「真っ白から始めよう」で、14年目に振り返った幼少期の“ピュアネス”。
2020年3月28日(土)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年5月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズ レター。
2020春夏コレクションで、最も目立っていた色が“白”。あんなにカラフルや柄、ネオンカラーって言ってたよね?と思われるかもしれないのですが、実はそれらを上回る勢いで白が台頭していました。ネオンカラーを白いコレクションの随所にちりばめVALENTINOのピエールパオロ・ピッチョーリでさえ、ネオンカラーは白を際立たせるための色と提言。3月6日にはクチュールの技術をホワイトシャツに落とし込んだ「ルブラン」コレクションを全世界的に発売したのも記憶に新しいです。そんなことから、今号は一冊まるごと“ 白”、白から連想される“ピュア”に光を当てて特集を組みました。
ピュアといえば生まれたての赤ちゃんか幼少期の子どもです。人は生まれた瞬間から人たるがゆえのよどみが始まります。幼少期は怖いものはないし、いい、悪いの分別が大人の判断基準とは異なります。純粋であるがゆえに人を傷つけることがあるのも確かですから、分別のついた私たちにとって本当のピュアを目指すのは難易度が高いかもしれませんね。
特集の中で『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の著者、村田沙耶香さんと映画『魔女見習いをさがして』をプロデュースした関弘美さんに“大人になった少女たち”について対談をしていただきました。二人は幼少期、自分はまだ魔法を使えないけれど魔法使いであると思い込んでいたそうですが、私もまさにそうでした。「鏡に映るこの顔のこの人は、いま私が入っている器(体)。何かのタイミングで別の器に移動する」と思い込んでいました。もちろんあっという間にそんな幻想は打ち砕かれるのですが、あれこれとイマジネーション膨らむ幼少期はピュアの塊みたいなものだったのでしょうね。
そして、みなそれぞれの幼少期を支えてくれた“好きちゃん(と私は呼んでいますが、自信をくれたり背中を押してくれるイマジナリーフレンド。PEANUTS®のライナスが持っている安心毛布のようなもの)”を持っていたそうです。私も結構な年齢になるまでおりました。犬、クマ、サル、ブタの4匹のぬいぐるみをずっと可愛がってきたのですが、あるとき、家に遊びにきた友人が、4匹のぬいぐるみがやって来た順番を確信を持ってピタリと言い当てたのです。鳥肌を立てながら目をクルクルさせる私に、だって、この子たちが教えてくれたよ、と。その場に居合わせた友人たちも私の驚きっぷりを見て啞然としていました。ピュアとはスピリチュアルを信じられるかどうかにもつながっていくのかもしれません。
今号では、白シャツを着た6人のポートレイト写真、“豚に真珠”をヴィジュアルで表現したパールストーリーなどのファッションをはじめ、占星術家ムーン・リー先生の浄化作戦、さらには虚ろでもの悲しげな歌詞や世界観、純粋無垢な表現に多くのクリエイターが惹かれる、BiSHを離れてソロ活動も始めたシンガー・ソングライター兼コレオグラファーのアイナ・ジ・エンドまで盛りだくさんの内容です。白、そしてピュアに魅せられた今号をどうぞお楽しみください。
Numéro TOKYO編集長 田中杏子