ファッション業界人のお宝ツアーTシャツ拝見!
ロックTシャツ再燃! 音楽を愛する4人のファッション業界人のお宝ツアーTシャツとは?(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOYKO)」2017年4月号掲載記事より)
「chigo」デザイナー 津田千穂
「ロックTシャツは私のアイデンティティ」
「ロックTシャツは私のアイデンティティを表すのに欠かせないのですが、始まりはミュージシャン達の強いメッセージ性が自分の中に眠っていた感性を呼び起こして惹かれたのかも。特に80 年代のハードコアバンド、マイナースレット(写真上)はお気に入りです。フロントマンのイアン・マッケイは、お酒もドラッグもカジュアルセックスもしない、禁欲的なことを歌にしました。それがファンの間で「ストレートエッジ」という思想に。彼はメインストリームを嫌いライブでの物販は無しというスタイルだったので、中目黒の古着屋で買ったTシャツはブートレッグかと。私なりの着こなし方は、バンドのスタイルを取り入れることとアイロンはかけずにラフに着ることです。その日の気分に合った1枚が、ボロボロになるほど、宝物になるのだと思います」夫のものだったデヴィッド・ボウイのTシャツ。「この写真は70年代中盤のボウイ。私はこの頃の彼が一番キレイだと」
下北沢のパンクショップで購入したジョン・ライドン。「セックスピストルズのボーカルで、アイコン。年をとって丸くなった感もありますが、そのギャップも人間味を感じます」
バズコックスは「ブランドを始めた頃によく聴いていたバンド。パープルのプリントもお気に入りで、お洒落に着たい一枚」
ヤーヤーヤーズのツアーTは会場で購入。「アルバムジャケット同様、アート性が高いと思います
「mother・VTOPIA」デザイナー eri
Tシャツの価値をどこに見るかも面白さ
「子どもの頃からずっと洋楽派。ビリー・ジョエルやピンクフロイドなど、父親のCDラックから見つけては聴き込んでいました。だから、学生時代は友達から“オジさんみたい”って(笑)。私自身、普段はTシャツを着ないタイプですが、好きなバンドのものは“持っていたい!”と手が伸びます。特にモンキーズ(写真上)は子どもの頃から大好きで、この20周年アニバーサリーツアーTを見つけたときは、うれしくて即購入。1986年は彼らの2回目の活動時期なので、私が本当に好きな初期の頃とは違いますが、やはり宝物です。ちなみにデプトでの買い付けでも、基本はアーティストで選びます。そこにあえて“あなた、誰?”みたいなローカルなミュージシャンも混ぜたり。“有名”だとか“値段が高い”ではなく、Tシャツの価値をどこに見るかも、その面白さだと思います」
「10代の頃のヘビロテ盤でした」というスマッシングパンプキンズのアルバム『アドア』をプリントしたTシャツ。「プリントされている女の子の顔をちらりと覗かせるとわかる人はわかってくれる!」
「タイに買い付けに行った際見つけた」というブラックサバス。「グラフィックも私好み」
TMネットワークのライブTは「ちょっと異色ですが、面白いなって思ってキープしています」。
ビリー・ジョエルとエルトン・ジョンによる1994年のツアーTは「デザインもファニーで新鮮。これは持っておきたいと思って購入!」
スタイリスト ワタナベシュン
ミュージック系アイテムならではの楽しみ方を
「ミュージシャンのTシャツを買い始めたのは、実は最近。10代の頃はソウルやR&B、特に90年代のブラック音楽好きだったのですが、しばらくはその音楽自体とも遠ざかっていたんです。それが、少し前に90’sの音楽が流行りはじめ、僕の中でも再熱。そのタイミングで、当時ハマっていたアーティストの、しかも好きなアルバムのTシャツに一気に出会った。Tシャツではないですが、TLCのボンバージャケット(写真上)はL.A.の古着屋のレジ横で発見。これ、シーザーという名前が記載されていて、たぶんツアースタッフ用。モチーフが『クレイジーセクシークール』なのもレアで、値段は高めでしたが即買。今、こうしたアイテムをミックスして着るのが気分ですが、音楽をわかっている人の前で、あえて自慢っぽく着たい(笑)。そんな楽しみ方も、ミュージック系アイテムならではですから」
ジャネット・ジャクソンの1993〜94年のツアーTは「後面のプリントを見ると、このツアーにはR&Bで有名なトニトニトニも参加しているのが分かって、驚きました。当時は中学生でしたが、このアルバムはすごく聴いていましたね」。
アン・ヴォーグとザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズは、「2組とも自分とリンクした好きなミュージシャンのものであることを前提に、黒地にカラフルなプリントを施したデザインが、気に入っています」。
この3枚は、日本のヴィンテージショップ、ポートレイションが開催したポップアップショップで昨年発掘。
Pred PR プレス 北ハナ
バンドTは色やデザインでチョイス
「私が音楽に深く足を踏み入れたのは10代の頃。パンクやハードコアにハマり、青いモヒカンの人たちに交じって、アングラなライブハウスをはしごしていました(笑)。パンクの反骨精神が思春期の私にリンクしたのです。バンドTは、色やデザインで選ぶタイプですが、やはりラモーンズやランシドなどパンクやハードコア系がほとんど。ただ、昨夏からヘビロテしていたのは、王道ではなく、ザ・レストルームス(写真上)という日本の3ピースバンドのもの。彼らは普段は他の仕事をしているそうで、いわゆる趣味ではないけど、ふらっとバンドをやってしまうマインドにも共感。オリジナル曲もありますが、ラモーンズのカバーもやっていたり、かつて私がライブハウスで聴いた音に近いのもツボです。メジャーなものだけでなく、そんなアングラ的なスタイルのバンドTも私は好き!」
赤いボディに惹かれたというニルヴァーナのTシャツは「祐天寺の古着屋アームズ クロージング ストアで見つけたもの。ライブ写真のプリントもレア」
ラモーンズは「友達からもらったもので、袖の部分を切ってカスタマイズしました」
90年代のパンクバンド、オフスプリングは「プリントの色味的にもファッションに合わせやすい、とジャケ買い的に購入」
セブンセカンズの1stアルバムのジャケットをプリントしたこちらは、「初期のUSハードコアの牽引した大好きなバンド。10代の頃に通ったライブハウスには、彼らのコピーバンドも多々いました」
Photos:Koki Hayashi
Text:Masanobu Matsumoto
Edit:Etsuko Soeda
Issue:Numéro TOKYO JUNE No.107