問わずに聴きます。リラックスしたい時は、ジブリ映画のサントラ、気分を上げたいときにはアイドル系のアニメソング、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のOSTでセンチメンタルな気分に浸ることも。考えてみると、練習するとき、家族と食事をするとき以外、音楽をずっと聴いています」
──今回、1日の4つのシーンに合わせてCocomiさんのお気に入りの曲をセレクトしてもらいました(ページ下部参照)。本当に幅広く聴いてらっしゃいますね。
「2曲ずつでは足りないくらいです(笑)。リフレッシュするときには、TLCやマイケル・ジャクソンのアップテンポな曲も合いますし、就寝前にはクジラの声も気分が落ち着きます」
──クジラの鳴き声ですか?
「もともとフクロウの鳴き声が好きだったのですが、そこからたどり着いたのがクジラの声でした。飛行機や車の中など、乗り物の騒音が気になるときに聴くことがありますし、周波数の528ヘルツをずっと聴いていることもあります」
──音楽以外で、今、夢中になっていることは?
「カメラやアニメ、ゲームも好きですが、今は万年筆です。7歳のとき、初めてパリを訪れて万年筆に出会い、それ以来、ペンケースには必ず万年筆が一本入っているほど。今回のアルバムタイトルも万年筆で書きました。いつもはお花の絵を描いています。想像上のお花を描いたり、お仕事で花束をいただいたらそれを眺めながら。ペン先をインクに浸す瞬間はフルートの息継ぎのようで、それも楽しくて」
──好きな花は?
「トルコキキョウとかすみ草、すずらん、フリージア……、挙げればキリがありません」
──アニメやマンガで好きな作品は?
「今、観ているのは『王様ランキング』『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』、マンガでは『チェンソーマン』と『僕のヒーローアカデミア』。これも挙げればキリがないほど(笑)」
──考えてみれば、アニメのサントラは有名な交響楽団が演奏していることもあり、アニメとクラシックとはつながりが深いですよね。
「アニメや映画も、物語に寄り添うサウンドトラックがあって、より深い感動が生まれるのではないかと思っています。音楽が感情を揺さぶる力は偉大です。昨年、大好きな『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のオーケストラコンサートが行われて、クラシックが好きな方もアニメが好きな方も鑑賞されていたので、私まで嬉しくなりました。いつか私も、たくさんの方にクラシックの楽しみを伝えられるような存在になれたら。それが夢です」
Cocomi’s playlist
Cocomiさんがお気に入りの音楽を、日常の4つのシーンに合わせてアルバムの中から1曲、それ以外からも1曲提案してもらいました。
1. 朝、出かける前に
プーランク「愛の小径」(Cocomi『de l’amour』より)
久石譲「アシタカとサン」(OST『もののけ姫サウンドトラック』より)
2. デイタイム、仕事や勉強でリフレッシュするときに
マスネ「タイスの瞑想曲」(Cocomi『de l’amour』より)
グルダ「チェロ協奏曲」
3. 夕方、自宅でのリラックスタイムに
サン=サーンス「白鳥」(Cocomi『de l’amour』より)
ドビュッシー「レントより遅く」
4. 就寝前のひととき
ポンセ「エストレリータ」(Cocomi『de l’amour』より)
ブルーノ・メジャー「イージリー」
Cocomi『de L’amour』
収録曲/
01. アヴェ・マリア(J.S.バッハ/グノー)/ニュウニュウ(ピアノ)
02. シシリエンヌ(フォーレ)/ミロシュ(ギター)
03. エストレリータ(ポンセ)/佐藤晴真(チェロ)、金子三勇士(ピアノ)
04. ヴォカリーズ(ラフマニノフ)/ニュウニュウ(ピアノ)
05. 白鳥(サン=サーンス)/ミロシュ(ギター)、真部裕カルテット
06. 愛の悲しみ(クライスラー)/アレクサンダー・ガジェヴ(ピアノ)
07. 愛の喜び(クライスラー)/レイ・チェン(ヴァイオリン)、牛田智大(ピアノ)
08. 夢のあとに(フォーレ)/アレクサンダー・ガジェヴ(ピアノ)
09. 愛の小径(プーランク)/佐藤晴真(チェロ)、金子三勇士(ピアノ)
10. タイスの瞑想曲(マスネ)/デイヴィッド・ギャレット(ヴァイオリン)、牛田智大(ピアノ)
価格/
初回限定盤 豪華デジパック仕様 ¥3,850
通常盤 ¥3,080
発売元/ユニバーサル ミュージック
発売日/2022年4月29日(金)発売
URL/https://cocomi.lnk.to/delamour
Photos:Takao Iwasawa Styling:Ryoko Kishimoto Hair & Makeup:Mikako Kikuchi Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Chiho Inoue