渡辺太紀乃×AYANA「ハーブを使ったセルフケアのすすめ」
たくさんの情報を浴び、そういえば自分自身とはしばらくじっくり向き合っていない。なんとなくいつも疲れているけど大丈夫、多分それは夏のせい……。あなたがもしそんなふうに毎日をやり過ごしているならトライしてほしいのが、ナチュラルケアブランド「TAO GARDEN」をローンチしたばかりのハーバルセラピスト、渡辺太紀乃さんが指南する「セルフケア」だ。ハーブを取り入れたセルフケアの方法について、ビューティライターAYANAさんがインタビュー。
ハーブを使ったセルフケアで 日々の不調をコントロールしよう
業界人が足繁く通う原宿のトリートメントサロン「NATURAL SPIRIT」は、確かな薬効成分を含む、野生に近い状態で育ったハーブを、ひとりひとりのお悩みに合わせて使っていく施術が高く支持されています。しかし、施術できる人数には限界があります。そこでオーナーであるハーバルセラピストの渡辺太紀乃さんは、ハーブの力でひとりひとりの自己治癒力に向き合ってきた経験を活かし、誰もが自分で自分を簡単にケアできるセルフケアブランド「TAO GARDEN」を開発しました。「TAO GARDEN」がなぜ今私たちに必要なのか? ハーブを使ってセルフケアをするってどういうこと? そんなあれこれを、渡辺さんに伺いました。夏の冷えは、自分で回避できます
──今年も例に漏れずとんでもない酷暑です。夏バテや紫外線ダメージによる肌疲れ、むくみなどが気になりますが、夏はなぜこんなことが起こってしまうんでしょう?
「夏バテやむくみは、体の冷えと大きな関係があります。夏はエアコンの冷気でどうしても下半身が冷えますし、とにかく暑さをなんとかしようとキンキンに冷えた食べものや飲みものをとりますよね。内臓から冷え、消化機能が弱まってしまうんです。さらに汗をかくので体内が水不足の状態に陥りやすいことも。サラサラであってほしい血がドロドロになり、流れの停滞が起こります。これは、代謝が落ちる40-50代だけでなく、20代でも注意しなければならないことです」
──冷えが原因だったのですね。秋や春は寒暖差によって冷えやすいですし、冬は言わずもがなです。私たちは一年中冷えやすく、巡りを悪くしていますね。
「正確には、夏と冬の冷えは種類が異なります。まず、夏の冷えは自分で阻止することが可能です。夏は上半身が暑く、腹部や下半身が冷えていることが多いんです。頭脳労働に集中し、巡りが悪くリンパが滞っていることも一因ですし、冷房も下半身から冷やします。そして下半身だけを冷やしても、上半身は一向に温まらないのです。上半身を解熱するには、すいかやきゅうりなど、夏が旬の食材を上手に取り入れてください。さらに冷たいものの摂取を控えたり、高麗人参や葛のような気力を補う強壮ハーブを取るのもよいです。また、下半身を冷やさないよう足湯をするなど、バランスを取ることでかなり冷えにさよならできますよ」
──ちょっとした工夫で、夏バテ予防ができるのですね。
「大切なのは、今の自分のライフスタイルを大きく変えることなく、自分にぴったりのケア方法を楽しみながら探す姿勢です。食事のときの飲みものをあたたかいお茶にしてみるとか、お風呂上がりにハーブを使ったTAO GARDENのレスキューバームやサーキュレーションバームでマッサージをする時間を持つとか……色々なことを試してみるのがいいですよ。そのうち『あ、これが自分に合っているな』とわかるようになります」
「TAO GARDEN」は、セルフケアのクオリティをあげるもの
──このケアが合っている! と自分でピンと来るものなのでしょうか?
「このサロンに来るお客さまたちは、みなさんそうおっしゃいますね。ただそれは『突然冷えがぴたりとおさまった!』みたいな劇的な変化ではないと思います。なんとなく自分に合っている、なんとなくしっくりと来る。自分との波長が合う感覚があるようです。たとえば医療で使われる薬は、エビデンスを取り即効性を確認したものですが、ハーブはそうではありません。ひとつの植物にあまりにも多面的な魅力があり、使う人との相性によって、どう反応が生まれるかが変わるのです。クイックに結果だけを求めるのではなく、自分が変わっていく経過を楽しむ姿勢が合っています」
──体質や性格、ライフスタイル、お悩みもひとりひとり異なりますからね。
「はい。自分を見つめることが大切です。とはいえ、このサロンをはじめて7年になりますが、みなさんのお悩みに一定の傾向が見られるのもたしかです。男性と女性の体のつくりや、四季の移り変わり、現代的なライフスタイルなど、ある程度共通した条件があるからでしょうね。たとえばPMSや花粉症、風邪っぽい喉の痛み、デスクワークによる肩こりなどは、多くの方が抱えるお悩みです。そこで、もっとも多いお悩みに対して、セルフケアで対処できるようにと生まれたのがTAO GARDENのシリーズです」
──バームとハーブティーがそれぞれ3種類あるんですね。これは、NATURAL SPIRITの独自処方によって生まれたものですか?
「そうです。もともとはサロンのお客さまひとりひとりにあわせて私が処方したものを計り売りしていまして、そのレシピを使っています。今も計り売りは行っていますが、TAO GARDENのアイテムを展開することで、なかなかサロンにいらっしゃれない方や、セルフケアに興味を持たれた方を幅広くサポートできるなと考えました」
──では、バームからひとつひとつのご説明をお願いします。
「TAO GARDENのバームは、肌をマッサージしやすいよう、なめらかなクリームテクスチャーにこだわった100%ボタニカル処方です。サロンの施術にも使用しています。『レスキュー』は首・肩・背中のこりを感じる部分や、筋肉疲労を感じる部分に使っていただくもので、ウィンターグリーン(ガウルテリアフラグランチシマ)というネパールのハーブを使っています。『サーキュレーション』はさまざまな停滞にアクションするもので、イタリアイトスギをブレンド。季節の変わり目や生活習慣のストレスによるむくみを感じるときに、リンパマッサージに使えます。『ディフェンス』はアウトドアアクティビティに最適な、虫刺されや炎症などのお助けバーム。シトロネラ(コウスイガヤ)は虫が嫌う香りでもあります」
──シーンやお悩みにあわせて、常備して使い分けるとよさそうですね。では、ハーブティーのほうは?
「女性のゆらぎをやさしく包み込む『ウーマンバランス』、喉のケアにおすすめの『ディープブレス』、季節の変わり目のくしゃみや鼻炎におすすめの『スプリング ケア』の3種です。それぞれ数種のハーブをブレンドしていますが、私のこだわりは、ハーブを極力砕かない状態で入れているところにあります。ハーブは粉砕するとそれだけ酸化が早まり、栄養価が劣ってしまいます。ただ、大きな状態ですと十分な味わいが得られない場合がありますので、細かく粉砕したものと、ほぼ粉砕していないものを混ぜています。これは生産が非常に困難で、多くのファクトリーで断られました(笑)。ようやく引き受けてくださる方がみつかって、商品化が叶いました」
──ハーブティーは、特殊な飲み方の決まりなどはありますか? 私はいつもどんなときに飲んだらいいのか悩んでしまいます。
「基本的にいつ飲んでいただいても構いませんが、朝、起き抜けの体には特におすすめです。ぐっと吸収がよくなり、効果が高まると思います」
自分をより良くしていくのは、自分でしかない
──このサロンには、植物療法、中医学、アーユルヴェーダ、タオなどさまざまな心身のウェルネスにまつわる書籍が置かれています。渡辺さんのルーツが気になるのですが、なぜこのお仕事を志されたのですか?
「もともと私はまったくナチュラルケアに興味のない人間でした。ですが20代後半、仕事が忙し過ぎて体を壊してしまったんです。体重も30kg台まで落ちてしまい、肌はボロボロ、とんでもない状態でした。忙しいことに夢中になって、そんな自分に気づけなかったのです。しかし、どんな大きな病院へ行っても原因はわからないまま。そんなとき中医学を紹介され、状態がようやく少しずつ良くなったんです」
──中医学に救われたんですね。
「そこからさまざまなセルフケアの方法や、心と体の成り立ちなどについて学びを深めていきました。すると、奇跡的に回復した私のところに、色々な方から相談が寄せられるようになったのです。私も崖っぷちに立たされた経験から『適当なアドバイスはできない』と思い、真剣に取り組んでいるうちに、気づけばサロンを持つまでになっていました」
──渡辺さんの姿勢には一貫して「セルフケアの重要性」を感じることができます。サロンを営む場合、そこの手技やメソッドを売りにすることも多いと思うのですが、渡辺さんはそうではありませんね。
「私の立ち位置は相談役です。サロンにいらしていただいたときに問診をして、最近の生活状況や、心身の変化について伺い、その後ハーブを使って施術を行います。そこである程度リセットされたり、よい変化を感じられることもあるでしょう。ですが家に帰ってからの日常生活をどのように送るのか、それがサロンでの施術の何倍も重要です。セルフケアは、自分と対話をし、自分が今どんな状態であるかを知る機会です。セルフケアの継続は自分を知ることであり、頭での判断ではなく、感覚を磨いていく鍛錬とも言えます。ここに根本から変化できる鍵が潜んでいます。本当の意味で自分を変えるのは、本人にしかできないのです。私はその手助けや、方法のヒントを親身になってお伝えします」
──評判のサロンに行くとなると「そこの人がなんとかしてくれるだろう」と完全に委ねてしまうこともあると思います。でも、そうではないのですね。
「委ねてみるのもひとつの方法ですね。委ねられたとしても、その手を振り払うことはしませんよ(笑)。これはタオの教えにも繋がりますが、まずはなんでもやってみることです。でも、最終的に答えを導き出すのは自分自身です」
──セルフケアなんて面倒だな、と思ってしまうこともあると思いますが、楽しんで継続していくには、どんなことを意識すればいいでしょうか?
「まずは気楽に『美味しい食事を楽しむ』くらいの感覚でいることが大事だと思います。栄養のあるものをおいしく食べる心がけですね。ハーブは脳の食事でもありますし、楽しむべきです。とにかくみなさんお忙しいので、ケアの時間はクイックに、圧倒的に気持ちの良いものにする必要があります。そういう時にはTAO GARDENのバームやハーブティー、ハーブを使った入浴剤などをおおいに活用するといいでしょう。贅沢に自分に手をかける、その価値を知っていただくと、不調を未然に回避することもできますし、必ずよい変化が訪れると思います」
TAO GARDEN
世界のハーブや薬草に精通するトリートメントサロン「NATURAL SPIRIT」が開発した、家庭の常備薬のような100%植物性のナチュラルケアブランド。体調がすぐれない、不調のカラダを内から整えたいというお悩みに、ハーブを使ったセルフケアで強力なサポートをいたします。TAOの無限のエネルギーで自然と一体化して繋がるように、五感に優しいハーブを取り入れ、植物のチカラでココロとカラダの再生と回復を促すために。
https://www.taogarden-jp.com/
NATURAL SPIRIT
自己調整力・循環力を「自己治癒力」によってリストラティブ(回復)できるよう、オールハンドのオートクチュール施術を行うサロン。ハーブの中に宿る癒しの力を体内に取り入れ、心と身体のフィット感を取り戻せる腹部内臓へのトリートメントを中心に、丁寧な問診やセルフケアの極意まで、手厚くガイドする。ホリスティックケアにまつわる莫大な知識とホスピタリティを持つオーナーセラピストの渡辺さんは、ハーバルテクノクラフターでもあり、業界人にファンが多い。
https://natural-sp.net/
Photos:Ayako Masunaga Interview & Text:AYANA Edit:Chiho Inoue