本誌連載 モードのGOOD&NEW【地球を守ろう】「Balenciaga」の試みについて | Numero TOKYO
Fashion / Editor's Post

本誌連載 モードのGOOD&NEW【地球を守ろう】「Balenciaga」の試みについて

不自由な毎日を過ごすなかでひしひしと感じるのは、美しい自然や動物が心にいかに潤いを与えてくれるかということ。4月22日はアースデイ 。本誌連載中の「モードのGOOD &NEW」より、5月号でもご紹介している地球の環境を守ること、ファッション界のアクションについてご紹介します。


こんなふうに世の中が強制的止められてしまうまで、自分に直接関わる範囲で物事を考えることで精一杯でもあり、恥ずかしながら、遠く大きな地球にまで思いを寄せることはありませんでした。公園の清々しい緑や愛らしい動物たちの表情に癒され、海辺のエモーショナルな夕暮れも大好きだというのに。「私ごときに地球のことなんて……」と、大きく包み込んでくれている地球の現実を直視せず切り離して考えていたのです。

バレンシアガ Feel Good Videoより(TOP画像とも)
バレンシアガ Feel Good Videoより(TOP画像とも)
その実態はといえば、南極の氷は10年前と比べ3倍で溶け出し、海面水位は16cm以上上昇しているといいます。近年、大型台風の上陸の頻度が増し、河川が氾濫する報道を観たことがあると思います。わかりやすい変化予測では現在の東京の真夏日は年間約46日ですが、対策を取らなかった場合、今から70〜80年後には約103日、1年の30%ほどが真夏日になってしまうそうです。そもそも地球温暖化はなぜ起こるのかといえば化石燃料を燃やしたり、森林を伐採することで、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの上昇を招いてしまったのです。これらの多くは私たち人間活動の影響であり、右肩上がりの経済を目指した従来型の豊かさの代償にほかなりません。


地球環境を守るためのアクションは、ファッション界でも新たな常識になりつつあります。バレンシアガではすでに2018年から国連世界食糧計画(WFP)を支援するコレクションを発表。昨年3月に行われたパリコレのランウェイでは会場に水を張り、天井には稲妻や火の映像を流す演出で地球環境への危機感を積極的に伝えていましたが、SUMMER21でも90%以上のサステナブル素材とアップサイクルに、さらに多くをユニセックスにすることで環境負担を軽減しています。現在発売されているカプセルコレクション「I LOVE PETS」では動物救助サービスを支援。売り上げの10%が動物保護慈善団体(LA SPA)に寄附されます。Tシャツの写真はバレンシアガのスタッフがリアルに飼っている保護犬猫で、シャルターからペットを引き取ることについてのアドバイスを受けられるホットラインの電話番号もプリントされています。




バレンシアガ の「I LOVE PETS」Tシャツ
バレンシアガ の「I LOVE PETS」Tシャツ

さらに発表されたばかりのWINTER21コレクションでは、コレクションの製品や広告は含まない、人々が心地よくポジティブな気分になることだけを目的とした「Feel Good Video」を発表。
“ALL WILL BE WELL”というメッセージに力づけられるはずです。

ルックブックで発表されたコレクションの背景は、なんと世界各地の観光名所! またいつか世界を巡る旅に! そんな希望も与えてくれます。無地とプリント生地の90%以上がサステナブル認証を受けており、引き続き多くをユニセックスにすることでも環境への負荷を抑えています。


バレンシアガ WINTER 21 Courtesy of Balenciaga
バレンシアガ WINTER 21 Courtesy of Balenciaga

バレンシアガ WINTER21 Courtesy of Balenciaga
バレンシアガ WINTER21 Courtesy of Balenciaga

バレンシアガ WINTER21 Courtesy of Balenciaga
バレンシアガ WINTER21 Courtesy of Balenciaga

地球のことをもっと考えて、おしゃれでありながら環境に負担をかけないよう一歩一歩取り組んでみたいと思います。

Profile

古泉洋子Hiroko Koizumi コントリビューティング・シニア・ファッション・エディター。『Harper's BAZAAR』『ELLE Japon』などのモード誌から女性誌、富裕層向け雑誌まで幅広い媒体での編集経験を持つ。『NumeroTOKYO』には2017年秋よりファッション・エディトリアル・ディレクターとして参加した後、2020年4月からフリーランスとしての個人発信を強め、本誌ではファッションを読み解く連載「読むモード」を寄稿。広告のファッションヴィジュアルのディレクションも行う。著書に『この服でもう一度輝く』(講談社)など。イタリアと育った街、金沢をこよなく愛する。
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi

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