ひょう依型芸人、ロバート秋山&友近があの名作洋画をリメイク!?
大阪チャンネルにて8月31日より配信スタートした、オリジナル番組『国産洋画劇場』。自ら企画し、主演する人気芸人、ロバート秋山竜次と友近の2人に直撃インタビュー。国産なのに洋画とはどういうこと? その気になるストーリー、製作秘話、今後の展望とは?
『日曜洋画劇場』、『ゴールデン洋画劇場』などなど、名作映画の数々をお茶の間に送り届けてきたテレビの洋画系番組。昨年春に『日曜〜』が50年の歴史に幕を下ろし、現在放送中の番組は『金曜ロードショー(現在:SHOW!)』のみ…という寂しい状況のなか、「クリエーターズ・ファイル」が各方面で話題のロバート秋山と、全国で数千人規模のホールを完売させる“水谷千重子”こと友近が、新たな“洋画”番組をスタートさせる。
タイトルは、『国産洋画劇場』。関西で人気のテレビ番組やオリジナル番組、お笑いライブの劇場公演などが見られる見放題の映像配信サービス「大阪チャンネル」で8月31日(金)より配信されるが、気になるその全貌を、既に何かしらのキャラクターがひょう依している(?)と思しき秋山竜次と友近のお二人に聞いた。
第一弾は闇相撲から這い上がる力士の物語
──今回の番組は「いまや洋画も国産の時代…」「国内のロケーション・役者・スタッフ・機材など海外の力に頼らず“国産”にこだわって作り上げた国産洋画映画をお送りするプログラム」だそうですが、企画の趣旨を教えてください。
ロバート秋山(以下、秋山)「えーっ、そもそもは“国産のものをもっと取り上げたい”という思いから企画が始まったんですよ。どこのお店でも輸入ものが増え、メイド・イン・ジャパンが逆に希少になっている今、国内の監督さん、俳優さん、スタッフさん、ロケ地、小道具…全部、国産のものを揃えてやってみてはどうかと」
友近「でも“邦画”ではなく、あくまで“洋画”なんです。2020年には東京オリンピックを控えていて、海外から多くの観光客がいらっしゃっていますからね。そこは世界中のみなさんがご覧になってもわかりやすいお話、テイストにしましょうと。ただCGうんぬんではなく、もっと手作り感のあった時代の、私たちの世代が思い浮かべるオリジナルの“洋画”。そこを目指してオリジナル作品を作りました」
──では、オリジナル?パロディではない?
秋山「そうです。ハリウッドのエッセンスを取り入れた、国産の完全オリジナル映画ですね。例えば、すでに撮り終わった『六城』という作品がありまして。これで“ろくき”と読むんですが、タイトルは力士のしこ名からきている。素質はあるんだけど落ちぶれている力士が奮起して…というスポーツヒューマンドラマであり、ラブドラマの要素もあり」
友近「私が演じる六城が恋する女性は、和菓子屋で働いているんです。あんまり男の人と付き合ったことのないという設定がいいんじゃないかな〜と思って考えました」
秋山「この六城が不器用でね〜。その人間臭さがいいんですよ。闇相撲に身を落としながらも根は優しい六城が…」
──や、闇相撲!?
秋山「そうです。その六城が、ある時PYC、パシフィック・ヨコヅナ・チャンピオンシップという大会に出ることになり、猛特訓をする。その時に流れるテーマ曲がまたいいんですよ〜。テーマ曲もものすごく耳に残る。文字にできないと思いますが…(と、どこかで聞いたようなメロディを口ずさむ)。脚本から音楽、全部、完全オリジナル。気が早いですが、世界中で何度も繰り返し見られる名作になる予感が今からしますね」
友近「特にラストシーンが印象に残る映画になっているので、今後、ものまねとかする人が増えると思います」
秋山「確かに。ネタバレになるんで何ですが…(小声で)恋人の名前を叫ぶとか。そういうインパクトのある、オリジナルのラストになっているので楽しみにしてほしいです」
──何だか聞けば聞くほど、かの有名なボクシング映画を想起させますが…。
秋山「それって何ですか? 僕、もともとあまり映画を見ないんで、おっしゃってる意味がよくわからないですけど。今回『国産洋画劇場』の取材をお受けしていてよく“パクリ”のようなことを言われるんですが、それがとても心外で」
友近「我々スタッフさんともいっしょに考えた、完全、オリジナルです」
──大変、失礼いたしました!
船を舞台に繰り広げられるラブストーリー!?
友近「もう1本、『船と氷山』という作品があるんですけど、こちらもすべてオリジナル作品になっていて」
秋山「友近さんと、次回作は2人共通の好きなものを舞台にしましょうと。せーの、でキーワードを挙げたら、2人とも“船!”って。これには驚きましたね〜。こんな偶然があるんだなーと」
友近「私の場合、愛媛の出身ですから幼いころから船には馴染みがあって。大阪に出てからは関西汽船で帰省していましたし、思わず」
秋山「僕も北九州の出身ですから、船は身近にありましたし、阪九フェリーとかよく乗っていましたし。気づいたら“船!”って言っていました」
友近「で、船にはいろんなドラマあるよね〜。同じ船なのに個室のお金持ちの人もいれば雑魚寝の人もいたり…とか、2人でいろんな話をしながら脚本を詰めていったんです」
秋山「“氷山”というのは、ストーリーに大きく関わるので詳しくは言えないんですけど…。竹芝とか日の出桟橋から島に行く船に乗りたいもののお金がない主人公が、とあるギャンブルで大金を得て乗り込むんですけど」
友近「ちなみに、この主人公の名前は“雀”と書いて“じゃく”と言って。私が演じるお金持ちのヒロインが薔薇子(ばらこ)。その2人が船内で出会い、後々起こるアクシデントにどう立ち向かうのか?」
──ほほ〜。『船と氷山』でご苦労された点、こだわった点は?
秋山「やはり船という限られた空間ですから、これまでのハリウッド作品でいじられていない場所やシチュエーションを探すのに苦労しました。とはいえ、友近さんもほとんど映画は見ないそうなんで、スタッフに他の作品で使われていないか確認しながら脚本を作り上げていったんですけど」
友近「それでアイデアを出し合って、船の帆先じゃないかと。むしゃくしゃしたら女性は遠いところに行きたい。じゃあ、船内だと煮詰まって開放的になれないから船の中であればそこしかないだろうと思い、船の帆先での、雀と薔薇子の名シーンが出来上がりました」
秋山「あとは、やはり“国産”ですからね。例えば出てくる魚とかもなるだけ外来種を排除したり。登場する食べ物にしても、映るもの全部を国産にするのに一番、苦労しましたね。極端な話、スタッフさんも海外ロケ帰りの方は今回、辞退していただきましたし。まだ胃の中に向こうの食べ物が残ってるかもしれないんで」
友近「衣装も機材も全部、国産。撮影中もセリフはもちろん、すべて日本語にこだわりました。スタートは開始、カットは終了。休憩中に飲むコーヒーも漢字で珈琲と書かれていましたし。国内産の豆を、国内で焙煎したものしか飲まない。細かいところにも徹底的にこだわりました」
──こちらもテーマ曲を作ったんですか?
友近「ラブストーリーということで、女性シンガーの方がいいだろうと思いまして。こんな感じの…(と、どこかで聞いたようなメロディを口ずさむ)。これも気が早い話ですが、めちゃくちゃヒットすると思います」
秋山「年末のレコード大賞とかいけるんじゃないですかね〜」
あの世界的巨匠のデビュー作にも挑戦…?
──30分の作品を6本作る予定ということですが、ほかに構想されている作品はあるんでしょうか?
友近「スポーツ、ラブときたので、その次はアクション。カーチェイスものですね。追い越された運転手がめっちゃ怒って、追い抜いた主人公を延々、追いかけてくる…という。今、日本で問題になってる、煽り運転を題材に2人で考えました。とはいえ、高速道路とかではなく、舞台はどこか昭和の匂いのする田舎の1本道で」
秋山「なぜ追いかけらえるのかわからない主人公の恐怖を描こうかと。そうですね…タイトルは『激突き(げきつき)』とか、そういう感じがいいかな〜。“!マーク”は付きません。“激突き!”ってなると、なんか洋風のニュアンスが漂ってくるじゃないですか」
──この作品も細部まで国産にこだわって?
秋山「そうですね。車も国産にこだわって。友近さんと僕は昭和も好きなんで、ちょっと古めの国産の自動車を使いたいなと」
友近「タンクローリーとかになるとアメリカっぽいので、日本風に軽トラか何かで。追いつ追われつの道中にはドライブインではなく、道の駅とか出てきたりして」
秋山「ほかにも売れっ子の女性歌手を主人公にしたストーリーも考えているところで。そこに東京五輪も近いですし、“警備”というキーワードを加えて。タイトルは『警備物語』とか『警備保障』とか、そういう作品もやってみたいなと。警備会社ももちろん国産にこがわっていきたいですね。あとは、多摩霊園で幽霊退治とかね、世界に誇る日本の業務用掃除機を使ったり…」
──おふたりの見た目はどんな? やはり洋風に仕上げるのですか?
友近「いえ、純日本人で。懐かしの洋画という雰囲気を出すために、吹替えっぽい演出はさせてもらっていますが、変に付け鼻とかはしませんね。」
──今や伝説の『FNS27時間テレビ』(2016年)での盆踊りをはじめ、『ENGEIグランドスラム』、『超ハマる!爆笑キャラパレード』などなど、コラボコントの機会も多いですが、すべては『国産洋画劇場』のために?
秋山「(しばし考え込んで)コレ言いたくはなかったですけど…バレたんなら仕方がないです。おっしゃる通り、いろんなコントをやりながら常に頭にありました。フリースタイル盆踊りをやりながらも、これがいつか国産洋画の役に立つハズだと」
友近「コントは短い時間ですが、映像化されることはいつも意識していましたね。吉本(興業)は劇場も持ってますし、いつか映画館で公開したい。そんな思いでやってきました。ライブビューイングとかやって、舞台挨拶もやりたいと思っています」
──秋山さんも参加された春の全国ツアー『友近ワイド劇場』は、2時間サスペンスをパロディにした非常にクオリティの高い演出が話題に。今回は、映像でどんな洋画風の演出を行うのか? 楽しみにしたいです。
友近「実は『国産洋画劇場』も『友近ワイド劇場』のスタッフが再集結したんですよ」
秋山「海外ロケ帰りで泣く泣く辞退してもらった何人かを除いて、ですけどね。映画好きであるバラエティの精鋭が集まって。ですから、懐かしの『○○洋画劇場』風のオープニングとか、淀川長治さんのようなクセのある解説者とか、そういう演出も期待できるかと思います」
──ゆくゆくはフランス映画風の作品も見てみたいです。
友近「そうですね〜。実際ヨーロッパの洋画もいいかな〜と思ってお肉屋さんを舞台にした、ちょっとブラックで笑える作品の脚本を書いていたんですけど、あまりの暑さで断念しました」
秋山「僕も途中まで脚本を書いたものはあるんですよ。殺し屋のプロがいて。そいつは愛に飢えた男で。そんな男が少女に恋をして。滝廉太郎みたいなメガネをかけていて、黒沢年雄さんのようなニット帽を被ってる…ビジュアルまで完璧に思い描けていたんですけどね〜、やはりこの酷暑のため断念しまして。ですから、来年になってからですかね。もう少し過ごしやすくなったら続きを」
友近「でも、今回の『国産洋画劇場』を見ていただかないと“次”がないのでね、みなさんぜひご覧ください」
『国産洋画劇場』の情報はこちら
Photos:Ayako Masunaga Interview&Text:Tatsunori Hashimoto Edit:Masumi Sasaki