ジェシー・ジョー・スタークにインタビュー「メイクアップやネイルの仕方を教えてくれたのはシェール」
クロムハーツ(Chrome Hearts)の創始者リチャード・ スターク(Richard Stark)とローリー・リン・スターク(Laurie Lynn Stark)の長女で、ロックンロールにすべてを捧げるジェシー・ジョー・スターク(Jesse Jo Stark)。2020年8月に新曲として配信された「Tangerine」は“変化”を歌った魅惑的なサウンドスケープ。真のカリフォルニアガールの素顔とは。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年1・2月合併号掲載)
音楽でファッションを刺激する
ゴッドマザーはシェール
ジェシー・ジョー・スタークはクロムハーツのセカンドジェネレーションとしてブランドのデザインも手がけ、モデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)とも親交が深い。さらにレジェンダリーな歌手のシェール(Cher)が名付け親で、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)のスティーブ・ジョーンズ(Steve Jones)が彼女の最初のEPをプロデュースという筋金入りの音楽的な背景を持つ。
「メイクアップやネイルの仕方を教えてくれたのはシェール。幼い頃は彼女のツアーに同行しながら育った。スティーブはいつも正直に話してくれて、多くのものを引き出してくれたと思う。ベラは親友でいつも応援してくれる大切な存在」
ジャンルレスなサウンドは、LA特有の温暖な気候とインディーズシーンの空気感が気難しいロックと混ざり合う。甘く、気だるく歌うボーカルは生暖かい心地よさと、催眠術かのような抗えない魅力がある。
「音楽は昔から好き。小さい頃はギターなど、さまざまなレッスンを受けたけれど、ほとんど続かなかった。でもママにボーカルのレッスンをしたいとお願いして、7歳のときに初めてシェールと曲を作ったんだっけ。幼い頃は、ポップスも大好きだったけど、そのすぐ横で父はカントリーやさまざまなジャンルの音楽をいつも聞いたりしていた。今考えてみると、父や母、身近な人から影響を受けたものがたくさんあった」
ガンズ・アンド・ローゼスのダフ・マッケイガン(Duff McKagan)とは家族ぐるみの付き合いなど音楽環境も輝かしいバックグラウンドで育つ。
綴る歌詞は、退廃的で空虚な言葉と甘美な響きが交差し、物悲しげだ。最新曲「Die Young」ではドラマティックなメロディーで死を歌っている。幻想的なメロディーラインがビロードのように柔らかく、うっとりする歌声と共に独自の世界観にひきこまれる。喪失感と幸福感の両方を感じ取れる、そんな不思議な感覚になれる。
パンデミックで、世界各地の街がロックダウンする中「Tangerine」を配信。アンセム的で、浮遊感のある歌声にカントリーギターがマッチした夏のカリフォルニアらしいトラックだ。
「テーマは“変化”。異なるテクスチャーや複雑なレイヤーから成る果実の皮をむくと、甘い実があるでしょう。レコーディングは3月に終えたの。混乱が起きる直前の最後のスタジオでの時間だった。平和が最も必要だと思う人たちに届くことを願っています」
自身のリリースに先がけて、参加型のミュージックビデオも公開。SNS上にファンがアップした動画を曲に合わせて編集した。
「一緒にパーティをやっているみたいだった。目に涙を浮かべたり、大きな笑みでいっぱいになったり。私が作った楽曲を誰しもが自分のものにできると知って、ドキドキした。新しい生活の中で一番つらいのは、ライブでみんなと過ごせないこと。でも世界のどこにいても心は一つ」
類いまれなファッションセンス
彼女のデザインの才能を真っ先に見抜いたのは両親だろう。クロムハーツで彼女らしいデザインをあしらったジュエリーやウェア、レザーアイテムなど幅広いラインナップをリリースし続けていて、今までになかった型破りで華やかなアイテムを多数手がけている。もの作りでこだわっていることとは。
「全てのあらゆるアイテムにおいて、抜かりなく細部のディテールまでこだわること。この発想は、父から学んだこと」
ステージ衣装やチャーミングな私服にも、独自の美意識が光る。一過性のトレンドではなく、彼女の人生が詰まっているのだ。
「欠かせないアイテムは、まずシュガー・ジョーンズ(Sugar Jones)のステージブーツ。それから私のブランドであるデッドリードール(Deadly Doll)のスエットパンツ、アメリカのファニーなおもちゃモンスターフィンガーパペット(monster finger puppet)。シェル(Cher)のヴィンテージのシャツ、そしてクロムハーツの黒いニットのカーディガン、それからセーフティピンモチーフのピアス。最近は、タイガー柄のベランダ用のブランコを買ったの。あとグリーンギンガムチェックのファジーニットでしょう。プラダ(Prada)のシューズが大のお気に入り」
ショッピングにも余念がない。それからマイブームも教えてくれた。
「最近ガーデニングを始めたの。植物をずっと生かしておくことって、とても難しい。ほかにもツーリングがしたくてたまらないし、早く世の中が良い状態になることを願い待ちわびている!」
9月に「Die Young」をリリースしたばかりだが、今後も制作活動に情熱を燃やしていくという。そしてコロナウイルスが終息したら、またステージに立ち、ライブをしたいと言う。
「日本が恋しくて、また訪れるのを待ちきれない。ダーリンたち、I love you! たくさんの愛を送ります」
Text:Aika Kawada Edit:Michie Mito