バービーのモヤモヤ相談室スペシャル「峰なゆかと考える、結婚・出産のモヤモヤ」前編
体や性をめぐるあれこれ、人間関係や恋愛、社会についてなど読者が抱えるモヤモヤを一緒に考える「開けチャクラ!バービーのモヤモヤ相談室」を『ヌメロ・トウキョウ』本誌で連載中のフォーリンラブ・バービー。今回は同じく本誌で「ふんいき美人ちゃん」を好評連載中の峰なゆかをゲストに迎えたスペシャル対談が実現! この対談の様子はNumero TOKYOの公式YouTubeチャンネルでも公開中。
峰は2020年4月に結婚・出産を発表し、現在は一児を育てながら、漫画家として精力的に活動中。一方、バービーもテレビやラジオ出演、雑誌、YouTube配信、下着のプロデュースなど多方面で活躍しながら、2021年4月に結婚。そんな二人に結婚や出産に関するモヤモヤについて、読者のお悩みを出発点に語りあってもらった。
バービー(以下、B)「Numero TOKYO本誌で『開けチャクラ!バービーのモヤモヤ相談室』っていう連載をやってるんです。そこで今回は『結婚・出産のモヤモヤ』というテーマでなゆゆにもあれこれ聞いてもらおうと思って」
峰なゆか(以下、M)「ね。結婚ほやほや仲間的なところあるから」
B「ということで読者のモヤモヤを集めたんだけど。私たちに聞いていい答えが出るとは思わないね」
M「ええ〜(笑)。そうかな。そんなことないよ!!」
B「親御さんみたいに正しいことは言えないかなって」
M「そんなの誰も期待してないよ」
B「そっかそっか。じゃあ、ドシドシ来い!というつもりで」
──はい。では、さっそく最初の質問です。「私は現在33歳、独身、彼氏なし。結婚したいけどしたくない、出産したいけどしたくない。このループで永遠に悩んでいます。したい理由は、形にはこだわらないけど、生活を共にするパートナーが欲しい。そして何より自分より大切な存在、子どもとはどんなものか気になる。したくない理由は自分の人生が変わってしまうのが怖い」(もも・33歳・会社員)
M「そんなに人生変わるのがいやなんですかね?」
B「良い方にも悪い方にも変わってしまうかもしれない。賭けだわ!みたいな。そのスリルが嫌なんじゃないの?」
M「確かに私の友達でも子ども産んだらめちゃくちゃ変わっちゃった子はいますけど」
B「私もそれが聞きたい!なゆゆは子ども産んで変わった?」
M「自分が独身のときは、子どもを産んだ友達がみんな髪をボブにしたり、洗濯機で洗えそうな服ばかり着ちゃうようになって、その変化がこれはもう本当に勝手な個人的な感情なんですがなんかちょっと悲しかったので、だから、私は妊娠中に『髪をボブにするな!』って自分に手紙を書いてたんですよ」
B「すごい。戒めのような。でもみんな出産前に髪切るじゃない? あれは必要なかったの?」
M「産後って抜け毛がひどいから、髪が貧乏神みたいになる。こりゃ切りたくなるわって思ったけど、妊娠前の自分が『絶対に髪を切るな!』って手紙を書いてたから、髪を切らずに美容液を塗って守った。それに、出産前にはしてなかったネイルもするようにもなったし、逆に今の方がちゃんとするようになった」
B「すごいね。乗り越えたのね」
M「自分自身は変わらないようにしているけど、仕事の種類は変わったかな。ほら、私、以前は男の人とデートに行く実録漫画描いてたから、そういうことがやりづらくなったりとか、男とセックスした話もしづらくなっちゃったりとか。逆に子どもを産んだことで、そっち方面の新しい仕事が来ましたけど。ただ、みんなが怖がってるのは、いわゆる疲れた母親みたいになるのがいやってことじゃないかなって思う。だから、結婚後や妊娠後の自分へ手紙を書くっていうのはおすすめですよ。『これは絶対に守れ』とか、逆に『これはやるな』とか書いておく。で、8割守れたら別に良しとするとか」
B「確かにね。でも、疲れた母親になってもいいんじゃないかなって思うけどな」
M「そうそう。私も独身の頃は『疲れた母親にはなりたくない』って思ったけど、今は『疲れた母親の何が悪いんだよ。誰に迷惑かけてんだよ!』って思う」
B「そうだよね。結婚・出産をしたいのか、したくないのかっていう永遠ループにハマって1人で悩むのはよくわかるけど、これってやっぱり相手がいることだから、踏み出してみないとわからないことあるよね。だから、彼氏を作ってそれから悩んでみたらどうですか?」
M「あ、この人彼氏いないのか」
B「そうそう。33歳でこれから彼氏を作るとなると、どうしても結婚が頭をよぎって、付き合うことに慎重になったり、プレッシャーに感じたりもすると思うんだけど、そういうのは抜きにして、どうでもいい男と付き合ってみたらいいと思う」
M「わかります。私も今の夫のこと最初は超どうでもいいと思ってた。あとね、私、結婚自体もどうでもいいことだと思ってるんですよ。結婚して3時間後には離婚してもいいとも思ってたし、世の中には税金対策のために結婚と離婚を繰り返すカップルもいるわけでしょう? だから、結婚してダメだったら離婚する。それぐらい軽く捉えてたらいいんじゃないですかね」
B「そうだよね。だって、相談者さんはたとえ離婚と結婚を繰り返しても、週刊誌に叩かれるような方ではないですから。うらやましいわ。自由にできるの。やりたいようにやっちゃえばいい!」
──では、次の質問です。「半年前に2つ年上の彼と結婚しました。夫とは“子どもはいずれ欲しい”というぼんやりした目標はあるものの、私はワンオペで自分の店を営業しているので、妊娠=閉店となってしまいます。仕事or子どもの2択を迫られたとき、峰さんとバービーさんはどうされますか?」(おこめさん・33歳・飲食店自営)
M「なんで、妊娠=閉店になるのか全くわからない。だってせいぜい産前産後の約2カ月間は営業できないとしても、出産後は店に立てますよね。夫が育休を取るとか、実際出産後も店をやってる人だっていっぱいいる」
B「夫が育休取れないんだったら0歳保育に預けるとか?」
M「うん。あとは、バイトの子を1人雇って自分が休める時間を増やしたり。絶対に子どもを産むか閉店するかの2択じゃない。いろんな選択肢がある。私も『アラサーちゃん』最終回とかつわりでオエオエしながら描いてた」
B「そうだよね。でも、世の中には育休を取ってくれるほど協力的ではない男性も多いと思うんだよね。なゆゆのパートナーは最初から育児に協力的だったの?」
M「私、そもそも“協力的”って言い方がそもそも変だと思ってて。夫には最初から『妊娠と出産は私が全部やるんだから、育児はオマエが全部やれ。“協力”じゃなくて、育児の最高責任者がオマエだ』って言ってたんです。育児を平等に分担すると言っても、妊娠・出産は分担できないのに、なんで育児だけ平等に分担して、『俺たちフェアだよね』みたいな顔してんだ!ってムカつくんですよ。少なくとも育児10ヶ月は夫がワンオペしろよって思う」
B「めちゃくちゃ共感しちゃう。なゆゆぐらいの気持ちで、相談者さんもまずは自分が仕事を諦めるかどうか考える前に、旦那さんに言ってみたらどうですかね?言うことさえ引っ込めちゃう方多いと思うから」
──1人で背負いすぎないでパートナーとちゃんと話し合ってみようと。
M「バービーさんはパートナーに“協力的”になってもらうために何か言ってます? 将来妊娠・出産していくにあたって」
B「正直、うちもなゆゆと同じようなことをキツイ口調で言っちゃってますね。 でも、『育児やってね』って言ってすぐにわかってくれる人とそうじゃない人がいると思うんだよね。だから、そこは話し合いを重ねて徐々に理解してもらうしかない」
M「男の人の中には“自分は協力する側”で、子どもをたまにお風呂に入れたり、ちょっと面倒を見るだけで『イクメン』って褒められて当然と思ってる。でも、それと同じくらい女の人が『自分がメインで育児をやって当然』って思ってる節があると思うんですよ。だから、女性側も意識を変えていった方がいいと思います」
B「ね。そこをちゃんと二人で話し合えたらいいですね」
──では、続いての質問です。「夫と私は今は“子どもはつくらない”という気持ちがあります。でも、いつか産まなかったことを後悔しそうで怖いです」(アラサーなっちゃんさん 33歳・医療従事者)。という、今は出産をしようとは思わないけれど、リミットを考えると…というお悩みなのですが。
M「産んで後悔するってあんまりないんじゃないかな」
B「そうなの?『めちゃコミ』とかのドロドロの漫画とか読んでると、『あんたなんか産まなきゃよかった』って言ってる母親よく出てくるよ?」
M「いや、それ漫画の話だから(笑)。現実世界の人はあんま言わない」
B「そうなんだ。でも、私も怖くなるときがあります。もし、自分が産んだ子どもがかわいいって思えなかったらどうしようって」
M「そしたら、孤児院や里子として預けたらいいじゃないですか。どうしても子どもができなくて里親になりたい人ってめちゃくちゃ多いですから。そしたらお互い幸せですよ。海外では養子に出したり、もらうことってよくあることだし、日本ももっと気軽に養子に出せるようになったらいいのにって思います。虐待とか、無理心中しちゃうまで追い詰められるよりよっぽどいいですよ。いざとなったら誰かに預けてもいいんだっていう選択肢があるっていうだけで実際預けなかったとしてもだいぶ心に余裕ができるんじゃないかと思います」
M「バービーさんは妊活してるんでしたっけ?」
B「妊活っていうか、体を温めることは意識的にしてるけど、病院にはまだ行ってない。自分の中でまだ踏み切れてないところがちょっとあるんですよ」
M「私ね、結婚前までめちゃめちゃ気をつけて避妊してきたのに、いざ子作りするぞってなったら全然できなくて。妊活もっと早く始めればよかったって思ったんです」
──産む・産まないと悩む前に、妊娠しにくい体質である可能性も考えておいた方がいいと。
B「年齢のことを考えると、この方も一度思い切って、踏み切ってみるのもいいかもしれないね」
M「今ってピル飲んでる人も結構いるし、コンドームもちゃんとつけると思うから、「できちゃった」っていうことがあんまりなくて、「よし、つくるぞ」って踏み切るのが怖いっていうのはたしかにわかるかも。でも、できなかったらできないで、その人生を歩めばいい。子ども1人育てるのに3000万円ぐらいかかるわけで、そのお金が自由に使える。そう考えてもいいんじゃないかな」
B「そうだね。そういえば、私はちょうどこの相談者さんと同じくらいの歳で卵子を保存したなぁ」
M「そうなんですね。卵子を凍結するのはすっごくいい選択だと思います」
B「うん。でもね、逆に踏み切れないの。余裕が出ちゃったのよ。卵子保存してあるっていう余裕が。だから、まだいいかなってなっちゃって」
M「仮にその卵子を使って50歳で妊娠・出産できたとしても体力的にかなりきついと思います。子育ても大変だし。だって私、今36歳だけどそれでもめっちゃきついです」
B「そっか。私は独身の時に卵子を凍結したんだけど、病院の先生からは“実際に使うかどうかはわからないにしても、心の気休めにはなる”って言われた」
M「気休めになるならいいじゃないですか。私はいつか産めるんだって思えるんなら」
B「ね。選択肢はあった方がいいんじゃないかなって思う」
──卵子凍結はメリット・デメリットそれぞれあると思いますが、相談者さんの未来の選択肢を広げるためにも、一度検討してみてもいいかもしれませんね。というわけで、前半のお悩み相談はここで終わりです。後半は夫婦別姓、育児についての読者のモヤモヤについて、お二人の結婚観・育児論を聞きながら一緒に考えたいと思います。
後編は8月4日(水)に公開予定。「夫婦で名字や戸籍を統一する制度にモヤモヤ」「男性に育児、出産へ当事者意識を持ってほしい」「子どもに噓を教えたがる夫、どうすればいい?」の3つのモヤモヤに答える。乞うご期待!!
Photos:Shuichi Yamakawa Interview:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara