世界的アーティスト、ジャウメ・プレンサの彫刻が語るメッセージ
世界最古のシャンパーニュメゾン「ルイナール(Ruinart)」が、2017年、世界各地でパブリック・アートを展開するアーティスト、ジャウメ・プレンサ(Jaume Plensa)とのコラボレーションを発表。インタビューを通じて彼の世界に触れる。
喧騒の時代に必要な詩的シェルター
──今回は8つの異なる言語の文字を使用していますが、どのようにその文字を選ばれましたか。
「8つの言語を選びました。8つ以上選ぶこともできましたが、ヘブライ、中国、日本、ヒンディ、ロシア、アラブ、ギリシャ、ラテン、これらの8言語はかなりの範囲、世界を表せているのではなかと。漢字はそれだけで意味を表しますが、アルファベットはそうではない。いくつか組み合わせてはじめて意味ができる。今回も違う文字をランダムに並べたのですが、形をみて、どうつながれば美しいかを考えました。それはちょうど星を空に散りばめるようなイメージで。私の意図は、文章を作り、なにか特別な意味を持たせることではなく、ただ我々すべてを表す何かを作りたかったのです」
──この人間が膝を抱えて座っている像ですが、どのような意味があるのでしょう?
「まず、人間の体は夢の容器と言えます。それはとても美しいものです。人には体があって、それはちょうど真っ白なキャンパスなようなもので、そこにはいろいろな夢を描けます。そして今回のピースも特定の性別や人種の人ではなく、人、一般を表しています。膝を抱えるポーズは、とても親密な動作と言えます。他の私の作品に多く、『サイレント』とタイトルがあるのですが、我々は今とても騒がしい時代に生きています。多くの情報が錯綜していて、それがどこから発しているのかも分からないくらいに。そしてサイレントがいかに必要かも実感しています。このポーズは静寂の中で、夢を見ている像とも言えます。そして自分自身でいるための姿勢でもあります」
──同時に母体にいるときの赤ちゃんのようなイメージもありますが。
「そうですね、それも正しいです。抽象アートには限りない表現の可能性があります。いろいろな解釈ができる。見えないもの、触れないものを表現できる。触れるもので触れないものを表現する、この美しい逆説は彫刻作品についても言えます。そして、どこに置かれるかも重要です。例えば、東京の作品では、人々がその中に入ることもできる。中にいると、人は何かに守られた気持ちになる。それは詩的なシェルターとも言えるのではないでしょうか」
Photos:Ayumi Shino
Interview&Text:Hiroyuki Morita
Edit:Masumi Sasaki