バービーのモヤモヤ相談室スペシャル「峰なゆかと考える、結婚・出産のモヤモヤ」後編 | Numero TOKYO
Interview / Post

バービーのモヤモヤ相談室スペシャル「峰なゆかと考える、結婚・出産のモヤモヤ」後編

体や性をめぐるあれこれ、人間関係や恋愛、社会についてなど読者が抱えるモヤモヤを一緒に考える「開けチャクラ!バービーのモヤモヤ相談室」を『Numero TOKYO』で連載中のフォーリンラブ・バービー。今回は同じく『NumeroTOKYO』で『ふんいき美人ちゃん』を好評連載中の峰なゆかをゲストに迎えたスペシャル対談の後編! 今年の春に結婚したバービー、昨年、結婚・出産をした峰。そんな二人に、読者が抱える結婚・育児に関するモヤモヤについて、一緒に考えてもらった。

──日本の結婚制度についてのお悩みです。「名字や戸籍について考えることにモヤモヤしています。結婚して、彼の名字が変わるとなれば、私の実家の籍に入った方が楽なのか。それは彼にとって不満はないのかなど、いろいろ考えてしまいます。こんなことを考えさせる日本の制度にもモヤモヤです」(にっけるん・28歳・会社員)

峰なゆか(以下、M)「バービーさんは名字、どうしました?」

バービー(以下、B)「合わせました。向こうに」

M「なんでですか?それは話し合ったんですか⁉」

B「めちゃくちゃ話し合いました。私は姓が変わるのが嫌だったから、1、2年結婚を躊躇ったくらいで」

M「でも、最終的に向こうに合わせたのはなぜ?」

B「夫は会社員だから、姓が変わると仕事上いろいろと面倒があったり、申請する時イジられたりするのがイヤだと。私は仕事で本名の笹森花菜も出してるから、ここで結婚して、第3の名前もあってもいいかなって思い始めて。峰さんはどっちにしたの?」

M「夫が私の姓になりました」

B「さすが!」

──たしか日本では96%が男性側の姓にするらしいですね。

M「私、結婚届け出した時に、役所の人から「新しい名字の欄に旦那さんの名字書いて」って言われて、「いや、私の姓にするんです」っていうやりとりを8回ぐらいしたんですよ。女性が男の名字にするんだという対応を100%される。もう私、頭にきちゃって「役所で働いてたら、100組のうち何組かは女の方の姓にするだろう!?そろそろ慣れろよ!」って思ったんですけど。そもそも私は名字はどっちでもよくて、ただ、私の名字の方がかっこいいって理由で決めたんですね。でも変えた後に夫のお父さんに報告したらプンプン怒っちゃって」

B「彼は“変えていいよ”って言ったの?」

M「うん。夫は『全然いいよ』って。むしろ、『なゆちゃんは個人事業主でいろいろと申請が大変だと思うし、僕はサラリーマンで仕事は旧姓のままで働くから、そっちの方が手間がなくて合理的だね』って。だけど、夫のお父さんは激オコですよ。日本刀を磨いて、怒りのあまり手が震えていて指先が切れたとか大騒ぎで」

B「えええ!」

M「でも、男が名字を変えるってだけでなんでこんなに怒られたりするんだって思って」

B「本当にそうだよね。私も結婚直前に、やっぱり名字はクジで決めようとか占いで決めようとか言ってみたけど……」

M「せめてじゃんけんにしてほしいですよね」

B「そう。で、結局夫に合わせたので、“貸し1ね”って言ってあるんですけど」

M「これでバービーさんが、出産・妊娠したら、貸しが250ぐらいになりますよ」

B「そうそう。それも言ってあるんです。妊娠・出産は貸し1じゃないんだからねって」

──日本では数年前からずっと選択的夫婦別姓に対する賛成意見が反対を上回っているにも関わらず、先月は最高裁で夫婦別姓を認めない民法を「合憲」とする判断が下されました。相談者さんのモヤモヤはこの日本の司法に声が届かないことへの不満もありますよね。

M「そうですね。夫婦別姓の法案が成立したら、夫の姓は旧姓に戻すつもりでいます」

B「それ、できるのかな?」

M「たぶん日本のテンションだと、新規の結婚カップルだけしか無理そうだから、それなら夫とは一度離婚してまた結婚します。でも、現状で、夫の名字に変えるとなると、じゃあお墓は夫の実家の方に入るのが当たり前なのかとか、そしたら、家紋も本籍も夫の方にするのかとか。貸しが1だったはずが、2、3、となんとなく流れでしてしまう。それは確かに「ん?」ってなりますよね」

B「しかも、それに対して何も言えない空気感も嫌ですね。そうだ。私、結婚したら夫婦どちらかの実家の籍に入らなきゃいけないなと思ったんだけどそうではなくて、2人の籍を作ればいいんですよね」

M「そうそう。夫婦で新しい戸籍を作る」

B「私はそれ知らなかったから。相談者さんみたいに意外と知らない方もまだ多いのかなっていう気はしました」。

──では、籍のモヤモヤについては解消できそうですね。

M「そう。で、名字はじゃんけんで決める。もしくは、結婚式のブーケトスで名字を決めるとか、それぐらいの運で決める。それで文句なし!」

B「うん、そうしましょう。それで決まり!」

──では続いての質問です。「かなり極端な言い方ですが、男性は身体的ダメージが全くなく、仕事を続けられるかどうかや給料が減る心配もなく、生活を変えずに、ある日突然かわいい赤ちゃんが現れてくれていいよなと思ってしまいます。出産・育児、仕事との両立について、自分と同じぐらい当事者意識を持って課題と重要性の認識をしてほしいです」(やなしー・32歳・会社員)という、出産後のパートナーへのモヤモヤです。

M「わかる〜。私も妊娠中は『ピュッピュ係がよかった』って言ってたんです」

B「(笑)」

──ほかの方の意見でも「身体の健康を害することなく、子どもを手にした夫が憎い」とか、「“俺もイクメンになっちゃおうかな”という発言に内心殺意を覚えました」とか、出産後に募るパートナーへのモヤモヤが結構ありまして。

M「え〜!我が家では“イクメン”って悪口として使ってるんですけど。『お前、イクメン気取りか?』みたいな」

──あとは「私が出産で苦しんでいる中、夫はオンラインゲームをしていた」とか、「女の人は、出産後のライフスタイルが変わるのに、何も変わらない夫にイライラします」とか。

M「子どもが生まれて夫のライフスタイルが何も変わらないことっていうのは防げると思いますね。マターナル・ゲートキーピングという言葉があるんですけど、母親が赤ちゃんを大事に思うがあまり、夫が子供に触ることを拒んだり、あれはダメ、これはダメとかいろいろダメ出しして、自分で育児をやりすぎちゃうと夫はそれが普通になっちゃって、協力しなくなるっていう。だから、私はそうしないようにめちゃくちゃ心がけてます。自分のやり方をおしつけないとか、抱っこ紐とか育児グッズは夫に全部選ばせるとか」

B「そうかぁ、誘導してあげなきゃダメなんだ」

M「そうなんですよ。してあげなきゃダメ。私は妊娠中、夫の携帯にパパ向けアプリを入れてました。『妊娠〇〇週目のママにはこうしてあげましょう』とかアナウンスしてくれるから。あと私は妊娠中から夫のこと“偉大なる父”って呼んでました」

──そうするとパートナーの意識は変わっていくものですか?

M「お腹に彼の耳を当てさせて私がアテレコで『偉大なる父〜。しゅき〜』とか胎児の声を代弁して、彼の父性を上げさせるように頑張りました。意味あるのかどうかわかんないんですけど(笑)。今もそう呼んでます。バービーさんはどうですか?」

B「夫はすごくいい人ではあるけど、こういう出産された方たちの声を聞くと、ちょっと不安になってきますね。夫が憎くなっちゃうのか……」

M「私の周りで子ども産んだ子はみんな夫のこと大嫌いな人ばっかりですよ。全然手伝ってくれないし、子どものほうがかわいいし、浮気相手にかわいい男の子も見つけたしって。みんな夫のこと大嫌いなっちゃうから私もそうなるんだろうなと思ってて、そしたら離婚しようって思ってたんだけど嫌いにならなかった。でも、大嫌いになって普通。嫌いにならなかったらラッキーみたいな」

──夫を嫌いにならないため、父性を育てるためにはほかにどんなことができますか?

M「パパママ教室に一緒に参加するとか、出産ビデオを見るとか、あと陣痛の痛さがわかる機械を体験してもらうとか」

B「確かにね。私も“出産 ショック”“出産 気絶”って検索して出てくる記事を夫に送ったりしてる」

M「それいい! いかに出産、育児が大変か伝えるのも大切ですよ。でも、なんでわざそんなことを女がしてやんなくちゃいけなくていけないんだって感じですけどね。こっちは妊娠してそれだけでも大変なのに、自分で調べろや!と思いますけど」

B「“子どもを育てていかなければいけない大黒柱としての責任もある”っていう男性側の意見ももちろんあると思うんだけど。女性側が家計を担ってる場合もあるし」

M「家計を担ってるからって育児をしなくていいわけじゃないですよ。子どもが生まれてから夫の給料は上がったのか?って。今までの仕事にプラスして、土日はコンビニでバイトしたり、夜勤に警備員のバイトしたりして、もっと稼ごう!大黒柱として頑張ろう!ってやってるんならまだわかりますよ。なのに、なぜ今までと同じ仕事をしてるだけでそんなに偉そうにしているのか?って怒りが湧いてくるわけですよ」

B「とにかく、女性はめげずに妊娠・出産・育児の大変さを伝え続けましょう!」

──では最後の質問です。こちらは子育てに対する価値観の違いについて。「パートナーは子どもに“メンマは割り箸”とか“すべての愛媛県の蛇口からはポンジュースが出てくる”ということを教えたいと言っています。子どもは親のおもちゃではないので、私はそれを聞くたびに嫌だなと思います。一方で、彼は父親と複雑な関係にあり、彼の子育てに対する理想を否定したり、そもそも別人格の彼に私の理想を押し付けるわけにはいかないと感じており、では私が子どもにとれる対応は真実を教えること以外に何だろうかと考えています」(うーさん・32歳・会社員)

M「まず、めんまは割り箸とか、愛媛の蛇口からジュースとかね、嘘がダサくて古くてつまんない」

B「えーっと、これはかなり特殊なお悩みなのでしょうか(笑)」

M「でも、子どもに嘘を教える親って多いですよね。“空はなんで青いの?”って聞かれて“海の青が映ってるんだよ”とかいう人いるじゃないですか。私はWikipediaで調べろや!っていうタイプ」

B「本当のことを教えるってこと?」

M「そうです。で、答えがわからない時は一緒に調べる。調べてもわからない時は『それはもうわからんのだ』ということを伝える。それが私の教育方針。バービーさんはどうですか?『なんでこうなの?』って聞かれたらどうします?」

B「ちゃんと事細かには教えられないかもしれないから、先に調べ方を教えちゃうかもしれない。本の調べ方とかネット検索の仕方とか」

M「いいですね。私も子どものハーフバースデーのプレゼントはiPadにしました」

B「すごい!もう使えるの?」

M「タッチしてDJしてます」

B「私も子どもができたら、テックやデバイスに強い子になってほしいな。あ、でも、この質問は父親をどう止めればいいの?って話だよね」

M「子どもにだけじゃなくて、大人にもやたら無駄な嘘ついてくる人っていますよね。あれウザくないですか? 相手のことナメてるからやってると思うんですよ。だから、この人の夫は子どもと対等な関係になろうとしてないと思う。アホみたいな嘘を教えたいっていう意見も尊重するべきではないと思いますよ」

B「相談者さんは優しいよね。彼の子育て論も否定すべきではないのかなって」

──たとえば、「サンタクロースはいるよ」と嘘を言うことで、子どもに夢を持たせようとする人もいますよね。それについてはどう思いますか。

M「私は“サンタなんていねーよ”って教えますよね」

B「多分、私もいないっていうけど、子供の友達には信じている子もいるだろうから、とりあえず、誰かを傷つけないように合わせようね、とは言うかな」

M「そういう実用的なアドバイスするべきだし、子供はわかってくれると思うんですけどね。私、中3までサンタさんを信じてるふりしてたのすごく苦痛だった」

B「中3までやってたの?」

M「はい。でも親もだるかったみたいで、高校一年生のとき急に「面倒くさいからクリスマスプレゼントはナシな」って言われて、お互いホッとしたの覚えてる。私、物心ついた時からサンタいないって知ってたのに『いい子にしてたからサンタさんからプレゼントもらえるかな〜』とか言ってそんな茶番をずっと続けてたんですよ」

B「すごいね(笑)。逆に信じてる人ってどうやったら信じられるんだろうね」

M「信じてるフリしてあげてるんじゃないかな。子どもが大人に気を使って」

B「子どももわかるよね。この人嘘ついてるんだなって。相談者さんは、父親との複雑な関係のある彼のことを考慮してるのかもしれないけど…」

M「愛媛の蛇口からポンジュースが出てくるなんて嘘つく親を子どもは尊敬なんてできないし、きっとそのうち夫が子どもと複雑な関係になるだろうから、早めにやめさせた方がいい」

──子どもと対等な関係を築くためにどうしたらいいか? まずはそういう話がパートナーとできるといいですね。

Photos:Shuichi Yamakawa Interview:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara

Profile

バービーBarbie お笑いコンビ「フォーリンラブ」のメンバー。テレビ番組『ひるおび』のコメンテーターやラジオ番組『週末ノオト』のパーソナリティを務める。地方創生や下着のプロデュースなどにも注力。著書に『本音の置き場所』(講談社)。
峰なゆかNayuka Mine 漫画家。女性の恋愛・セックスについての価値観を冷静かつ的確に分析した作風が共感を呼ぶ。『アラサーちゃん 無修正』(扶桑社)、『アラサーちゃん』(KADOKAWA)はシリーズ累計70万部超のベストセラーとなった。自身のAV女優時代を描いた自伝的漫画『AV女優ちゃん2』(扶桑社)が発売中。ウェブサイト「女子SPA!」で新連載、育児漫画「チャラいヒゲ、子を育てる」がスタート。

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