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斎藤工インタビュー「後悔のない、わくわくするほうを選ぶ自分でいたい」

Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)9月号では、12年ぶりに来日したジョルジオ・アルマーニの撮り下ろし&インタビューとともに、5月24日に開催された2020年ジョルジオ アルマーニ クルーズコレクションショーの模様を特集。同企画に参加した斎藤工に、さまざまなジャンルで日々重ねている“挑戦”をテーマに話を聞いた。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年9月号掲載 *本誌未収録分を含むロングインタビュー)

Photos: Leslie Kee ジャケット¥300,000、シャツ 参考商品、タイ 参考商品/すべてGiorgio Armani (ジョルジオ アルマーニ ジャパン)
Photos: Leslie Kee ジャケット¥300,000、シャツ 参考商品、タイ 参考商品/すべてGiorgio Armani (ジョルジオ アルマーニ ジャパン)

自分自身が面白がれるように取り組んでいきたい。

──ジョルジオ・アルマーニさん本人やブランドへの印象は?

「並大抵のお方ではないですよね。センスについては改めて僕が言うまでもありませんが、ブランドの維持とは企業努力の賜物でもあるじゃないですか。きっと華やかな歴史の陰で、知られざるさまざまな苦労を乗り越えてこられたからこそ、今なお第一線で輝かれているのでしょうね」

──6月には、お一人でトロントの日本映画祭を訪れたと聞きました。

「自ら構想から参加した主演作『麻雀放浪記2020』(DVD & Blu-ray発売中)の上映を聞きつけて、映画祭側と出席を直談判しました。あの挑戦的な作品が、先入観のない土地でどう受け取られるか、直に体感したかったんです」

──今春、放送されたテレビドラマ『東京独身男子』(テレビ朝日系)では、高橋一生さん、滝藤賢一さんとの共演が話題となりました。

「お二人との現場はとても楽しかったです。ドラマの終盤は、脚本についても3人でちょっと意見を言わせてもらいました。プロデューサーと脚本が女性の方でしたので、女性側の目線や価値観に寄ってしまう部分に、男性側からのリアリティを伝えたくて」

──そういった意見や進言を伝える機会は、他の現場でもよくあるのですか?

「そんなことはないです。そもそも僕自身、普段は監督や脚本に物申せるような俳優だなんて、全く思っていませんし。でも、せっかく実力のある、耐久力も柔軟性も素晴らしい役者さんとご一緒できた機会だったので、シットコメディ的な方向というか、決め打ちじゃない何かを宿すような方向も模索できたらと思ったんです。あのドラマでは、本編の他に、3人だけの出演で一発撮りという、舞台のような番外編的な短編(※『別冊 東京独身男子』Abema TVとビデオパスで配信)も撮ったんですが、みんなで地上波放送とはまた違った楽しさがありましたね。あの3人じゃなければ、絶対に実現しなかった」

──出会いも挑戦の大きなモチベーションの一つとなる?

「もちろんそうですね。それこそ(『麻雀放浪記2020』の)白石和彌監督をはじめ、出会うべきタイミングで良い出会いに恵まれているので、殊更そう感じます。映画なら映画なりの、テレビならテレビなりの課題や挑戦があると思うので、臆せずに、自分自身が面白がれるように取り組んでいけたらと」

“映っていない時”も大事。

──俳優業と並行して、企画、監督、さらには移動映画館プロジェクト“cinéma bird”の主催・企画・立案も手がけていらっしゃいますが。

「5月には初めて脚本を書いた舞台(※舞台『ドブ恋10』の一編「ミスター・ベーション」)が上演されました。下北沢のちいさな劇場でインディーズの、いろいろなクリエイターが脚本を担当しているオムニバスの芝居で、ドブのような恋愛模様を描きました(笑)。ゼロから物語を書いて、仕上げた後の全てを制作側に委ねるというのは、自分としてはかなり大きな挑戦でした。7月からは短編監督作の現場に入りました。“cinéma bird”は、9/15に北海道で予定しています。昨年の震災後、まだ何も出来ていなかったので」

──白黒写真家としての活動もされていますね。

「役者って、自分が(映像に)“映っている時”だけではなく、“映っていない時”も大事だと気付いた瞬間があったんです。映っていない時の所作は、翻って、映っている時に必ず返ってくる。だから写真にしても脚本にしても、自分自身が直接スポットライトを浴びない機会のクリエーションは、結局は役者業にとっても、とても重要な気がしています」

──一方、バラエティ番組では、「そこまでやるか!?」と芸人が舌を巻く程の振り切れ方でトークやギャグに取り組む姿が度々話題を呼んできましたが。

「それ、よく取材の場でも言われるんですが、決して勢いでやっているわけではないんですよ(笑)。事前に計算はせず、進行のなかで「この手があるかも?」といった突破口を探り、セオリーの範囲には収まらないようなアクションを仕掛けてみる。すると共演の方々も全力で受け止めて下さって、何だか場が膨らんで面白くなっていく時があるんです。自分が笑われることで、その番組の面白さや、自分の出演作品の宣伝に少しでも寄与できるのであれば、臆することなく振り切っていきたいですね(笑)」

──斎藤さんが「AかBか」、「やるかやらないか」という岐路に直面した時、選択を決する基準や決め手となるものとは?

「常に後悔のない自分がわくわくするほうを選びます。このスタンスは全ての活動においても同じですし、もっと言えば、日頃、食事のメニューを選ぶ瞬間でもそうかもしれない(笑)。そうしないと、自分がどんどんシュリンクしてしまうじゃないですか。自分の世界を狭めたくないんですよ。前もって想定していなかった局面に立ち向かうことで、また新たな能力が開花することだってあると思うんです。身体も心もケガをすれば傷つくけど、かさぶたの分だけタフになれると信じているので、怪我や傷を恐れず、どんどん擦りむいて、皮膚を分厚くしていきたいんです」

2020年から先も遺っていく表現とは。

──まさにジョルジオ・アルマーニさんもそうですが、挑戦をし続けながら、第一線に、しかも長く在り続けられるのは、ほんの一握りの才能だと感じます。

「本当にそう思います。アルマーニさんが築いてきた歴史って、きっと日本人で言えば山本耀司さんや川久保玲さんのように、イタリアの皆さんにとっても誇らしいのでしょうね。例えば、いつの時代もファッションと映画の関係性は密接です。例えばアニエス・ベーとギャスパー・ノエのような、デザイナーが監督を支援するような関係性もありますよね。そして映画に限らず、現代の芸術表現にはスピード感もまた密接です。その一方、幾層もの歴史と挑戦の蓄積で培われた、言わば鍾乳洞のような美もあります。そんな美しさが、アルマーニというブランドにはあるんじゃないでしょうか。今回、ジョルジオ・アルマーニという偉大な鍾乳洞の恩恵に触れた経験を、僕自身、今後の挑戦に繋げていけたらいいと思っています」

──最後に、いま様々な表現の現場で挑戦をしていて、肌で感じていることがあればお聞かせください。

「僕は決してアートやエンタテインメントの全てが見渡せているわけではありませんが、いま、フィルムメーカーやクリエイターに限らず、日本の様々なジャンルの表現者は、自ずと来年の2020年という節目を意識した方向に向かっているような気がします。言い換えれば、篩(ふるい)に掛けられている時期でもあると思うんです。時代の流れに乗る表現とはどんなものなのか? またその中で、2020年から先もしっかりと遺っていく表現とは何なのか? 表現する者の一人としても、表現を愛する者の一人としても、今はそこが楽しみですね」

Interview & Text:Masaki Uchida Edit:Michie Mito Assistant:Mariko Kimbara, Shiori Kajiyama

Profile

斎藤 工Takumi Saitoh 1981年、東京都生まれ。2001年に俳優デビュー。現在、大河ドラマ『いだてん』(NHK)出演中。齊藤工名義でフィルムメーカーとしても活躍し、初長編監督作『blank13』(18)では国内外の映画祭で8冠を獲得。公開待機作は、『MANRIKI』(企画、プロデュース、主演、11月29日公開予定)、日本のコンプライアンスをテーマにした映像作品『COMPLY+-ANCE』(企画、脚本、監督、撮影)、HBO ASIA のオムニバスドラマ第2弾「FOODLORE」の1編『Life in a box』(監督)。また、白黒写真家としても作品を発表するなど、活動は多岐にわたる。

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