大竹しのぶ & IMALU「愛犬のバルーと人生を共に歩んでいきたい」 | Numero TOKYO
Interview / Post

大竹しのぶ & IMALU「愛犬のバルーと人生を共に歩んでいきたい」

愛情によって結びついている家族。動物たちを家族の一員として迎え入れることで得たスペシャルなものとは? 写真家、篠山紀信が捉えたポートレートとインタビュー。(「ヌメロ・トウキョウ」7・8月合併号掲載)

──8歳の頃からウエルシュ・コーギーを飼育し、動物愛護のイベントにも参加する、動物好きのIMALUさん。でも、お母さまの大竹さんとお祖母さまは、ずっと苦手だったそうですね。 大竹(以下O)「昨年(2018年)他界した私の母は、とにかく動物が苦手でした。だから、自然と私も動物と暮らすなんて考えたことがなくて。小学生の頃に近所につながれていた犬に咬まれたこともあって、犬も猫も怖くて仕方がなかったです」 ──IMALUさんの犬好きはどこからきたのでしょう。 IMALU(以下I)「きっかけとかは覚えていないですが、物心ついたときから動物がすごく好きでした。でも、飼えなかったので、サンタさんに犬図鑑をお願いしたり、犬のぬいぐるみを集めて、みんなに名前を付けたり。買ってもらった犬のリードにぬいぐるみをつないで、一緒に散歩もしていました」 O「クイールっていう名前を付けた、おっきなぬいぐるみね」 I「あげくの果てには、近所のインターホンを押して『お散歩させてください』とお願いして。シェットランド・シープドッグ(シェルティ)と柴犬、2頭飼いのおうちがあって、柴犬はちょっと力が強いからって、シェルティの子と散歩に行かせてもらいました」 O「私もついて行きましたが、近所を歩いていると、『ここは○○ちゃんの家』、『ここはXXちゃんの家』って、犬の名前も犬種も全部説明してくれました。家族でスキーに行ったときは、泊まったペンションのオーナーがシェルティをたくさん飼っていたんです。そうしたら、もううれしくて楽しくて、スキーもしないで犬たちと遊んでいたよね。帰ってからは『また会いたいね』って、犬に手紙を書いて…(笑)」

I「全っ然覚えていないけど、犬に手紙ってヤバイですね(大笑)。でも、そこまで好きなら…と母が折れて、祖母のOKが出たら飼ってもいいと言われたのが8歳のときです」

──コーギーを選んだのは?

O「最初は、ラブラドールが欲しいって言っていたよね」

I「とにかく、大きい犬が飼いたかったんです。でも、家族全員が初心者ですし、大型犬は大変なんじゃないかということで、サンタさんからもらった犬図鑑を出してきてコーギーに(笑)」

──最初に出会ったのがルルちゃんですね。大竹さんは、軍手をしないと触れられないくらい怖かったとか。

I「自分も小さかったですし、母も祖母も世話はできないですから、最初はトレーナーさんに週に何回か来ていただきました。でも、なぜか犬を軍手でしか触れない母が、ルルに子どもを産ませようって言い出したんですよね。私や兄への、教育の一環だったのかな…と思いますけど」

O「当時はそれが『自然』なんだろうと思っていたんですよね。いま考えると、まるで自然ではないのに」

I「繁殖についてはいろいろな意見があると思いますが、いま振り返ると、業者さんによる無理やりな交配で…。ルルには本当にかわいそうなことをしました。でも、彼女を通していろいろなことを学ぶ機会になりました」

O「しかも、病院ではなく自宅出産。一人で立ち合ったのよね。私は舞台の仕事が入っていたので、楽屋でストレッチしているときに、『生まれるー』って電話がかかってきた」

I「高校生だった兄と小学生の私、生まれる瞬間、大人は誰もいなくてもうパニックでした(笑)。胎盤をはがして、へその緒を切るためのハサミと手袋を用意して…。でも、ルルちゃんは全部自分でやってくれたんです。胎盤を全部なめ取って、途中オエッとゲップしながら、へその緒もギリギリと噛み切って。誰も教えていないのにこんなことができる。母性本能ってすごいなと驚きました」

──そのときの子がスーちゃんですね。

I「はい。最後に生まれた未熟児の子を、うちで迎えることにしました」

O「スーちゃんは弱くて、元気な子たちにじゃまされて、おっぱいがうまく飲めなかったんですね。で、夜中になると、ルルがスーだけを口にくわえて、そーっとIMALUの部屋に連れていくんです。で、おっぱいを飲ませて、またくわえて戻る」

──わ! それは感動です。

O「はい。すごいと思いました。子どもを育てる気持ちは、私たち人間と同じなんだなって。ルルとスーに教えてもらって、その頃から、私自身も犬に対する見方が変わりました」

──今いるバルーちゃんは、ルルちゃんのひ孫にあたるそうですね。

I「はい。知らないうちにルルの血が受け継がれていました。ルルが亡くなって間もない時期だったので、生まれた子犬を引きとることに迷いはありませんでした。3頭も飼うなんて思ってもいなかったけど(笑)」

O「高齢になった母が緩やかに老いていく日常に、バルーがやって来ました。家の中を走り回る若いエネルギー、その存在に、母の命も刺激されたんじゃないかなと思います」

I「祖母も後年は犬を撫でられるようになっていたし、いないと『寂しい』と言うようにもなっていました。何より明るくなったよね」

O「でも、犬は本当にうちで幸せだったのかなって思うこともあります。私も娘も夜型なので、初代2頭は夜型でした。『深夜に散歩はしないように』って獣医さんに言われて…」

I「人間と一緒で、昼間はちゃんと太陽光を浴びて、夜の22時くらいには寝たほうがいいですよって」

O「そしたら、IMALUが『朝の4時くらいに行くのはどうですか?』って。それって起きる時間? 寝る時間? さすがに『いやぁ…それは』って言われちゃった(笑)」

I「いま、バルーは夜22時くらいには寝ています。遊びに行く時も、その前に実家に寄って、散歩してゴハンをあげてから遊びに行くように。人間が成長しました(笑)」

──そんなバルーちゃんも8歳ですね。

O「ずっと忙しかったし、母の介護もあったので、じつはバルーにしてあげられていないことがたくさんある。これからは、バルーと人生を共に歩んでいきたいなと思います」

I「私が家を出て一人暮らしを始め、祖母も他界。環境もずいぶん変わりました。バルーももうシニアの域なので、あとの日々をどれだけ楽しく過ごさせてあげられるかが勝負。今はそこに集中したいと思います。この先の犬のことを考えるのは…私が結婚したときかな!」

O「そうだねえ…」

──ずいぶん抑揚のないお返事(笑)。

O「一体いつになることやら(笑)」

──IMALUさんの結婚相手の方は、犬好きじゃないとダメですね。

I「それだけは絶対、ですね(笑)」

IMALU: ドレス¥75,000/Tory Burch(トリー バーチ ジャパン) ピアス/スタイリスト私物

篠山紀信が撮りおろす家族の肖像〜動物編〜

Photos: Kishin Shinoyama Hair&Makeup : Katsuhide Arai(大竹しのぶ)Hair&Makeup : CHIHIRO(IMALU)Styling : Mana Kogiso(IMALU)Text: Maki Miura Edit : Yuko Aoki, Michie Mito

Profile

1975年映画「青春の門-筑豊編-」ヒロイン役で本格的デビューした女優の大竹しのぶ。 唯一無二の豊かな表現力で主要な演劇賞を数々受賞。モデルやタレントとして活躍する娘のIMALUは、今年芸能活動10周年を迎えた。

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