マイナス10度の世界! オホーツク海で流氷SUP【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】 | Numero TOKYO
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マイナス10度の世界! オホーツク海で流氷SUP【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】

旅のプロ、ダージリン コズエによる連載。世界中のあらゆるデスティネーションを行き尽くし、現在も国内外問わず旅に赴く玄人トラベラーが語る、“人生最高の旅”とは?

2025年もスタートしましたね。

人生の大半は旅のことを考えて生きてきていますが、年始の目標と同時に、今年はどんなところを旅しようかなーと考えるのはなかなか楽しいものです。

私は根っからの夏派の人間で、冬はほぼ冬眠状態といいますが、寒くてジッとしています。

ところが昨年、冬も楽しみを見つけたいなと思い、冬の絶景を楽しめる流氷SUPをしにオホーツク海へと行ってきました。

北海道北東部に位置するオホーツク海では、毎年1月〜3月にかけて流氷がやってきます。流氷を見ることができる北半球最南のポイントがここ北海道となり、この時期は観光客も国内外からの観光客も多くやってきます。

定番の観光船で流氷を見に行くツアーなどに加え、昨今は流氷ウォークなどより体験によったツアーもあり、私はSUPが好きなので、SUPで流氷を見に行くことにしたのです。

参加したのは、北海道SUPの老舗であるHokkaido Great Adventureが開催する「オホーツク流氷SUP体験」。

羽田から知床への玄関口である女満別空港まで約1時間45分。白銀に染まる広大な北海道の大地を眼下に眺めながら空港へ到着し、SUPインストラクター&ガイドの方々と合流。車でオホーツク海を目指します。

流氷SUPのポイントは、網走エリア、斜里エリア、知床エリアなどで、時期は2月後半〜がメイン。流氷は毎日形を変えながら移動するので、その日のコンディションに合わせて、インストラクターさんやガイドさんたちがポイントを選んでくれます。

この日選ばれたポイントは斜里エリア。
気温はマイナス10度と寒いものの、快晴で風もほぼなく最高です。

さて、ポイントについたら、寒くないよう薄手のダウンやフリースなどを着込み、その上から水が入ってこないようドライスーツを着ます。これにより風はもちろん、ボードから冷たい海に落ちた時にも水が入らず安心です。

最後にライフジャケットを着用したら準備完了。ボードとパドルを持って、冷たいオホーツクの海に入水します。

なんという絶景でしょう。
今まで見たことがないというか、ココ、ニホンデスカ?
(SUPボードの上からiPhone15で撮ったものです)

薄い氷の先に流氷が押し寄せ、その先にそびえ立つ知床連峰。
これぞ、自然が作り上げた造形美です。

パドルを漕ぐのをしばしやめ、ボードに立ったまま大きく深呼吸をし、目の前に広がる自然と一体になるという、贅沢な時間。

体には、薄い氷のようにツーンとした冷たい空気が入り込み、マイナス10度の世界が作り出す白と青の美しさに、ただ感激してしまいます。

東京から3時間弱で行ける場所に、こんな世界があったとは。

SUPボードで薄い氷が溶けているエリアに入ると、まるで食べ終わりかけのかき氷(シロップに浸かったような状態)の中にいるような感覚で、しゃりしゃりとシャーベット状になっています。ボードから足の裏に伝わる感覚が新鮮で面白いです。

また、写真に氷面に白くふわふわしたものが映っているのですが、これはフロストフラワーと呼ばれる霜の結晶です。前日の夜にできた霜の結晶が、夜中さらに冷え込んで大きくなったもので、温度、風など気象条件が合わさって見えるという、冬のラッキーな絶景とのことです。

薄い氷の中をボードで氷を割るようにして進んでいくと、パリッ、パリッと、クリスピーな音が聞こえてきます。クレームブリュレの上のキャラメリゼをスプーンで割る時のような振動が足に伝わってきます。

面白い!と、あちこち動いてザクザク、パリパリ、ザクザク、パリパリを楽しみながら、流氷へ近づいていきます。

流氷って、氷がただプカプカ浮いているものだと思っていたのですが、近くにいくとかなり大きいというのがわかります。

流氷の破片?はコロンと浮いているのですが、遠くはロシアのアームル川で生まれたものが北海道まで流れ着いており、その道中?流氷と流氷とがぶつかりあったりしながら大きくなってきます。厚さ50センチくらいらしいのですが、流氷と流氷が重なりあったりすることで厚さが数メートルになることもあり、氷でできた巨大な島のような状態になっているのです。

ということで、大きな島のような塊となった流氷の上に上陸。

もはや、この世のものではないような空気感。
前日、雪も降っていたので、氷の上をふかふか、サラサラのパウダースノーが覆っています。

これはキタキツネでしょうか。
比較的岸から近く、岸へ繋がっていそうな流氷の上をキタキツネが歩いた足跡があります。

散策したり、流氷の上に寝そべって地球を感じてみたり。
最高すぎます。

しつこいですが、これ本当に東京から3時間くらいでこの世界ですからね。

自然の絶景がわりと近くにあるという良さもありますが、相手は自然。その日の天候によって、流氷SUPもできたりできなかったりします。
また、きちんと海の状況がわかり、安全管理を行なっている会社やガイドさん、インストラクターなどがいないと危険と隣り合わせでもあります。

未経験の方は夏にきちんとしたレッスンを受けて流氷SUPを体験されることをお勧めします(私自身、SUPスクールに4年ほど通っています)。

安全管理をきちんと行なった上で、プロと共にSUPで自然の中にお邪魔し、見る絶景や体験。この流氷SUPは私の旅人生の中でも、最高の旅のひとつです。

 

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Photos & Text:Darjeeling Kozue

Profile

ダージリン コズエ Darjeeling Kozue 20代で世界一周の旅を経験し、30代で世界中のブティックホテルやデザインホテル、ラグジュアリーリゾートなどを巡ってきた旅のエキスパート。海外旅行のガイドブックや雑誌などの編集経験もあり。本業は、外資系企業でジェネラル マネージャーを務めている。Instagram: @cozykozue

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