世界が恋する沖縄の海を伝統帆船「サバニ」でクルーズ【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】
旅のプロ、ダージリン コズエによる連載。世界中のあらゆるデスティネーションを行き尽くし、現在も国内外問わず旅に赴く玄人トラベラーが語る、“人生最高の旅”とは?
今年も夏が近づいていますね。
東京では、梅雨はどちらへ?ってほど、うだるような暑さで、7月に入ってかき氷を一体何個食べたかわかりません……。
さて、先日、私は梅雨明けした沖縄・座間味島へ行ってきました。
座間味島は、那覇から西に約40kmの距離に位置する慶良間諸島のひとつ。島は「世界が恋するケラマブルー」と言われるほど透き通った青い海、珊瑚礁、ホワイトビーチが織りなす美しい色に囲まれています。
那覇の泊港から高速船に乗り約50分でこんな絶景が広がっているのです。
以前は、休みとなれば海外のビーチリゾートへ行っていたのですが、コロナ禍で座間味と出会ってからというもの、その海の素晴らしさに恋してしまい、座間味のリピーターとなってしまいました。アクセスの良さ、かつ時差なしということで、すっかり海外ビーチリゾートから足が遠のいてしまったほどです。
そんな座間味島で、新たに沖縄の伝統木造帆船「サバニ」に乗って、美しいケラマブルーの海を帆走できるということで、Chinajun Zamamiのざまみ丸に乗船し、クルージングツアーに参加してきました。
上の写真がそのサバニ、ざまみ丸です。
透明度が高い海でまるで宙に浮かんでいるようなサバニの姿は、ケラマの自然と伝統とがマッチしていて生まれた新たな芸術のようです。
なお、「サバニ」とは、サメのことを沖縄で「サバ」と言い、また舟のことを「ンニ」、「ブニ」といい、サメ漁に使う舟というのがサバニの語源だと言われています。
そんなサバニは、かつて1本の丸太をくり抜いて作られていたようですが、時代と共に製造方法が変わり、木の板を複数組み合わせて作られるスタイルになったとのこと。しかしエンジン搭載の船が主流になるとこのサバニも一時は姿を消し、今沖縄の伝統木造帆船として復活しています。
沖縄の伝統が詰まったサバニのクルージングツアー。
風向きによって航路は変わるのですが、私が乗った時は、座間味港を出航し、目指すのは座間味島と阿嘉島との間に位置する無人島「嘉比島」です。
その日はやや向かい風で、必死にウェークと呼ばれる櫂で漕いでいきます(写真上)。乗船者みんなで息を合わせて、ケラマブルーの美しい水面にウェークを入れて、進んでいきます。
そして風を受けたら、帆を上げ、風に乗ります。
いや〜気持ちいい。
漕がなくても、木造の船が水面を切ってスーッと進んでいきます。
船は小さいのですが、アウトリガーが付いているので、とても安定しています。
昔の漁師さんたちはこの木造船で色んなところへ漁に出ていたかと思うとすごいですよね。かつて、ポリネシアの人たちもタヒチやイースター島へカヌーで波や風、星を頼りに航海に出かけていた話などを思い出し、海に生きる先人たちの凄さを実感してしまいます。
一方で私はというと、運動不足の体に喝を入れるかのように必死に漕ぎ、帆を上げてしばし休憩。ひたすらケラマブルーの海を眺めてうっとりです。
私はカタマランヨットなどでクルーズに出かける時も、動力を切って帆で進む時間が大好きなので、この自然の力で進んでいく感覚が最高に楽しい!
帆で風を受けながら、人力と自然の力のみで進むサバニっていいな〜なんて思っていると、あっという間に目的地の嘉比島に到着です。
この嘉比島付近には美しい珊瑚礁があるので、上陸してタープを張った後は、シュノーケリングへ。この辺りは珊瑚の種類も多く、美しい熱帯の魚たちや、アオウミガメやタイマイも高確率で見ることができます。かわいいクマノミちゃんたちに会うと、つい水中でも笑顔が溢れてしまいます。
シュノーケリング後は、嘉比島でランチをし、足の裏で白くサラサラのあたたかいパウダーサンドを感じながら、帰港の出発までしばし島でのんびりタイム。
座間味は、いつ来てもいいけれど、サバニでひとつ新しい楽しみが増えた、という感じです。
ちなみにこのサバニですが、2000年に開催された沖縄サミット以来、座間味島の古座間味ビーチから那覇港防波堤沖までの約40キロを競う「サバニ帆漕レース」が開催されています。
2024年の今年は6月30日に開催され、なんとこのざまみ丸が、2時間52分27秒で優勝!
私が今回ツアーでゆる〜く乗ったざまみ丸ですが、あの座間味〜那覇の外洋(結構荒れます)をそんな速さで進むなんて……と驚きです。
このレースチームのメンバーがサバニツアーをやっているChinajun Zamamiのスタッフさんということもあり、原稿を書いている今、なんだか感慨深いです。
時を超えて受け継がれた伝統が、それを旅の一部として体験できるというのもいいですね。
Photos & Text: Darjeeling Kozue