旅人こそ通ってしまう香港。そして上級者が求める全てがあるアッパーハウス【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】
旅のプロ、ダージリン コズエによる連載。世界中のあらゆるデスティネーションを行き尽くし、現在も国内外問わず旅に赴く玄人トラベラーが語る、“人生最高の旅”とは?
ちょっと前になるのですが、6年ぶりに香港へ行ってきました。
香港には東西文化、新旧、ハイ&ロウなど、相反するものが見事に融合されていて、そのなんとも言えない独特の雰囲気があります。そのせいか、周りでも旅の上級者であればあるほど何度も通っており、私自身もいつ訪れてもワクワクします。
久しぶりに行くと、やっぱりいい!と、エネルギーをもらう街です。風水をベースに建物が作られていることも関係しているのかもしれませんが、街全体が気持ちいいんですよね。
一方で、コロナ前から香港ではさまざまなことが起き、どんな感じになっているのか不安と期待が入り混じっていたのですが、全体的に「新香港」としてバージョンアップされていたように感じました。九龍島サイドには、西九龍にアジア最大級のM+ミュージアムができ、今までのこぢんまりとした街々や路地を歩きながらの旅に、立ち止まってじっくりアートを楽しむというのも入ってきたように思います。
個人的にヘルツォーク&ド・ムーロンの建築が大好きなので、彼らが手掛けたこのM+ミュージアムを展示だけでなく建物をじっくり見ることができました。
また香港島のTAIKWUN(大館)という、元警察署や刑務所があったところにできたギャラリーやレストランが入った場所にも、ヘルツォーク&ド・ムーロンの建物があり、ファンとしては、好きな街にさらに楽しみが増えたようなうれしさでいっぱいです。
そんな私の香港デビューはかなり遅く、2009年と今から15年前でした。
その時、香港で初めて泊まったホテルが、香港島・金鐘(アドミラルティ)にあるザ・アッパーハウス/THE UPPER HOUSE。今考えると贅沢でしかなかったのですが、当時はオープンしたばかりで、モダンで部屋も広く、レストランのご飯も美味しいし、アップグレードしてくれてスイートに泊まり、しかも冷蔵庫の中のドリンク飲み放題でうれしいなーという印象でした。
そんな香港デビューから年に数回通うほどになったのですが、ホテル滞在の楽しさもあるので、行くたびに色々なホテルに泊まりました。
そして今回、6年ぶりに香港へ行くことになり、初心を思い出すではないですが、THE UPPER HOUSEに泊まってみようと。
レストランなど一部リニューアルされているものの、久しぶりに泊まったら、これまたいい。こんな最高なホテルある?ってほど。
約15年の年月が経ち、私もそれなりに大人になり、数々の経験を積んだせいか、このホテルの素晴らしさが沁みると言いますか。
今回はSTUDIO70という、約68平米タイプの客室でハーバービューを選びました。ホテルは香港のスターデザイナー、アンドレ・フーによって内装を手がけられており、キングサイズのベッドがあるベッドルーム、バスルーム、パウダールーム、クローゼット、どれもモダンシンプルで温かみがあり、ゆっくりとしたつくりです。
室内は15年前の滞在からほとんど変わっておらず、私はこのバスルームからの眺めや、ベッドルームからの夜景が大好きです。
あ〜こういうのがいい〜。「うちはライフスタイル系です」「うちはラグジュアリーです」「うちはデザイン系です」とか押し付けられることなく、ホテル自体がミニマルでありながらくつろぐことができる場所。
外で遊びまくって、疲れて帰ってきて一杯飲みたいけれどバーへ行くのも面倒だなーって思った時に冷蔵庫を開けると、ビールやソフトドリンクが入っていて、これらが無料(ワインは別)。15年前もそうだったけれど、このドリンクバーのセレクトがよくって、今回は香港のローカルクラフトビールをシュワっといただきました。
また、今回特によかったなーと思ったのが、共有スペースが静かな点。基本的にホテル全体がとてもシンプルなので、SNSや動画の撮影会スポットになっていないのです。
昨今、日本の観光地でも見られますが、海外の撮影会って長いんですよね。旅先のホテルではとにかくゆっくりしたいので、ホテルのレストランやラウンジやプールなどでずっと撮影会やライブストリーミングをされちゃうとのんびりできないのです……。
その点、ザ・アッパーハウスではこういう撮影会があまり行われていない! 映えるのは部屋からの眺めなので、みなさんお部屋で撮影会となるのです。
結論、その土地らしい最高の景色が眺められながらも、室内空間のミニマルさやホテルの静けさ、そして痒い所に手が届く仰々しくないサービス。旅慣れた旅行者、特に旅の上級者がホテルに求めるものではないでしょうか。
そして、その全てがザ・アッパーハウスにはある。
15年の年月とともに、一周回って、ザ・アッパーハウスの素晴らしさに気づいた、そんな香港旅でした。
Photos & Text: Darjeeling Kozue