People / Interview

大泉洋インタビュー「生まれて40年近く、人を笑わせたいと思って生きてきた」

俳優・大泉洋が、Netflix映画『浅草キッド』に出演する。演じるのは、柳楽優弥扮する若き日のビートたけしの師匠、深見千三郎。浅草フランス座を拠点に漫才やタップダンス、芝居で、多くの観客を沸かせていたが、いつしか漫才の舞台はテレビに移り、劇場は衰退、弟子たちがスターダムに登っていく。今や日本を代表する俳優となった大泉洋が、昭和の芸人たちに想うものとは。そして映画『青天の霹靂』に続き、2度目のタッグを組む監督の劇団ひとりについて聞いた。

笑って泣けるザッツ・エンタテイメント。劇団ひとりの世界観に圧倒された

──深見千三郎さんは、ビートたけしさんの育ての親でありながら、あまり資料が残されていない伝説的な芸人です。役作りはどのように?

「まず、深見さんは僕と同じ北海道出身なんですよ。そこに縁を感じたし、同郷の私が演じられてとてもうれしかったです。深見さんはテレビ以前の芸人さんなので、映像資料はほとんど残されてなかったんですけど、深見さんがコントをしている音源が残っていたんです。聴いてみると、たけしさんの話し方にすごく似ているんですよ。当時、浅草フランス座にいた踊り子さんが『たけちゃんは千三郎さんの生き写しね』と言ってる証言もあるくらい。だから僕はたけしさんの師匠の役でありながら、深見さんに影響を受けているたけしさんを参考にしながら深見千三郎を演じました。僕自身も小さい頃にお笑い番組ばかり見ていたから、他の人よりも見た量は多いだろうし、昭和の芸人さんの雰囲気も大好き。もともと共通言語はあったのかもしれないですね」

──タップダンスも披露されていますね。

「これは練習しました。初めてタップを踊ったんですよ。柳楽くん演じるたけしが師匠のタップシューズを履いて、タップを踏み出すシーンがあるんですけど、それがすごくいいんです。高揚感があるし見ていて楽しい。もはや漫才の映画というよりタップダンスの映画なんじゃないかと思うくらい見どころです。バックに流れる音楽も素晴らしい。ちょっと『ロッキー』に似ているものがあります。『ロッキーのテーマ曲』が流れるシーンの雰囲気に。門脇麦ちゃんが踊るシーンも良かったですね」

──今回、劇団ひとり監督と2度目のタッグです。

「撮影中から堂々たる監督ぶりで、やりたいことがはっきりしていて迷いがなかったんですよ。ここまでちゃんと演出をつけてくれる監督は、なかなかいないです。『青天の霹靂』(大泉洋が主演する劇団ひとり監督作品。2014年)の頃から、何倍も素晴らしい監督になっていたけれど、試写室で出来上がった作品を見てびっくりしました。特に柳楽くんのタップのシーンの編集が素晴らしくて。細かくいい画をたくさん撮っているから、ここまでいいものになったんだろうと思います。監督が、説教くさい映画にはしたくない、エンタテインメントが作りたいんだと言っていたけれど、本当に涙あり笑いありの、私が大好きな世界観に仕上がっていました。実は私もいつか映画を撮ってみたいなと漠然と思っていたけど、ここまでいいものは作れないと思いました。夢がしぼんじゃったくらい衝撃を受けました」

──どんな映画を撮りたいと思っていたんですか。

「やはり笑って泣けるものですかね。僕が脚本を書く舞台も、日本人が好きな人情味のある物語だったりして、好きな世界観が劇団ひとりさんと似てるんですよ。だから余計にすごいと思いましたね」

師匠を越える弟子の物語は、全世代の琴線に触れるはず

──大泉さんは今や、北海道の大スターから日本を代表するスターになりました。ご自身ではどう感じていますか。

「役者としてはまだまだですよね。僕は大学時代に仲間と戯れ合いながらお芝居を始めて、30歳を越えたあたりで全国的な役者の仕事を始めたので、まだ10年ちょっとですからね。いま48歳ですけど、自分は物心ついたときから人を笑わせたい人間だったので、笑いについては40年近く考えてきたんです。でも役者の仕事は、もっと努力しなければいけないなと思って続けていますね。今回、柳楽くんと一緒に演じて、本当に彼はすごい役者だと思いました。」

──たけしさんの演技指導を、たけしさんのモノマネで有名な松村邦洋さんが担当されたんですよね。

「松村さんも言ってたけど、まばたきの仕方、肩の回し方という技術的なところが難しいんです。その上で魂を込めることで、モノマネからお芝居になってくる。誰もが知る実在の人物を演じるのは難しいんですよ。でも柳楽くんだからこそ、お芝居として成立したんでしょうね」

──ツービート(ビートたけしとビートきよしによる漫才コンビ)の漫才を知らない若い世代の方々も観るでしょうし。

「ツービートをリアルタイムで知らなくてもたけしさんのことは知ってるだろうし、タケシ役の柳楽くんと、ナイツの土屋さんが演じるキヨシの漫才が面白いから問題ないんじゃないかな。カッコよかった師匠がどんどん時代に取り残されて、弟子が師匠を越えて大きくなる姿、そのドラマは世代を問わず普遍的です。私の10歳の娘が試写で見て、後半はずっと涙を堪えていたって言ってましたから、誰が見ても琴線に触れる物語だと思います」

──コロナ禍の今、時代が大きく変化しようとしていますが、大泉さんにとって、2021年、変わったもの、変わらなかったものはありますか。

「北海道のテレビ局の取材をリモートで受けたんですけど、リモートでいろんな取材を受けられるようになっちゃったから出張が減りました。出張という理由で、僕たち(大泉洋をはじめ北海道出身であるTEAM NACSのメンバー)が北海道に帰れなくなっちゃった。リモートは便利だけど寂しい面もありますね。そうは言いつつも結局、僕らの仕事っていうのは撮影場所や劇場に行かないと始まらない。だから、忙しさは変わらないんですね」

──今回はNetflixでの配信です。何か変化は感じましたか。

「自分で好きなときに好きなものを見る時代になって、それは変わってきているなと思うけれど、でも僕らがやることは変わらなくて。配信が普及して世の中はどうなるのかなと思っていたけど、僕らにとっては単純に演じられる場所が増えたと思いますね。テレビ、映画に加えて、もうひとつ配信というね。今回の作品は、日本に住む人のほうが設定や空気感は理解できるかもしれないけど、たまたまどこかの国の人が見て、面白いと感じてくれたらうれしいですし。間口が広がった気はします」

──ちなみに最近、Netflixで見た作品は?

「Netflixオリジナルドキュメンタリーシリーズ『マイケルジョーダン:ラストダンス』。あと、これからNetflixシリーズ『イカゲーム』を見ようと思ってます。主演の俳優さんに、やたら似てるって言われるから。それは見てみないとね!」

『浅草キッド』

昭和40年代の浅草。大学を辞めてフランス座のエレベーターボーイをしていたタケシ(柳楽優弥)は、人気芸人の深見千三郎(大泉洋)に弟子入りを懇願。タップダンスやコントの技術、裏方の進行、芸人としての矜持など、芸事の真髄を叩き込まれていく。歌手を目指す踊り子の千春(門脇麦)や深見の妻・麻さとに見守られ、飛躍的に成長する。その頃、フランス座の元先輩、キヨシ(土屋伸之)に誘われ、漫才コンビ「ツービート」を結成。深見のもとを飛び出し、テレビの人気者になっていくが──。

監督・脚本/劇団ひとり
出演/大泉洋、柳楽優弥、門脇麦、土屋伸之、鈴木保奈美
Netflixにて全世界独占配信中
netflix.com

Photos:Kiichi Fukuda Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito

Profile

大泉 洋Yo Oizumi 俳優。1973年、北海道生まれ。大学生のときに演劇研究会で現在も所属する演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーと出会う。1996年放送開始のバラエティ『水曜どうでしょう』(HTB)にて北海道を代表するタレントとしてブレイク。2004年に東京進出。映画『探偵はBARにいる』シリーズをはじめ、バラエティ、ドラマ、舞台、映画など多方面で才能を発揮。2021年12月31日はNHK「第72回NHK紅白歌合戦」で司会を担当。また、2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の出演などを控える。

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