夢はたくさん見るほうがいい。夢を叶えるためには、 ただただ、頑張り時を見つけて動き出すだけ。
2021年9月28日(火)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年11月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。
さて。前置きが長くなりました。今回、このテーマを決めた大きな理由は、去る7月にジャンポール・ゴルチエのオートクチュールコレクションをパリで発表したサカイの阿部千登勢さんでした(p.70〜)。引退したゴルチエさんの後をゲストデザイナーが継いで、オートクチュールコレクションを発表するという新プロジェクト。その第一弾としてゴルチエさんのハートを射止めたのがサカイでした。千登勢さんがよく知るゴルチエ・コードをサカイらしくデザインしたルックの数々は、ゴルチエでありサカイ、サカイでありゴルチエというとても新しく力強いものでした。2020年6月に発表予定だったショーをコロナ禍により2度見送り、もちろんオンライン発表という選択肢もあったそうですが、リアルなショーにこだわった千登勢さんのこのショーは、パリのクチュール界のみならずモード界を大いに賑わせました。コロナ禍でありながら変わらず多忙を極める阿部千登勢さんが取材の際に発した言葉が印象的でした。「あまりにも忙しい私を気遣う娘に『ママはいま、頑張り時なの』と伝えたら『ママ、ず〜っと頑張り時だって言ってるよ』と返された」そうです。まさにそうです。夢を叶えていく人は、この“ず〜っと頑張り時”を手にしている人なんだと。社会の情勢がどうであれ、常に“頑張り時”な機会が訪れることも素晴らしいですが、それは頑張り続けてきた結果でもありますよね。
今号では、“夢”にかけて“リボン”も特集しています。コロナ禍の混乱が始まった昨年、皆さまに勇気を与えたいと特集した138号(2020年7・8月合併号)「時間が教えてくれること」の「絵でつながる未来」にて、創作あーちすととしても活躍されるのんさんに絵の制作をお願いしました。その際、カラフルなリボンをたくさん身に纏った少女の作品「未来の視覚」が生まれ、それ以降リボンに魅了され、監督・脚本・主演を務める映画『Ribbon』を生み出したそうです(p.100〜)。のんさんの夢を叶える力に脱帽します。小さなきっかけですが、小誌の依頼に端を発して生まれた作品と伺い、とてもうれしい思いです。
皆さまはどんな夢を描いていますか?
Numéro TOKYO編集長 田中杏子