「Ambush®」×「Bvlgari」限定コレクションを発表。YOONインタビュー “デザインの答えは自然の中にある”
ブルガリが2017年にスタートした、さまざまなクリエイターの目を通して新たな「セルペンティ」を映し出す“Serpenti Through the Eyes Of”プロジェクト。今回のクリエイションを務めたのは、AMBUSH®のクリエイティブディレクターであり、世界でも飛躍的に活動の幅を広げるYOONだ。「セルペンティ」コレクションは、1960年代からミステリアスなセルペンティがジュエリーアイコンとなり、それ以降ウォッチやバッグなどにも取り入れられ、今やブルガリのメインアイコンとして存在を確立してきた。YOONから見るブルガリの“セルペンティ”は、どう映っているのか。そこには、私たちが日ごろ忘れかけている、人間(動物)の本質の部分にあった。彼女のアイデアを知れば、パワフルなエネルギーを感じるとともに、新型コロナウイルスの影響で、曇りがかった未来を、瞬く間に明快な視界も広げてくれるだろう。
YOONインタビュー「デザインの答えは自然の中にある」
──「アンブッシュ®×ブルガリ」カプセルコレクションについて、まず今回制作する上でのインスピレーション源はどこからきたのでしょうか。
「今回『セルペンティ』で新しいことをしたいというお話を頂いたときは、正直これまでヘビという動物にあまり興味をもったことがなかったんです。ヘビは私の中で単純にとても怖いイメージがありました。しかしリサーチをしていくと、東南アジアの森に住んでいるニシキヘビの写真を見つけたんです。その時に衝撃を受けました。人工的に見える鮮やかなピンクやブルーの色をした美しいヘビたちがいたんです。見つけた瞬間、“これだ!”と思いました。怖いイメージを超えた、私から見たヘビの美しさを前に持ってきて表現したかった。自然に存在する東南アジアのニシキヘビの鮮やかな色合いと、柔らかな肌触りもそのままデザインにしました。コインパースをハート型にデザインしたのですが、これはヘビたちが本当に木の上でハートの形になって寝ているところを表現したんです。色や素材だけでなく、自然で生きている動きや形も取り入れて、私らしく形にしています」
──ブルガリとアンブッシュで共通しているところはありますか。それともまったく別のベクトルであるからこそ、生まれたコレクションなのでしょうか。
「私は違うことの方が多いと思っています。お互いにないものを合わせるような感覚でデザインしました。ブルガリのものづくりに込めた熱量にはいつも圧倒されてしまいます。でも今回はそこにファッションの楽しさを取り入れたかった。ファッション自体はとても楽しいじゃないですか。気分も変化できるし、自分のなりたいキャラクターを表現できる。ファッションだからできる、身につける人がその日の気分で新しいと感じられることができると良いなと思い、ベルトバッグは3WAY仕様にしました。ウエストバッグにもなり、ストラップをつけたらショルダーバッグに、ストラップをすべて外したらクラッチバッグにもなる。その日の気分に乗って、楽しく身につけてほしいです」
──反対に、今後取り入れたいと思った点はありましたか。
「やはりブルガリのものづくりです。今回イタリアのアトリエを見学させてもらったときに、ものを作っている職人たちの熱やファミリー感がとても印象的でした。一人ひとりが本当にプライドをもって作業しているところを見て、だから身につける人にも愛が伝わるんだと思いました。仕事は一人でできることではないから大事なんですね。ものづくりは人がいないとできない、人の大切さを改めて知ることができました」
──YOONさんのパワフルなエネルギーが伝わってきます。今回は特に人の感情に寄り添ったデザインが全面に出ているような気がします。
「人間はロボットでなく、動物なのでエモーショナルなところが大切だと思っています。例えば、買い物をしていて、見た瞬間になぜだかわからないけど “可愛い! ほしい!”って思ったりするじゃないですか。私自身がそういうところからデザインを考えれば、買ってくれるお客さんにも伝わると思うんですよね。今回もヘビを検索するまで、怖いイメージしかなかったけれど、純粋に調べていて衝撃が走って、ヘビの美しさの虜になってしまった。ものを見たときのエモーショナルコネクションを大切にしたいです」
──いま世界中が新型コロナウイルスの影響で、さまざまな困難を強いられています。いまのこの状況をどう捉えていますか。
「最初はどうなるかと不安に思うことがありましたが、いまは自然の進化だと捉えています。この状況は世界規模なので、みんなが変わろうとしているのに一人だけ止まっていたら、変わることができない。自然な動きに合わせて変えていかなければいけないと思うんですよね。今までは古いやり方があって、みんなそれを見て形にしてきたところもあるけれど、それが今全部なくなっている。古いルールがなくなっているということ。だから前向きに行けるんですよ。私は性格的に何かを見たときにできないと思うより、できる方向性を考えるタイプなので、今ファッションのルールがなくなっているのが面白い。忘れがちですが人間も動物なんです。自然で暮らす動物の世界と一緒。自然でうまく生きていくためには、どうやってうまく生活をするのかと考えること。それが困っちゃうと言っているだけだとダメだと思うんですよね」
──今回のコレクションにもその考えが反映されていますね。
「デザインの答えは、誰もいってない領域にあるものだと思いがちですが、自然の中に答えがあるんですよ。ただ人間たちが見ていないだけ。昆虫なども見たりすると、色の組み合わせや形が完璧なんです。それって不思議じゃないですか。そんな思いが、買ってくれる人に伝わるといいなと思います」
「Ambush®」×「Bvlgari」限定コレクションは、9月発売予定。スペシャルなコラボレーションアイテムをぜひチェックして。
BVLGARI
ブルガリ ジャパン
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Photo:Masakazu Koga Edit&Text:Saki Shibata