ファーストサマーウイカ×パントビスコ対談「SNS時代のコミュニケーション」 | Numero TOKYO
Interview / Post

ファーストサマーウイカ×パントビスコ対談「SNS時代のコミュニケーション」

Numero.jpでの連載でもお馴染み、マルチクリエイターのパントビスコが、LINEあるあるをテーマにした新刊『パントビスコ ここだけの話だよ。』を発売! それを記念して、歯に衣着せぬ率直さと抜群の言葉センスでいま引っ張りだこのファーストサマーウイカとの対談が実現。それぞれの表現を極める2人は何を語る? 本誌未収録部分を含む拡大版のロングインタビュー。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年9月号掲載)

SNSで繋がってから、念願の初対面!

パントビスコ(以下P):「今日はお会いできて嬉しいです。SNSでは何度かやりとりをさせていただいていますが、実際にお会いするのは初めてですね」 ファーストサマーウイカ(以下U):「いつも作品を拝見していて、ずっとお話ししたいなと思っていたので光栄です。パントさんの作品のイラッとするポイントや、笑いのツボが私と同じ感覚があって。SNSでは冗談が通じなかったりバイブスが合わない人がたくさんいる中で、そういうフラストレーションを乗り越えてきた同士というか理解者だと勝手に思っています」 P:「それはありがたいです。僕も不特定多数の方に当てはまるようなことを描きたいと思うときもあれば、表現者のことを守りたいと思って描いている部分もあるので、そこに共感してくださるのは、嬉しいですね」 U:「最近の投稿、めちゃくちゃ丁寧ですもんね。コメント欄の治安を守るために、きっとこんな細かいことまで言いたくないだろうなと思いながら拝見してます(笑)」 P:「僕は、ウイカさんがツイッターでエゴサして見つけた少し癖のあるコメントに、ご自身でリプをされるのが好きなんです」 U:「よくあるんですよ。『ファーストサマーウイカに似てるって言われたけどビミョー』とか。『どういった点が微妙ですかね?』って聞きに行くんです(笑)。嫌みでもなんでもなく、今後の参考のためにただ知りたいっていう」

P:「攻撃するわけじゃなくて、純粋に疑問に思ってコミュニケーションを取ろうとしている。そういうことをしているタレントさんってほかにいないですよね。だから面白いです」

U:「一時期、SNSでの誹謗中傷が加熱しましたよね。表現者の我々は基本泣き寝入りしろというのが一般の声なんですが、誹謗中傷の書き込みにおいて私がいつも思うのは、自分が『家』だとしたら、家の中にうんちを投げ入れられるのが直リプ、玄関の前がうんちでビッタビタになっているのはエアリプとかYahoo!ニュースコメント欄だなと。なんでそれを『気にするな、スルーしろ』って言える?泣き寝入りしなきゃいけない?と思う。玄関先汚れてたら掃除して『投げないでください』って警告するし、家まで侵されたらそりゃ警察に届けるじゃん、って話で。それと同じだと思うんです」

P:「しかも、臭いは残りますしね」

U:「ある意味、営業だと思っていて。嫌いっていうのは好きの裏返しでもありますし、私のことを知らないとか無関心よりも価値のあることなので、あえて背中をトントンしに行くというか。そこはうまくSNSと付き合っていきたいなと。そういう意味ではパントさんの作品はうまいですよね。道徳の教科書に載ってもいいくらい」

P:「キャラクターを通してメッセージを伝えることがあるので、ワンクッション置いていることになりますね」

U:「だからこそサイコパスオが生まれたり、私の大好きなキビ島キビシというキャラクターもいますし」

P:「サイコパスオにも良心があって、反面教師にする方もいるんですよね。『こういうことをしちゃダメだよ』と指し示すシンボルとして」

U:「だから人気キャラなんでしょうね。救いがあるというか。今回のLINEシリーズ本でいうと、グループラインで失敗した人の話とか、大家さんも可愛いし、バイトの店長やおじさんのミスもお気に入りです」

P:「日常に潜んでいそうなエピソードのものですね」

U:「これは戯曲を読んでいるのと一緒ですから。風景描写や背景はないので、読む人が足りない情報を脳で補足して、名前など与えられた情報から推理していく感じですね。そういうのが好きな人にとっては楽しいと思います。送信時間やタイミングまで見たり、このオチだからアイコンはこの顔なのか、とか隅々まで味わっています」

P:「完璧ですね。そこまで楽しんでいただいて、ありがとうございます」

LINEでの意外なお悩みとは?

P:「ウイカさん自身は、LINEでのコミュニケーションで悩んでいることってありますか?」

U:「グループLINEが極端に苦手ですね。面白いことを言おうとすると、絶対に成功しないのがLINEだと思っています(笑)」

P:「バラエティ番組での印象だと、ハイテンションで饒舌にテンポよく答えていらっしゃるので、それは意外です」

U:「1対10くらいになると、球がどう動くかわからないので、基本圧倒的に受け手に回ります。『まじか』と相槌を打ったり。自分が憧れているような人たちとやりとりすると、LINEでも緊張するんですよね。『今イケてる感じで返せてるかな?』とか、いろんなこと考えちゃうんです」

P:「パブリックイメージとは真逆で、実は誰よりも繊細なイメージ。気を遣いすぎですね」

U:「元々ネアカじゃないので、イケイケな感じに合わせるとこのカード合っているのかな?と」

P:「だからこそ、人の話をちゃんと聞けるし、寄り添えるんですよね。僕の場合は、一回ご飯を食べに行っただけのグループLINEが下の方にあるのが気になるんですよね」

U:「誰かわからない人もいっぱいいますよね。AY…♡みたいな。誰やねん!て(笑)」

P:「僕はアイコンも真っ白にしています。服もロゴやイラストが入っているものより、無地を好んでます。情報をあまり与えたくないんですよね」

U:「なるほど。パントビスコさんは自分の分身として作品がありますが、私は私が作品なのでキャラを作っていると表現されるのが嫌で。『キャラ無理してない?』と言われるんですけど、作風もいろいろパターンあるし、そもそもそんなに無理していたらやってないわ!と」

P:「LINEのレスは早い方ですか」

U:「う〜ん。どこまでを早いとするか」

P:「難しいですよね。既読をつけないでおこうとすることもありますし」

U:「そうなんですよね。長文に対して、すぐに返事をする2行が良いのか。半日経ってもちゃんと誠意を持って返信するほうが良いのか。TPOに応じて返すのがベストだと思いますね」

P:「長文の扱い方にも困っているんですよ。長文を書く人は思いが強いので、その10行の中にはトピックスが4つくらいあるんですね。全部に触れたほうが良いのか、それとも割愛して1個か2個ピックアップするのが良いのか、とか考えるとつい遅くなってしまうんですよ」

U:「わかります! あとは長文といっても、いらない言葉をただダラダラ書かれるってだけのパターンもあります。そういう場合は一刀両断する方が親切かもしれません(笑)」

P:「便利になりすぎると、不便に感じることがありますよね。いま割と女子高生がLINEを使わないというのも聞きます」

U:「その逆にみたいなのが、そろそろわかんなくなってきましたね」

P:「インスタのDMとかでやりとりするらしいです」

U:「逆にLINEしないって難易度が高すぎて」

P:「選択肢が増えたということなんでしょうかね」

U:「ご自分の体験を作品にすることはありますか?」

P:「ほぼないですね。人に聞いた話からインスパイアされることはあります」

U:「会話はどのように作っていくのですか?」

P:「おじさんがここまで生き生きしていたら面白いな、とか誇張するんですね。演出をワンエッセンス足して、あり得ないことを表現したり、仕掛けを作るというかツッコミどころを渡すという感じですね」

U:「キャラクター先行ですか? それともネタ先行ですか?」

P:「ミュージシャンに聞く質問みたいですね。詩先か曲先かみたいな(笑)。質問の答えは、ネタ先行です」

U:「パントさんは作品を通して勝手に硬派なイメージを持っていたので今回お会いしてみたら想像していたより声がちょっと高かったです。ベース系だと思ってたら意外とギター系の声」

P:「初めて言われました。ウイカさんはウイカさんですね。裏表がない」

U:「裏の方が断然いい人です(笑)。ごく普通の人間です」

P:「最後に、ウイカさんは将来どうなるんでしょう?とお聞きしたくて」

U:「5年前と今の自分ではまったく状況が違うので、人生どうなるかわからんなって思いますけど、常に面白いと思うことに飛びつけるようなフットワークの軽さでいたいですね。それと、今後もしキャラクター商品を作ることがあれば、ぜひデザインをお願いしたいです!」

P:「もちろんです。お待ちしております」

『パントビスコ ここだけの話だよ。』

ハマる人続出! 超人気おもしろLINEトークが初の書籍化

Instagramで55万人のフォロワーを抱える注目のマルチクリエイター、パントビスコによる待望の新刊。個性豊かな登場人物たちが繰り広げる架空のおもしろLINEトークを約300作品収録している。「わかる!」と共感したり、思わずクスリと笑ったり、あらゆるコミュニケーションのかたちが詰まった「現代版コミュニケーションの教科書」としても使えるかも!? 人気キャラも多数登場、本書でしか読めない描き下ろし漫画やスペシャルな壁紙がダウンロードできるQRコード付き!

著者/パントビスコ
定価/¥1,300(税抜)
仕様/A5判 120ページ
発行/扶桑社

特典付き! Amazonはこちら

衣装(ファーストサマーウイカ):ブラウス ¥44,000/Kloset(H3O ファッションビュロー 03-6712-6180)パンツ ¥31,000/United Tokyo(ユナイテッド トウキョウ 渋谷店 03-6712-5513)その他/スタイリスト私物

Photos: Kouki Hayashi Styling: Iyo Kondo(First Summer Uika) Edit & Text: Yukiko Shinto

Profile

ファーストサマーウイカFirst Summer Uika 1990年6月4日、大阪府生まれ。劇団員として活躍後、2013年アイドルグループ「BiS」に加入しデビュー。2015年「BILLIE IDLE®」結成後ライブを中心に活動し、2019年解散。現在はバラエティ番組や声優業、女優業のほかラジオ番組のレギュラー3本を担当するなどマルチに才能を発揮。Instagram: @f_s_uika
パントビスコPantovisco Instagramで日々作品を発表する話題のマルチクリエイター。これまでに4冊の著書を出版し、現在は「パントビスコの不都合研究所」(Numero.jp)をはじめ雑誌やWebで7本の連載を行うほか、三越伊勢丹、花王、ソニーなどとの企業コラボやTV出演など、業種や媒体を問わず活躍の場を広げている。Instagram: @pantovisco

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