ラッパー/シンガーのちゃんみなが語る、21歳の音楽、恋愛、性
日本語、韓国語、英語を操るトリリンガルラッパー/シンガーであり、ミレニアル世代のアーティストとして、10〜20代を中心に圧倒的な支持を集めるちゃんみな。9月9日に発売されるシングル『Angel』では、4つの恋愛を描いた新曲を収録。今や日本の若手アーティストの筆頭となった彼女が考える恋愛や人生とは。作品からプライベートまで、じっくりインタビューした。
地獄に堕ちたエンジェルの物語
──今回の4曲入りシングル『Angel』は、オムニバス映画のような物語性があります。特に「エンジェル」「悪魔」という言葉が印象的でした。 「作品全体のテーマは『堕天使』です。私にとって『天使』は羽根のついた子どものような姿で、『デビル』はキャラクターのようなニュアンスがあって、今回は内面を表現したかったから『エンジェル』と『悪魔』という言葉を使いました」 ──ひとりの人間の中に「エンジェル」と「悪魔」の二面性があるのでしょうか。 「私の中には2つのイメージがあって。自分をエンジェルだと思い込んでいた悪魔と、天国にいると思い込んでいる悪魔です」──『Angel』のMVもとても印象的でした。相手役の男性ダンサーが、どこからともなく現れて、踊っている間にふっと消えて。
「あなたがいてもいなくても、私はいつも楽しいし、ずっと寂しい。その感情を具現化したかったんです。だから、MVの中で、相手がいてもいなくても、私の表情はほとんど変わらないんです」
──そこに、ちゃんみなの恋愛観が表れているように感じます。
「この曲だけじゃなくて、全ての曲は私の実体験を元にしています。作り話は書けないので」
──ちゃんみな自身の経験なのに、年齢も住む場所も違うたくさんの方が共感していることがすごいですね。
「YouTubeのコメント欄に、『わかる』『共感できる』とたくさんコメントしてくれてて。きっと昔、経験したことかもしれないし、これから経験することかもしれない。状況は違うけれど、同じ感情だったのかもしれない。共感してほしくて曲を作ってるわけじゃないのに、これだけ曲に当てはまる感情がたくさんあるんだなって、不思議だけど嬉しいです」
全ては自分の実体験 恋愛の悲しい瞬間から生まれる曲
──ちゃんみなにとって恋愛とは?
「ものすごくパワフルなもの。個性も価値観も違う二人が、一緒に新しい価値観を作り上げることが恋愛だと思います。だから、私は嫌いなものが同じ人と恋愛することが多いですね。最後の最後、どうしても合わなくなって別れてしまうこともあるんですけど」
──ちゃんみなが恋人に求めることは?
「私を変えないこと。相手のお金や地位、仕事も外見も一切問わないけれど、私と本質的な会話ができることが大事です」
──恋愛中は自分が変わる感覚はありますか。
「相手に合わせる事はありますよ。だってそれは、その人と新しく価値観を作っていきたいから。お互い違う人間なりに、無理がない寄り添いは大事ですもんね。恋愛中はどちらかというと相手が年上でもお姉さん役に回る事が多いです」
──恋愛のどんなときに曲を作りたくなりますか。
「悲しいとき。多分、ものづくりをする人は、みんなベースに寂しさを抱えていると思うんです。でも、絶望を抱える人だから評価されるアーティストになれるというわけじゃなくて、必要なのはギャップの大きさなのかもしれない。ステージで歓声を浴びることは最高に幸せだし、プライベートでも幸せな事は沢山ある。プライベートで恋人に浮気されたり、振られたり、真逆なことが起きると、その感情のギャップの大きさで曲が生まれるような気がします」
──じゃあ、ひどい恋愛のときのほうが曲がかけるとか?
「どうだろう。例えば「ボイスメモNo.5」の歌詞のような、“私の首にキスしては/他の子にまだ興味がある”、そういう恋愛だったり。でも、もうそういう恋愛はいい。もう、そんな人には惹かれないと思う。わからないけど」
──思い出したくないような悲しい経験を曲にして、ライブで何度も歌うなんて辛くなりませんか。
「それが驚くほど気持ちいいんですよ。自分の経験を元にして、最高にカッコいい曲を作って、MVにきれいな姿を残して、たくさんの人がその曲を愛してくれることが、私にとってはとても嬉しいことです」
──2曲目の『Very Nice To Meet You』は、彼の浮気相手と対峙する歌詞です。女同士の戦いのようでいて、優しさも感じたのですが。
「その優しさが一番怖いんですよ。彼が浮気した時点で信頼関係は破綻してるから、もう彼はどうでもいいんですけど、その子が私のことを知っていて、自分は浮気相手だとわかっていて、私が傷つくことを理解した上で彼と会っていたことがおかしい。他人のものが欲しくなる衝動を制御できないなんて、品がないですよ。敬意がない。他人には最低限の敬意を払うべきだと思います」
私を見下していた人がいつの間にかいなくなっていた
──敬意という言葉が出たので、前作EP『note-book -u.-』の『KING』という曲について伺います。17歳でリリースした曲は『Princess』でしたが、『QUEEN』ではなく『KING』になった理由は?
「海外の方は私を“QUEEN”と呼んでくれますけど、私は“KING”の方がしっくりくるんです。“QUEEN”は女性の象徴なので、“KING”の方がなんとなく好き」
──音楽業界もそうですが、まだまだ男性社会の中で、「今や私が王様」と宣言したことに心底痺れました。
「数年前は私を見下して馬鹿にする人もたくさんいたんですが、あの頃に私を見下した人たちは、いつの間にかいなくなったので『私の前からどいちゃったか。じゃあ先に行くね』っていう感覚です」
──YouTubeのMVには、英語のコメントも多数寄せられています。世界への発信については、どう考えていますか。
「昔から、日本と他の“世界”を区別するより、私は地球で活動している感覚だったので、あまり意識してないですね。私はフロム・ジャパンのアーティストというだけ」
──ちゃんみなが見据えるゴールは?
「音楽のゴールはないですね。ある程度の年齢になったら、裏方に回って、若い人を育成したり、楽曲を提供したいと思っています。人としてのゴールは死じゃないですか。私の人生には『どう死にたいか』という大きなテーマがあって、最も美しい死を想定して、そこから逆算して今やるべきことを決めています」
──結婚や出産についてはどうですか。
「結婚は今すぐでもいいけど、出産はもう少し先かな。結婚は“真実”だと思っているんです。お互いが一生ずっと一緒にいたいと思えるくらいまで、気持ちが沸点に達した証だし。出産は、この人の遺伝子が欲しいと思える人に出会ったら、その時考えるかもしれないですね」
──もうすぐ22歳になりますが、21歳はどんな1年でしたか。
「アルバム『Never Grow Up』からEP『note-book』を制作している頃、特に20歳になるまでが精神的にすごくキツかったんです。眠れないし、鬱っぽくなってしまって。でも、ギリギリのところまで耐えて、悪い環境、感情、全部捨てました。最近、本当に楽しくなりました」
──22歳の抱負は?
「22歳で経験できる性(=女性としての人生)を存分に楽しみたいと思っています。セクシャルな志向は十人十色だし、人の数だけ恋愛もセックスもあるけど、その年齢でしか経験できない性ってありますよね。それを存分に楽しんでいきたいです、命ある限り。肌を露出したら軽く見られるとか、年齢を気にして諦めるとか、そんなこと気にする必要はないですよ。楽しんだ方が絶対、世の中、明るくなるから。でも、他人のものは盗っちゃダメ。あとは体を大事にして、品のある楽しみ方をしていきましょう」
『Angel』
通常盤 ¥1,300
初回限定盤(CD+DVD) ¥2,300
2020年9月9日リリース
Photos:Takao Iwasawa Hair & Make Up: Yuko Nozaki Stylist: Junko Haseo (Jstyles) Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Mariko Kimbara
ニット¥115,000 ジャケット¥319,000 スカート¥181,000 パンプス¥110,000/すべてFendi(フェンディ ジャパン 03-3514-6187)ネックレス¥48,000/Atsushi Nakashima(ザ PR 03-6803-8313)ピアス¥11,000 リング〈右手〉薬指¥16,000 〈左手〉人差し指¥8,400 薬指¥22,000 小指¥16,000/すべてBijou R.I(ビジューアールアイ 03-3770-6809)その他アクセサリーは本人私物