南スペインで出会った、マラガのイースターに飲み込まれた。【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】 | Numero TOKYO
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南スペインで出会った、マラガのイースターに飲み込まれた。【ダージリン コズエが行く、人生最高の旅】

旅のプロ、ダージリン コズエによる連載。世界中のあらゆるデスティネーションを行き尽くし、現在も国内外問わず旅に赴く玄人トラベラーが語る、“人生最高の旅”。

ながーく、くらーい、ヨーロッパの冬も終わり、春分を過ぎたくらいからパリにも春が訪れてきました。初の海外駐在生活だったのですが、ヨーロッパの冬を完全にナメていました。日照時間が短いだけでなく、雨か曇りしかない。街ゆく人々の顔も暗いというか険しい(元気なのは観光客だけ)。

そんな長い冬にお別れを告げ、春の訪れを感じるイベントのひとつが「イースター」かもしれません。街中のショコラトリーには、卵やウサギの形をした色とりどりのチョコレートがウィンドウに華やかにディスプレイされています。

イースターとは、イエス・キリストの復活を祝う日です。イエスは、亡くなった3日後の日曜日に復活したとされ、その翌日の月曜日はフランスでは祝日となり、家族で過ごす連休と言う印象でした。

と言うことで、私は友人と太陽が燦々と輝くビーチでのんびりしよう、とずっと行ってみたかった南スペイン、アンダルシア地方にある「マラガ」へ2泊3日の旅に出かけてきました。

ところが、マラガに着いてびっくり。

パリのイースターとは全く異なり、マラガでは、イースターまでの1週間「セマナ・サンタ(ホーリーウィーク)」と呼ばれる宗教行事が行われていたのです。これは、キリストの受難と復活を巨大な山車と行列とで表現するもので、毎日、街全体が巨大な舞台と化していたのです。

プロセッションと呼ばれる行列では、期間中、豪華に装飾された、いくつもの山車(トロノ)が人々によって担がれ、街中を回っていきます。パッと見、日本でいうお神輿に似ているなと。お神輿が威勢よく巡回していくのに対し、マラガのトロノはゆっく〜り街を歩いていきます。

 

 
 
 
 
 
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そして、このトロノと一緒にナサレノと呼ばれるローブに三角帽で顔を隠して歩く人たちがいます。

最初見た時は、アメリカあの団体のようにみえ、びっくりしたのですが、ナサレノは、ロウソクを持って歩き、祈りと懺悔を体現しながら行列を導く存在とのこと。

中には、裸足で歩いている人もいて、受難を表現しているのでしょうか。

 

 
 
 
 
 
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また、このプロセッション、各団体にブラスバンドもいて、日によって悲しみや喜びを音楽で表現します。

ただ、太陽とビーチだけを求めて来たところに、ものすごいお祭りに遭遇し、しかもとったホテルの目の前をプロセッションが歩いて行くので、ホテルの入り口から見られただけでなく、お部屋のバルコニーからその壮大なプロセッションを毎日見ることができたのです。

いつもなら迷わずシービューを選ぶのですが、ビーチで過ごすから割安のシティビューにしたところ、まさかのバルコニーの真下を次々と華やかなトロノがやってくると言う特等席に。

ちなみに、私たちが到着したのは木曜日の夜。木曜の夜はイエスが弟子たちと過ごした「最後の晩餐」の夜。厳かな雰囲気とともに、ちょっと恐怖を感じるような感覚に。

そして金曜日はキリストが十字架にかけられ処刑された日なので、重く、悲しみが強い雰囲気が漂ってきます。

土曜は、イエスはお墓の中なので、沈黙の時間。そのため、この日はプロセッションはなしで、前日までの賑わいとは打って変わって落ち着いた日です。

そして日曜日。イエスが蘇る復活の日と言うことで、悲しみから希望、そして喜びを祝う明るい雰囲気に。ローブも白色、トロノに飾られている花も明るい雰囲気になり、またブラスバンドが奏でる音楽も希望に満ち溢れたものへと変化していました。

この日はたまたまお昼だったからかもしれませんが、地元の子どもたちが、ナサレノが持つ蝋燭から垂れる蝋を集めてボールのようなものを作っている姿を何度か見かけました。地元の人たちとともにあるこの一大イベントに偶然にも見ることができたのはこの上ない喜びでした。

今回は、たまたま選んだデスティネーション、選んだ日、選んだホテル、全てが偶然にも、全く予想すらしていなかったプロセッションを最高に楽しめる環境に恵まれました。華やかさだけでなく、厳かな中での死、嘆き、そしてそこから再生し喜び祝うと言う、人間の感情にダイレクトに響くその空気感に私は終始ゾクゾク。

と言うのも、個人的な話で恐縮ですが、現在病気の治療をしながら海外生活をしているので、この暗闇感、そして希望の光を探して向かっていく感覚をまさに今体験中なのです。

そう言うこともあり、パリから近い場所で太陽の元、ビーチでただのんびりしたいね、っていう軽い気持ちだけで行ったので、私たちにとっては、とんでもないほどのビッグサプライズでした。

イースター当日に明るく華やかな雰囲気に変わったプロセッションを見てパリへ戻ったのですが、このマラガの旅は、心を揺さぶらされるまさに人生最高の旅へとなったのでした。

ぜひ、スペインに行く機会があれば、イースターのタイミングでアンダルシア地方の各地で開催されているプロセッションを楽しんでみてはいかがでしょうか。

*イースターの日程は毎年変わります。イースターは、春分の後の最初の満月の次の日曜日。

 

 
 
 
 
 
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ダージリン コズエが行く、人生最高の旅

 

Photos & Text:Darjeeling Kozue

Profile

ダージリン コズエ Darjeeling Kozue 20代で世界一周の旅を経験し、30代で世界中のブティックホテルやデザインホテル、ラグジュアリーリゾートなどを巡ってきた旅のエキスパート。海外旅行のガイドブックや雑誌などの編集経験もあり。本業は、外資系企業でジェネラル マネージャーを務めている。Instagram: @cozykozue
 

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