三浦春馬インタビュー「怖がらずにもがき苦しんでいきたい」 | Numero TOKYO
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三浦春馬インタビュー「怖がらずにもがき苦しんでいきたい」

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短期でイギリス留学をするなど、30歳を目前にグローバルな経験を積む三浦春馬。俳優という表現の世界で、4歳の頃からキャリアをスタートさせた彼が歳を重ねて見つめるものとは? 28歳の三浦春馬の素顔にクローズアップ。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2018年9月号掲載)

──20代前半の頃は、少年ぽさや可愛らしい印象が強かったですが、その片鱗を残しつつも、男性らしさが増したと最近、言われませんか?

「引き出しは増えたと思います。歳を重ねて成長したのかな(笑)。以前は、仕事に対する価値観や見られ方みたいなところで『こう見せたい』というものがあったりして、柔軟ではない部分が多かったと思うんです。お芝居にしても、写真を撮られるにしても、何かを要求された時に変に構えてしまったりとか。『自分はそういうキャラクターじゃないからやりたくない』みたいな、壁が多分にあって。それが逆にストレスにもなった時期もありました。でも今は、何に対しても全く穿(うが)った見方もしないし、わりと素直に受け止めることができるようになった。『まずやってみよう』というところに、自分のマインドがあるからすごく楽になりました」

──そのきっかけは?

「何かひとつということではなく、何回も自分の中で負け戦をして――それを繰り返し経験し『自分って、たいしたことないな』ということがよくよくわかった。だからこそ、頑張らなきゃいけないという境地に至ったんです。それが今の僕なんだと思う」

パーカー¥60,000/Le Six(エムエイティティ info@the-matt.com)
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──以前のイメージはすごく受け答えが優等生で、良くも悪くも手がかからない俳優という印象がありました。

「おっしゃってること、すごくわかります(笑)。子役時代からずっとやってるからよく“優等生”と言われるんです。それを面白みがないと感じる人もいただろうなと。でも、それが自分の気質だし、どうしようもないんですよね。『もっと本音で話せよ』と言われても、それが本音だし――そういうことで悩んだ時期もあったり。そもそも、そんなに自分を噛み砕いて見せられなくて、周りはもっとフランクな自分を求めているんだろうけど、その方法がわからないことが結構ありました。 20代初めもそうでしたし、ずっとそこで悩んでいたような。でも、最近は全然ない(笑)。誰よりも楽しんでいるという自信が、いまはあるくらいなんです」

──仕事への取り組み方が変わった? それとも人生観が変わった? そんなふうに解き放ってくれたものは何だったのですか。

「自分を安定させる道具だったり、目的、達成意欲みたいなものが今どんどん明確になってきているからこそ、自分のモチベーションを保つための方法がちゃんと見えてきました。それによって、何を言われようが、自分がミスしようが、もちろん落ち込みはするけど、元の自分の心の位置に戻せるようになったんだろうなって。逆方向に行ってしまったら、いつものパフォーマンスが維持できないし、自分らしく生きることができないんだろうなって分かるから、そっちには行かない。そういうことを28歳にして、やっとわかってきたんでしょうね」

──昨年の留学も影響していますか?

「長期で留学に行きたいというのは、20歳を過ぎた頃から考えてはいたんです。自分の可能性を広げるためにも英語を学びたくて。でも、結局時間が取れなくて2ヵ月ほどの短期留学になりました」

ブルゾン ¥195,000/Ben Taverniti TM Unravel Project(イーストランド 03-6712-6777)ベルト ¥35,800/Alyx(エムエイティティ info@the-matt.com)パンツ ¥25,000/Acne Studios Blå Konst(アクネ ストゥディオズ アオヤマ 03-6418-9923)シューズ ¥71,000/Adieu(エドストローム オフィス 03-6427-5901) カットソー/スタイリスト私物
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──長期で仕事を休むのも難しいですよね。勇気もいるというか。

「マネージメントと話をして、自分の俳優人生を長い目で見たら、これは絶対にやりたい、やらせたいという仕事がない時期は吸収の期間にしたほうがいいんじゃないかという結論に。去年の4月中旬から半年くらい留学を考えていたんですが、『これはやっておくべき』という仕事が舞い込んできたりで、結果的に短期間に」

──三浦春馬として今やるべき仕事という判断を、今までずっとしてきたのですか?

「できてなかったですね。昔からマネージメントは『どうする?』と歩み寄ってはくれていたんですけど。いただける仕事があって、それも本当にいい仕事ばかりだったから、自分のこれからのキャリアについて考えるというよりは『その仕事にどう向き合っていくか?』ということでしかなかった。長い目で見た自分の俳優人生とか、これをやることによって自分の色みたいなものがどう塗り替えられていくかはまったく感じていなかったし、考えられてもいなかった。この役にどれだけのエネルギーを注ぎこめるかにフォーカスしていて。でもやっぱり、年齢を重ねて『自分が本当に活躍したいジャンルってどこだろう?』と考えた時、空いてる時間に歌や踊りをやってみたりという方向性は見えてるかなって思います」

──具体的には?

「近年、舞台が面白いなと感じています。 この間『キンキーブーツ』をやらせていただいて『舞台を見たことがきっかけで、ミュージカル鑑賞が趣味になった』という話を聞くと、こんなに嬉しいことはなくて――。理屈じゃないんですよね、リアルに自分が歓喜する瞬間って。そんなこともあって、少しでも自分が日本におけるミュージカルシーンを活性化していく一つの大きな歯車になれるように――。そのためには、もちろんドラマや映画などの映像の現場でも頑張っていかなきゃいけない。日本ではまだ著名人を観に行くという感覚の割合のほうが高いと思うから。スキルや作品性を楽しむお客さまも増えてきてるとは思うけど、やっぱり名実ともに大きな存在にならなきゃいけないなっていうところで、できる限りのことをしていきたい」

──20代のうちに自分の進みたい道が見つかって良かったですね。

「そこは自分でもめちゃくちゃツイてるなって思います。ダンスも大嫌いだったし、自分の踊ってる姿を見るのも恥ずかしかったんですよ。『何カッコつけてるんだろう自分?』って(笑)。なので、ある時まではやらされている感覚があったんですけど、地球ゴージャスの舞台を見て、ダンスもお芝居のひとつなんだということをまざまざとステージ上でプレイヤーたちが見せつけてきて。その時はもう、雷に打たれたような感覚だった。肉体表現って、やはりお芝居に通じるんだと気づいたときに、苦手意識が徐々に払拭されていった。今では舞台の上で表現したいと思うとき、何かスゴイものを観ていただきたいなという気持ちが一番なんです。そのためにも、いい存在になりたいです」

──10年後の立ち位置はどこにいたいですか?

「10年後も舞台の上に立っていたい。ミュージカルでやりたい役もいっぱいあるんですよ。例えばジキルとハイド、ジーザス・クライスト・スーパースター、昨年のトニー賞を総なめにしたディア・エヴァン・ハンセンとか――。日本で再演する時は、絶対にオーディションを受けたい。でも、日本でお客さまを呼ぶにはネームバリューがいつでも必要。だから、しっかり映像でもいい芝居して――。まだまだ経験的には浅いですし、いろんなジャンルの監督と出会い、学ばせてもらい勉強していきたいです」

──若い頃からたくさん賞を受賞したり、演技派の若手として評価されてきて、それが自分の中で自信や自負になっていますか?

「いま振り返ると、なってるんでしょうね。結果として、自分も苦しんで周りも苦しめた――そういう作品作りをしたときに、賞をいただいたりとか。やっぱり、もがかないと人の目には留まらないんだとすごく感じるので、怖がらずにもがき苦んでいきたい」

──ちなみに、今までで一番苦しかった作品はなんですか。

「ドラマ『僕のいた時間』です。あの時に栄誉あるギャラクシー賞をいただけて。マネージメントや自分、そして友人たち、みんなが一緒になって苦しい思いをしてくれたんです。それが総じて、結果として賞をいただけたのだと思うし、それは自分の自負として持ってあげるべきだなと」

──その苦しみは、役作りが大半を占めるものですか。

「そうですね。体重も10キロ以上落としたりとか、筋肉の伝達機能がなくなっていく役どころで、運動したら筋肉が目立ってしまうから、痩せるにも運動ができない。食事制限をしようにも、やっぱり人間は動かないと、どんどん気持ちが落ちていく――。今まで経験したことがなかったので、疲弊してしまった自分がいて。でも芝居と向き合わなきゃいけない。その一方で、主演となると現場にも配慮し、引っ張っていく立場でもある。そのバランスが取れなくて――。そういう過去の反省点を改善しつつ最近は、自分なりのペースをつかめてきたかなと」

──目指す自分を頂上だとすると、今は何合目くらいにいますか?

「頂上は完全に、今まだ雲の上ですね。まだまだ2合目くらいです(笑)。自分との向き合い方がわかった今、あとはもう『やればいい』という感じですね」

──やればいいだけというのは、ある意味、“準備は整った”ということでもありますよね。

「これは言い訳だなってことも、今はすぐにわかるし、逃げられないです」

──そういう時、仕事もプライベートも一緒になりますか?趣味=仕事という感じがします。

「一緒ですね。趣味が未来の自分構築みたいな感じです。そのために何をするか。それがどうしても一番優先になりますね」

──留学中はどんな生活をされていたんですか?

「すごく羽を伸ばしてました。ステイ先はロンドンとボーンマスという海沿いの街でした。朝、語学学校に行き、帰宅後は宿題して、歌の練習をして、たまにボイストレーニングやゴスペルのワークショップにも行ってみたり。舞台や美術館にも行ったり、ホームステイ先のルームメイトとご飯食べたり。イギリスでは自然と視野が広がって、何もしていない時間も有意義だったり。普段は行かないような観光スポットで、友達との違う価値観が見えたりとか。歌う場所がなかったので、毎日車を運転しながら練習したのもいい思い出です(笑)」

──そんなリセット期間を経て、映画『銀魂2』の撮影はどうでしたか?

「本当にいい経験ができました。もともと福田(雄一)監督から何度か一緒にやりたいねとお話をいただいていて、やっと福田組で仕事できることがすごく嬉しかった。キャラクターの抱えているストーリーもとても面白かったので、ぜひやらせて欲しいと」

──今回一番大変だったのはどんな部分でしたか?

「映画での殺陣は初めてだったので、撮影前に柳楽(優弥)くんとみっちり稽古をしました。もともと、舞台で剣は振ったことがあるけど、映像となるとアングルとかもあって新鮮だった。舞台では実際に剣を当てないので、舞に近いものがあるけど、映像は実際に当てていくので剣先がブレやすかったりして難しく、自分には向いてないなと正直思ったり(笑)。でも、アクションシーンが映画全体を通してすごくカッコいいので楽しみにしていてください! 俳優陣も豪華ですし、笑いどころ、見どころは満載です」

──最後に、どうあることが今一番心地いいですか?

「自由でいたい。本当に自由人なんです」

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Photos : Motohiko Hasui Styling : Yoshihiro Fukami Hair & Makeup : Azuma
Edit & Text : Hisako Yamazaki Interview & Text : Takako Tsuriya

Profile

三浦春馬(Haruma Miura)1990年4月5日生まれ、茨城県出身。4歳の頃に児童劇団に所属し、キャリアをスタート。97年、NHK連続テレビ小説『あぐり』でデビュー。2006年にドラマ『14才の母』でヒロインの恋人役を演じ、注目を浴びる。07年、映画『恋空』にて第31回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。14年のドラマ『僕のいた時間』で主演、第51回ギャラクシー賞個人賞を受賞。17年、舞台『キンキーブーツ』で第24回読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞するなど、名実ともに日本を代表する俳優へ。現在、映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』が公開中。

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