Chim↑Pomのエリイが見たアメリカ=メキシコ国境 | Numero TOKYO
Interview / Post

Chim↑Pomのエリイが見たアメリカ=メキシコ国境

東京電力福島第一原発付近の帰宅困難地域で開催された国際展「Don’t Follow the Wind」を発案するなど、「立ち入れない場所」「ボーダー」をテーマにしてきたChim↑Pom。アメリカとメキシコの国境をテーマにしたプロジェクトによって彼らが示したものとは。

清澄白河の無人島プロダクションにてChim↑Pom展「The other side」が開催中。Chim↑Pomメンバーのエリイが抱えるアメリカへの入国規制という個人的な問題をきっかけとして、「ボーダー」をテーマにアメリカとメキシコの国境沿いで制作したアートプロジェクトだ。世界的に注目されるアメリカ=メキシコ国境問題だが、3部作であるプロジェクトを完結させた彼女の今の思いとは? ──アメリカへの入国規制とは? 「2012年2月にテレビ番組のハワイロケに参加したんですが、撮影クルーのひとりがアメリカのイミグレーションのブラックリストに入っていて、彼と同行予定だった出演者数人が入国を拒否されました。それから私はアメリカに入っていません」 ──それまでは普通に渡航していたんでしょうか? 「その前月にもハワイに行ったし、アメリカ本土に親戚も住んでるし展覧会もあるからから数回行きました。2012年に拒否されてから、渡航申請をしました。テレビ局からマサチューセッツ工科大学に取材するというオファーを頂いて、番組側で全て書類を用意してくれたんです。それでも全て却下。あまりにもアメリカ大使館の態度が悪くて、それから行こうとも思わなくなりました」 ──その出来事があるまで、アメリカはどんな印象でしたか? 「平和教育が盛んな学校に通っていたので、原爆を落とした国ということでネガティブな感情は少なからずありました。特に憧れていたわけでもなく、必要があれば行くというくらい」 ──入国規制という出来事から、どんな経緯で今回のプロジェクトがスタートしたんでしょうか。 「メキシコの人も入国規制されていると知って、親近感が湧いたんです。それで実際に行ってみようと。メキシコでは〈コヨーテ〉と呼ばれる密入国斡旋業者がいて、そこから着想したのがプロジェクトの第一部『COYOTE』(2014年)。そこから、第二部の『U.S.A Visitor Center』(2016年)があり、今回の『The Grounds』と『LIVERTAD』(2017年)。いずれも〈ボーダー〉がテーマです』 ──三部作にした理由は? 「私たちがプロジェクトタイプで作品を制作しているのは、物事を多角的に提示することが大事だと思っているから。第一部はコヨーテ、第二部がツリーハウス、次がアメリカに入れない人たちで結成した「チームリベルタ」のパフォーマンス作品という三部作です」

15分で分断される言語と文化

Photos:Wataru Fukaya
Interview & Text:Miho Matsuda
Edit:Masumi Sasaki

Profile

エリイ(えりい) 現代美術作家。2005年に結成したアーティスト集団「Chim↑Pom」のメンバー。14年に結婚し「ウェディング・デモ」を敢行。同年その様子も収めた『エリイはいつも気持ち悪い』を発表。15年Chim↑Pomはアジアの若手作家を表彰する『プルデンシャル・アイ・アワード』で大賞を受賞。16年、イギリスの伝統あるアート雑誌『アポロ』が選ぶ「アジア太平洋地域で最も影響力ある40歳以下の40人」に選出。また取り壊された新宿・歌舞伎町商店街振興会のビルにて個展「また明日も観てくれるかな?」を開催し話題を呼んだ。chimpom.jp

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