世界的建築家が語るメイプルソープの世界@シャネル・ネクサス・ホール
東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて、伝説の写真家ロバート・メイプルソープの展覧会がついに開幕した。日本ではじつに15年ぶりとなる大規模展示。プライベートコレクションを公開した世界的建築家ピーター・マリーノに、その意義と思いを聞いた。
コレクター/建築家として、展示構成に込めたもの
──展示室は3つありますが、最初の1室と第2室は白い部屋、最後の第3室は黒と、空間が塗り分けられていますね?
「展示室を進むにつれて、鑑賞におけるインパクトが強くなっていくようにしたかったのです。ですから、最初の白い空間には、野菜やフルーツ、もしくは手などを被写体にした写真を選びましたが、とても美しい花の写真を展示する部屋はドラマチックな構成にしたつもりです」
──今回の展示におけるポイントをお教えください。
「メイプルソープが白と黒のコントラストを使って主題となる被写体をどのように描いているかを、ぜひともご覧になっていただきたいと思います。例えば『Sleeping Cupid』(1989年)という作品は、寝そべったキューピット像の上に、白い矩形のスペースを配置していますが、白い彫像との対比で、非常にアーティスティックな効果を実現しているのです」
写真を“アート”たらしめた、メイプルソープの功績
──およそ30年にわたってコレクションをなさってきたわけですが、何かテーマなどは設定されているのですか?
「彼の作品の中でも、特に古典的な形式をとっているもので、なおかつ白や黒を背景にしているものが好きなんです。カラーの作品には興味がなくて、1枚も持っていません。それに、お金を稼ぐために作った作品ではなく、彼自身のためにアートとして撮った写真が一番優れていると思っています」
──Numero TOKYO本誌に寄せてくださったコメント(※1)では、メイプルソープを世に送り出したギャラリーとして名高いロバートミラー ギャラリーで、70年代に彼の個展が開催されて以降、ずっと敬愛してこられたとおっしゃっていましたね?
「メイプルソープが写真で作品を制作し始めたころ、つまり70年代当時、まだ写真作品はファインアートとしてみなされていませんでしたが、彼の登場によってその状況は劇的に変化したんです。つまり、写真がアートとして社会的に認められたのは、彼の偉業と言っても良いのです」
Interview & Text:Akiko Tomita
Edit : Keita Fukasawa