だって、私のが最強♡なんですもの。「カワイイ」がたどり着いた現在地点。
2021年5月28日(金)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年7・8月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。
「カワイイ〜〜」という言葉には “素敵” “好き” “いい感じ” などさまざまな思いが込められ、私を含め多くの女性が日々連発しています。が、今では、女性だけではなく男性にもこの言葉がフィットし、抵抗なく使われ始めました。先日、NuméroTOKYOのYouTubeチャンネルで、小誌エディターが「編集部員のバッグの中身を紹介する」動画を公開したのですが、彼女がバッグの中身を紹介している際、映像作家のTくんがカメラを回しながら「カワイイ〜」と言っているのを聞き、男子が発する「カワイイ〜」は柔らかくて親近感のある音で、聞いているこちらがキュンキュンするほどかわいくて、「カワイイ」は女性だけのものではないのだなと実感。
誰もが自分だけの「カワイイ」を追いかけ、認められる時代に入ったと『科学でひもとく「かわいい」の世界(p.74〜)』でお話を伺った実験心理学者の入戸野宏さんは説いています。自分だけの「カワイイ」を育てる感覚は推しを作る感覚と似ていますよね。『推しがいる生活って?(p.120〜)』では、それぞれの推しについて沼にハマる魅力を語っていただいているのですが、ディテールに宿る溺愛っぷりに微笑みすら生まれます。そこまで言うなら、その世界観を覗いてみようかなと思わせられます。「推し活」勝ちですね。ちなみに前述したハローキティ3代目デザイナーの山口裕子さんに今回もお話を伺っているのですが(p.67)、サンリオのキャラクターが長く愛される理由は「デザイナーやファンに育てられているから」だそう。やはり“推し”なのですね。私だけの「カワイイ」は他人に理解されたり、誰かに認めてもらわなくてもいいのです。でも誰かの「カワイイ」を理解して認め合えれば、寄り添い合えるより良い社会につながることもまた然り。現代版「カワイイ」は、本当の意味で多様化しています。