ファッション界も注目!実力派次世代ディーバ、ジョルジャ・スミスに直撃
ドレイク(Drake)、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)らも認める、期待の新星R&Bシンガー・ソングライターと呼び名も高いジョルジャ・スミス(Jorja Smith)。「サマーソニック2018」出演のために来日した彼女にインタビュー。
憂いを帯びた歌声で聴くものの心にそっと語りかける、21歳のシンガー・ソングライター、ジョルジャ・スミス(Jorja Smith)。イギリスのウォルソール出身の歌姫は、英国版グラミー賞と称されるブリット・アワーズで、最も活躍が期待される新人アーティストに贈られる賞“クリティック・チョイス 2018”を獲得。さらには、ドレイク(Drake)からスクリレックス(Skrillex)、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)、ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)までをも魅了し、世界中から熱い視線が注がれている。
“普通の女の子”であることを武器に
──サマーソニックでは、若い女性ファンが多数あなたのステージに集まっていたのが印象的でした。彼女たちの心を掴んでいるのは、なんだと思いますか? 「彼女たちの経験に重なる恋愛をテーマにした歌をうたっているからかしら。それに、私が特別痩せているわけではない、普通の女の子というのも親近感を持ってもらえるんだと思う。日本のオーディエンスは、歌っているときは静かに聞いてくれるし、終わったらちゃんと拍手してくれて、とても嬉しかったわ」 ──オフィシャルインタビューでは、映画『ロスト・イン・トランスレーション』のような体験をしたいと語っていましけど、実現できましたか? 「カラオケはまだ行けてないから、すごく楽しみ!もし機会があったら、『ロボット・レストラン』にも行ってみたいわ。昨日は、渋谷のスクランブル交差点で派手な車に遭遇して興奮したんだけど、そのあとドン・キホーテの水槽にウナギみたいに大きな魚が泳いでいるのにも、かなり驚かされたわ。六本木では、24時間やっているコスメショップを見つけたから、そこでスキンケア用品をゲットする予定よ。日本のコスメは優秀よね」──では、出身地であるウォルソールという街についておしえてください。「ブルー ライト」のMVはここで撮影したんですよね?
「ええ、そうよ。小さな街では、都会のようにチャンス得るのが難しいの。だから、この街を出て成功したいっていうハングリー精神やパッションを自然と持つようになったわね。ジュエリー・デザイナーの母のほかに、写真家やプロデューサーとか、クリエイティヴなひとが実家の近くに集まっているの」
──街を出たいと思うひとが多いのでしょうか?
「ひとそれぞれね。母はロンドン、NY、トルコに住んだこともあるんだけど、今はウォルソールに戻って暮らしてる。一方で父は街から出たことがないの。私はサウス・ロンドンに引っ越して1年半経つけど、いずれは戻りたいと思っているわ」
──現在は、コズモ・パイクやロイル・カーナーなどを輩出するサウス・ロンドンを拠点にしていますね。そこから面白いアーティストが多数誕生している秘密はなんだと思いますか?
「サウス・ロンドンは音楽に限らずシューズデザイナーや、画家とかアーティスティックなコミュニティもあるし、引っ越したばかりの頃は、レイ・ブラックやストームジーとかが出てきてクールなエリアとして持て囃されていたわ。けど、私は今だにウォルソール出身という意識が強いから、その秘密は分からないわね。ロイルには、とあるライブで『ライフ ボート』のヴァースを歌ってもらったことがあったわ」
──サウス・ロンドンで特に仲の良いミュージシャンはいますか?
「やっぱり自分のバンドメンバーね。日本人キーボーダリストのアマネ・スガナミに声をかけたのがきっかけで、バンド結成に至ったんだけど、彼はほかのバンドでもプレイしているのよ。ドラマーのフェミ・コレオソも、エズラ・コレクティブというジャズバンドのメンバーなの」
──最新作『ロスト&ファウンド』ですが、制作中にバンドと共通言語にしていたアーティストとかいるのでしょうか?
「ライブ感があって、リスナーがまるでレコーディングした部屋の中にいるかのように感じられる、ナチュラルで作り込みすぎない1枚にしたかった。ソランジュとエイミー・ワインハウスは、まさにそんな作品を生み出しているから、皆でよく聞いていたわね。エイミーが綴る言葉はありのままをさらけ出していて信頼できる。歌詞においても、かなり影響を受けているわ」
──ストーリーテリング力の高い歌詞も魅力的ですが、どうやってそのテクニックを磨いたのでしょうか?
「ありがとう。ジャックリーン・ウィルソンという児童作家の作品に憧れて、表紙を開けて第1章で終わっちゃうような本をたくさん書いてきたの(笑)。あとは、英文学を専攻したから、クラシックな作品ももちろん読んできたわ。『ビューティフル フールズ』は『華麗なるギャツビー』からインスパイアされて生まれた一曲よ」
──最新作には17歳から20歳までの曲を収録したそうですが、その間にあなたの視点はどう変化したと思いますか?
「昔は、恋も100パーセント経験しているわけではなかったから、観察して曲にしていたけど、今は実体験から書くようになったわ。パーソナルなものにするという視点は変わっていないわね」
──会ってみるとあなたから発せられるハッピーなオーラと、感傷的な作品とのギャップにいい意味で驚きました。
「元の性格は明るいけど、曲は悲しいものを書くのが得意だねってひとにも言われるし、実際そうなのよね。アルバムに入っていない『オン マイ マインド』は『ようやく、あなたの悪いところがわかったわ」って歌っているんだけど、ある意味ハッピーだと言えるかもしれない(笑)」
──知名度が上がるにつれて、自分自身でいられなくなることもあると思いますが、そんなときはどうしていますか?
「家族もそうだし、バンドやマネージャーに恵まれていて、いつでも自分らしくいられているようにサポートしてもらってるわ。知名度はまだまだだから、もっと有名になったときにどうするかなというところね」
──あなたのクリエイティヴ面でのゴールは?
「ほかのアーティストのために曲を書きたいわ。いい曲なんだけど、歌うのは自分じゃないっていうものがたくさんあるのよ。ソランジュ、フランク・オーシャン、シャーデーとは、いつかコラボレーションしたいわね」
ファッションを愛し、自分らしいスタイルを貫く
──東京、大阪ともにサマーソニックでの衣装も素敵でしたが、ファッションのこだわりをおしえてください。
「洋服はナイキ(Nike)のジャージにシャネル(Chanel)とか、ストリートウェアとラグジュアリーブランドをミックスするのが私らしいスタイルね。アクセサリーは、母がデザインしたジュエリー(Jolene Smith)をつけることが多いわ。そういえば、大阪のショーでは、ハナ・ダン(Hannah Dabg)というアジア人デザイナーのドレスを着たのよ。インスタグラムでリナ・サワヤマ(Rina Sawayama)も着てるのを見たんだけど、PVC素材ですごくクールなの!」
──ファッションアイテムであなたが一番大切にしているものは?
「今年買ったフェンディ(Fendi)のパステルイエローのジャケット。作詞のときはセンチメンタルになれるのに、物には全然そんな気分にならなくて(笑)。使わないものはすぐ捨てちゃうから、それくらいかしら」
Interview&Text:Ayana Takeuchi Edit:Masumi Sasaki