赤ちゃんも子猫も子犬もぜんぶ、 小さいものは放っておけない愛らしさ。 | Numero TOKYO
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赤ちゃんも子猫も子犬もぜんぶ、 小さいものは放っておけない愛らしさ。

2022年5月27日(金)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2022年7・8月合併号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。

(左)通常版 ¥880(右)SEVENTEENが表紙&別冊付録付きの特装版 ¥1000
(左)通常版 ¥880(右)SEVENTEENが表紙&別冊付録付きの特装版 ¥1000

何においてもそうですが、小さなものを見ると「可愛い〜」と愛おしさを感じるのはなぜでしょうか。赤ちゃんも子猫も子犬もミニチュアサイズのアイテムたちも、小さい、というだけで目が輝きます。ミニチュアサイズのバッグやポシェットはそのものが持つ役割を満たしていなくても、小さいというだけで許される存在です。今号は、そんな小さな相棒をたくさん集めてみました。

モード界は少し前の大きな“デカ”バッグのトレンドから、対極にある極小サイズのレザーグッズへと注目が集まっています。もともとあるデザインのミニチュア版。「愛しの相棒」(本誌p.64〜)でそれらを紹介しているのですが、実物の大きさがわかるように女性の手やリップスティック、AirPodsなど比較できるものと一緒に並べて一枚写真で仕上げました。ミニチュアバッグの小ささを想像していただくためですが、対象物がなければ通常のバッグに見えてしまうほどの精巧なデザインです。が、もう、ほとんどギャグなのではと笑っちゃうほど何も入りません。でもそこがまた愛らしいのです。それでも事足りるのは、スマホさえあれば財布も鏡も名刺も不要な時代だから。むしろ、こんな小さなバッグにたった一つ何を入れるか、個性とセンスが表れそうです。リップスティック、AirPods、カード、コイン、私なら何を入れるかな〜。

小さいものに魅せられているのはモード界だけではありません。現代アートの世界もしかり。アート作品は大きなものほどインパクトが強く、とにかく“デカさ”にこだわる作家が多いのですが、「小さき視点のアートたち」(本誌p.80〜)に紹介する6名の作家は、小さいものに触発され、小さい作品に小宇宙を投影しています。本当に、見事!! それぞれの作品には背景やストーリーがあるので、ぜひそちらも併せてご覧ください。



(写真上)左から時計回りにiPhone 11pro MAXにつけたDiorのAirPodsケース付きのフォンカバー、Louis Vuitton、Chanel、Etro、Anya Hyndmarch。私の小さな相棒コレクションです。(写真下)あとは小さくて萌えるのは、愛猫です。

先日、手付かずだった物置の片付けをしました。幼少期の記憶が鮮明に残る7段飾りのひな人形が出てきました。男びなと女びな、三人官女、五人囃子、随臣(ずいじん)、仕丁(しちょう)も状態が良く、さらには金箔、銀箔と漆で仕上げられたお道具あれこれもすべて揃っていました。にわか知識で恐縮ですが、ひな祭りは遠く奈良時代の「おまじないの儀式」と平安時代の「ひいな遊び」がいつしか結びついたものらしく、室町時代に3月3日と定められ、7段飾りのひな人形は江戸時代に生まれたそうです。なのでお道具は江戸時代の様式を反映しています。お道具を調べてみると箪笥(たんす)、長持(ながもち)、鏡台(きょうだい)、針箱(はりばこ)、火鉢(ひばち)、衣装袋(いしょうぶくろ)、茶道具(ちゃどうぐ)、お駕籠(おかご)、重箱(じゅうばこ)、御所車(ごしょぐるま)。今ではほとんど馴染みのないものですが、ほぼほぼ当時の(昭和に入ってからもそうでした!)嫁入り道具一式です。そのミニチュアサイズに「おままごとセット」よろしく姉と“ごっご遊び”を楽しんでは、母に「触っちゃダメ!」と叱られていました。小さいものへの慈愛精神って自然にむくむくと生まれてくるものなんですね。

“小さな相棒”は私たちを新しい生活様式へと誘ってくれそうです。スマホひとつですべてが完結できる現在では、びっくりするほど多かった荷物から解放され、ペーパーレスにもなり、肩凝りに悩むことのない新しいライフスタイルが生まれるのではと期待しちゃいます(編集者って荷物が多く、私もいつも皆に「編集長、今日も荷物が多いね」と苦笑されていました)。荷物が少なくなるといろんな意味で地球ごと幸せになるのかな。そしてまだまだどんどん、いろんなものが小さくなっていくのかなと想像が膨らみます。小さな相棒が生み出す大きな潮流、それが与えてくれる幸せにあっぱれ!です。

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。
Twitter: @akotanaka Instagram: @akoakotanaka

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