BiSHインタビュー「会いたいけど会えないから、音楽に込めた私たちの想い」 | Numero TOKYO
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BiSHインタビュー「会いたいけど会えないから、音楽に込めた私たちの想い」

「楽器を持たないパンクバンド」BiSH。2015年にデビューして以来、6人のパワフルなパフォーマンスは、多くの熱狂的なファンを生み出してきた。精力的にライブ活動を行ってきた彼女たちだが、今年、新型コロナウィルスの影響により予定されていたツアーやフェスが全て中止に追い込まれた。そこで、今の想いを詰め込んだアルバム『LETTERS』を急遽リリース。曲に込めたメッセージや、彼女たちの今について話を聞いた。

(左上から時計回りに)アイナ・ジ・エンド、ハシヤスメ・アツコ、アユニ・D、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、リンリン
(左上から時計回りに)アイナ・ジ・エンド、ハシヤスメ・アツコ、アユニ・D、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、リンリン

活動を初めて6年目。1ヶ月も休んだのは初めて

 

──今回の『LETTERS』をリリースする経緯を教えてください。

セントチヒロ・チッチ(以下チッチ):「元々は、夏にシングルをリリースする予定で制作していたんです。でも、世界がこういう状況になり、BiSHの活動もストップしてしまって。もどかしい日々の中で、私たちにできることはないかと考えたときに、それは音楽を届けることなんじゃないかと思って、新曲を追加して、“3.5枚目のアルバム”という形にしました。BiSHはいつも等身大の気持ちを歌っているけれど、今回は、これまで以上にストレートな気持ちを込めています」

──外出自粛期間中はお休みだったんですよね。

ハシヤスメ・アツコ(以下ハシヤスメ):「2月末までライブがあって、3月に無観客ライブをして。そこから1ヶ月以上お休みでした」

アイナ・ジ・エンド(以下アイナ):「お休み中にリモート取材を受けたり、それぞれ曲を作ったりはしていたんですけど、メンバーと、こんなに会わなかったのは初めてだったかも」

アユニ・D(以下アユニ):「自粛明けで全員が顔を合わせたのは、練習のときでした。普段なら終わったらみんなすぐに帰るんですけど、活動が再開して初めての練習は、みんなずっと残って喋ってました」

モモコグミカンバニー(以下モモコ):「久しぶりだから、ちょっとぎこちなかった気がします」

ハシヤスメ:「1ヶ月でみんなが激太りしてたり、顔が変わっていたらどうしようと思ったけど、そのままで安心しました(笑)」

セントチヒロ・チッチ
セントチヒロ・チッチ

──デビューから6年目。『アメトーーク』では「BiSHドハマり芸人」の回が放送されたり、各メンバーがそれぞれメディアで活躍したり、注目が高まっています。今、BiSHとして新たな段階に入っている感覚はありますか。

チッチ:「これまでライブでたくさんの人と出会って、支えられて今があるので、一歩ずつ新しい場所に進んでいる感覚です。私たちはこうありたいという考え方は成長しているけれど、中身は変わらずそのままです」

モモコ:「プロデューサーの渡辺(淳之介)さんが、お客さんが入るのか心配になるくらい大きなハコを押さえて、さあがんばれ、と言うような人なので、最初の頃はずっと背伸びして、しがみついてきて。そんなBiSHをみんなが支えてくれて今があるので、みんなで一緒に歩いてきたという感覚です」

ライブが再開したら、音楽で気持ちのいい殴り合いをしたい

──着実に積み重ねていたところで、新型コロナウィルスによる自粛要請がありました。ライブもフェスも、中止が発表されましたが。

チッチ:「やっぱり、自分たちのツアーが中止になったことが一番悔しいです。ライブは自分たちの生き様を見せる場所なので、今は生きているけれど生きてないような不思議な感覚です。でも、こういう状況になったからこそ、新しい表現方法が生まれるかもしれないし、全てがネガティブな感情ではないのですが、それでも五感で音楽を体感できる場所を取り戻したい気持ちはあります」

モモコグミカンパニー
モモコグミカンパニー

──無観客ライブと、清掃員(BiSHのファンのこと)を前にしたライブとでは気持ちが異なりますか。

モモコ:「同じ空間にいるかどうかは大きいと思っています。画面を通すと少し冷静になってしまうので、ライブの熱気が伝わらないような気がして」

アイナ:「今回、私たち以外にもライブという生きがいを失った人も多いと思います。私たちが手助けできることはしたいし、私たちもみんなに早く会いたい。ライブが再開したら、その気持ちをぶつけたいです」

──新型コロナウィルスが終息してライブ活動が再開したら、どんなパフォーマンスをしたいですか。

アユニ:「清掃員のみんなは、それまでのフラストレーションやストレス、嬉しい思い出も、悲しい思い出も、全部ライブにぶつけに来てください。私たちも今、ライブができない分、溜まった感情を全身全霊で出したいし、音楽で気持ちのいい殴り合いができたらいいなと思います」

ハシヤスメ:「私たちもライブをしたいし、いろんなライブを観たい。ライブって、欲のぶつけ合いだと思うんです。ライブをしたい欲と、ライブを観たい欲です。再開したらBiSHはこれまで通りやる所存ですので、清掃員も今までと同じ気持ちでいてください」

アユニ・D
アユニ・D

プライベートも6人6様。ステイホームの過ごし方

──BiSHでいる自分と、プライベートの自分は“イコール”ですか。

チッチ:「イコールであり、別人という気がしています。表現している気持ちや言葉は等身大なんですけど、ステージに立った瞬間にみんなガラッと変わるので」

モモコ:「私は普段は、ダメダメな人間なんですけど、見てくれる人がいるから頑張れるし、強くなれる感覚があります」

リンリン:「そうね」

ハシヤスメ:「よく、プライベートの友達に『こんな人だったっけ?』と言われるんですよ。ライブではコント担当なんですけど、普段は急に大声を出したりしませんし。でも、BiSHの衣装を着るとスイッチが入ります。それにメガネ」

アユニ:「私は、そのままの生き様を見せていると思っているけど、BiSHだと強くなってるかもしれない。全部を発散できる場所というか、いろんな感情を得られるし、境界は自分でもわかりません」

リンリン
リンリン

──ライブができないストレスはどんなことで解消していましたか。または、最近、新しく始めたことは?

リンリン:「友達のスタイリストに服をコーディネイトしてもらって、スカーフなどの小物使い、柄の合わせ方などファッションの勉強をしたり、ポーズを研究したりしていました。ファッションが好きなので、全てを忘れて楽しめる時間でした」

──好きなスタイルは?

リンリン:「ワンピースにパンツやジャケットを合わせて、女性らしいアイテムを使いつつメンズライクに仕上げるスタイルが好きです」

モモコ:「私は家で過ごす時間が増えたので、豆を買って自宅で挽いて、コーヒータイムを楽しんでいました」

チッチ:「私も普段からカレーが好きなんですけど、ストレス解消はカレー作りです。自分でスパイスを調合して、辛いものに挑戦したり。試行錯誤して、失敗しても自分で受け入れる過程が楽しくて。それから、猫がいるので、猫に癒されてます」

──コーヒーとカレーで、何かコラボできそうですね。

チッチ:「私、喫茶店でカレーを出すのが夢なんです。モモコのコーヒーで、ランチョンマットはリンリンに描いてもらって」

モモコ:「会計はハシヤスメにやってもらおう(笑)」

ハシヤスメ・アツコ
ハシヤスメ・アツコ

──ハシヤスメさん、アイナさん、アユニさんはなにか新しく始めたことはありますか?

ハシヤスメ:「ライブが中止になって、体力の衰えが一番心配だったので、自宅に簡易スタジオを作りました。再開したとき、いつものBiSHが見せられなかったら嫌だから、ダンスの練習をしたり、グリーンバックや多方向に固定できるカメラを買ったり。リモートで雑誌の表紙撮影をすることもありましたよね。これからエンタメの形も変わりそうだと思って、時代に乗り遅れないように家の環境を整えました」

アイナ:「私は携帯アプリのゲームにハマりました」

アユニ:「私は、避けていたジャンルに向かい合うために、80年代90年代の日本映画を観ていました。映画は好きなんですけど、そのあたりの映画は観ていなかったので。『逆噴射家族』『家族ゲーム』が印象的でした」

BiSHの強さの秘密は「等身大であり続けること」

──BiSHのように、強い女の子であり続けるために、必要なことはなんだと思いますか。

アイナ:「強さと弱さって表裏一体ですよね。それは、自分でどうにもできないし、なるようになるしかないと思っていて。ただ、女性としての強さは、全てを受け止めることだと思います。眠れない夜が来ても、今夜は夜と結婚するんだという気持ちで乗り越える。それが自分を強くすると思います」

モモコ:「誰かの真似をしないことかな。BiSHは恋愛の歌詞が少ないんです。生きていることを等身大に描く歌詞が多いので、女の子だからどうこうというより、ただ、自分が自分のまま生きることが大事なのかも」

チッチ:「かわいこぶってたり何かのフリをすると、生き辛くなりますよね。BiSHは6年間やってきて、ダメなことは設けず、いつもありのままを表現しているんですが、それが自分たちも居心地のいいやり方だし、自然と強さにつながっているのかもしれません」

アイナ・ジ・エンド
アイナ・ジ・エンド

リンリン:「目標を持つと生きている実感が湧くので、夢があるのは大事です。BiSHとしては、東京ドームのステージに立ちたいし、紅白にも出場したい。私個人は、もっと曲を作りたい、もっとファッションの仕事をしたい、ファッションと音楽を絡めて表現したいとか、たくさんあります」

アユニ:「私は、嫌なことや傷つきそうなことから逃げて楽に生きていたいタイプなんですけど、生きていると我慢しなきゃいけないこともありますよね。でも、今やってることは、全部自分が好きなことだから、死なない程度に頑張れることは頑張って、やれることは全部やる。壁が立ちはだかっても、無駄ではないと思って生きています」

ハシヤスメ:「環境や人の意見に左右されて、惑わされて、自分がどんな人間かわからなくなることはあるけど、自分の正しさを持っていれば強くなれる気がします。自分は、冷静でいようと思うことが多いかな。それに、芯がぶれないようにすることですかね。BiSHの音楽を聞いて、少しでもそんな気持ちになってくれたらいいなと思っています」

BiSHから「未来の私へ」

アイナ:「未来の理想はないのですが、何人かの占い師に『若くして死ぬ』と言われたことがあったので、ちゃんと生きていることが目標です」

リンリン:「人間として成長していたい。もともと自我が強すぎる人間なので、他人の気持ちを理解したり客観的に受け止められる人になりたいです」

モモコグミカンパニー:「昔はなりたいものがたくさんあったけど、自分は自分にしかなれないを悟ってしまいました。でも、それが一番カッコいい生き方なのかもしれない。日々、いろんなことを吸収して、自分のまま大人になれたらいいな」

ハシヤスメ:「BiSHとしては紅白歌合戦に出場、東京ドームでのライブ、テレビにも出演し続けたい。個人的には、女性としての幸せも掴みたいし、自分らしくもっと芯の強い女性になりたいです」

アユニ:「私は無意識に冷たい話し方をするようで、人を傷つけることも多いし、マイナス思考だから自分が傷くこともあるので、未来はもっと温かい人間になりたいです」

チッチ:「未来も、ずっと好きなことをやり続けられていたらいいな」

 

Photos :MELON(TRON) Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Mariko Kimbara

Profile

BiSHビッシュ 2015年3月に結成し、2016年5月avex traxよりメジャーデビュー。以降、横浜アリーナや幕張メッセ展示場等でのワンマンライブ開催やロックフェスへの出演などライブパフォーマンスを中心に活動。7月8日にはBiSH初となるベストアルバム、『FOR LiVE -BiSH BEST-』をリリース、7月22日は自身3.5 枚目となるオリジナルアルバム『LETTERS』の発売が決定している。

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