Culture / Post

幸せを学ぼう! 女性学編
ハッピーになるためのキーワードを解説

幸せの形が多様化するなか、どうやったら最大限ハッピーを享受できるのか? 科学、経済、言語、女性学…各分野の豪華講師陣がハッピーになるためのキーワードを伝授。犬山紙子が“オンナの幸せの見つけ方”をハッピーを掴んだ女性の実例とともに考える。(「ヌメロ・トウキョウ」2017年3月号掲載)

Class IV : Women’s Studies

犬山紙子の“オンナの幸せの見つけ方”

鋭い観察眼とユーモラスな語り口で、地雷女子や負け美女たちの実態を世に送り続けてきた犬山紙子が、Happy-Holicな生き方を探る企画の最終章に登場! さまざまな形でハッピーを掴み取った女性たちを、書き下ろしイラストとともに綴る。

Episode 1

友人をとことん愛するスナックのママHちゃん

私が東京で一番センスの良い女だと思っている人がいる。彼女は元々出版社で編集者として働き、20代で辞めて、フリーの編集者兼スナックのママになったので、ママちゃんとみんなに呼ばれている(年齢は私と同じ)。私がニートの頃、たまたま「おもしろいスナックができたそうだよ」と聞きつけて、オープンしたばかりのその店に行ったのだけど終わりの時間になると「さあ、お金を置いてもうみんな帰る時間」とテキパキ切り盛りしている姿に強烈に憧れた。私なら「気を悪くする人がいるかも」とか思ってしまう。でも終わりの時間にそう言われて気を悪くする人なんてロクな人じゃないだろう、彼女はお店やお客さんをああやって守っているんだ。大切なことを大切にする、そういう本質にそって行動する人なんだろう。

そんな彼女のスナックは巷で「あげまんスナック」と呼ばれている。と、言うのもこのスナックに関わった女の子たちにぐんぐん仕事が舞い込むからだ。ちなみに私も彼女と遊ぶようになってから、本を出版してテレビに出てとニートからガラリと生活が変わった一人だ。そして、彼女の元に集うホステスちゃんたちはとびっきりセンスのよい子達ばかりで、私も彼女たちの才能に触れるのが楽しくて仕方がない。

ママちゃんが幸せを感じる瞬間は?と聞いたら「友人が仕事や人生で成功しだしたときがめっちゃ幸せ。特に店を始めてここ数年は才能ある若い友人が増えたので、正当に評価されてめきめき力をつける姿を見ると幸せになる」という。友人の幸せを自分の幸せとできる人はそういない。だから、あげまんスナックなんだろう。彼女が本気で彼女たちを応援して、それがたくさんの人に伝わってみんな正当に評価されて、彼女も幸せになって。友人の一人として私も涙がでるような言葉だ。「この間もホステスがどんどんチャンスを掴んで、赤坂BLITZでワンマンライブに成功したんだよ」と嬉しそうなママちゃん。うん、応援しまくってたの私知ってるよ。

「特別なのは、恋人や家族」という、社会の制度なのか私たちにある無意識の垣根をひょいと超えて自分の軸で大切なものを愛でる。そんなママちゃんの幸せは他人にも伝染する。だから最高のスナックが出来上がってるんだろう。人と人はどんな関係性だって最高になるものなんだ。

幸せの見つけ方。彼女の場合…

「周りの人の幸せをとことんサポートすることが自らの幸せに!」

Episode 2

自由でシンプル。義足モデルのGちゃん

Gちゃんに初めて会った時の印象は「自由な空気の人だなあ」だった。グリッと大きな瞳にロングの髪に緑のロングドレス姿。私は初対面の人に変に気を使いすぎておかしなことによくなるけど、彼女は初対面の私とごく自然に話してくれて(人見知りらしいのだけど)その自由な空気が私にも移ってものすごく心地が良かった。彼女は義足モデルをやっている。と言うと私たちは勝手にいろんなことを思うだろう。義足であることに勝手に意味付をして、固定観念をぶつけて。でも、Gちゃんは自由だ。自由だからそんな固定観念の上をフワフワと美しい義足姿で踊っては、俯瞰でこっちを見ている。いいなあ、最強だ。

彼女の幸せは、美味しいご飯を食べて、気のおけない友人とバカをやって、楽しいお酒を飲んでカラオケをしているときに訪れる。特に食の優先順位が高く、ピクニックにお弁当を作って持って行ったり、夜中に無心で煮込み料理を作って精神統一したり、ひとり居酒屋をしたり、食で幸せになるチャンスを1度たりとも逃がさないハンターだ。「何かにハマれる人は凄く幸せそうでいいよね。憧れる」と言うが、Gちゃんだって食にこんだけ情熱を注いでるんだから相当なもので。そういえば偶然Gちゃんと会ったのもおいしいレストランだったっけ。凄くシンプルに人生を楽しんで幸せを感じているのだ。人目ばっかり気にして、シンプルに楽しめばいいものをこねくり回して結局わけがわからないものにしてしまう私にその姿はなんとも眩しい。

シンプルな彼女は義足がモデルとして武器になると思ったら、武器にする。面白そうと思ったらその仕事をする。人目を気にせず彼女はやりたいことをやるのだ。それは簡単なようで、強さと自信と自由さが必要だ。決してポーズじゃできないこと。「友達が『テレビでGちゃんを見てすごくかっこよくて感動したのと同時に、そんな人と私が出会うことができたのは、私も今まで頑張ってここまできたからなんだよなあって、自分の事までちょっと誇らしく思えた』と言ってくれた時に、幸せってこうやって伝染するんだって思って。この言葉を思い出すとホロリと泣けるのよ」と幸せそうなGちゃん。

彼女の周りには幸せの良い循環が存在している。人が引き寄せられるのも納得なのだ。

幸せの見つけ方。彼女の場合…

「自分らしさを見失わないこと。個性を武器にすることで幸せを掴む!」

Episode 23

欲に溢れ、生命力に溢れるスタイリストのAちゃん

「この人毎日毎日幸せがダダ漏れてるな…」と思うのはスタイリストのAちゃん。いっつも笑顔でどんな情報でも楽しそうに語る彼女は非常に欲に素直だ。旅、ファッション、食事、ネットや漫画、あらゆるものを楽しみ尽くしている。

特に旅。彼女のインスタを開けば「え? また旅行してるの?」とびっくりする。台湾のリーユエタン、タイのクラビ、ベトナムのダナンと日本ではメジャーではないけど評判の良いアジアから、パリ、ローマ、ニューヨーク、バルセロナなどザ・観光地まで。台湾なんか年に4回は行っている。写真から色とりどりの「非日常」「異文化」「楽しい」「旨い」「綺麗」が洪水のように溢れ出ていて、素直に「いいっ!いいなあ~!」と思うのだ。そこらのキラキラ系女子なんて目じゃないぜ、ガチのキラキラってのは心底楽しんでないと見せつけられないものなんだぜって。

でも、彼女はフリーのスタイリストではないから、全部会社に申請して旅行をしているわけで。「仕事よりも海外旅行」と豪語する彼女は、旅の前に仕事を終わらせ(サラッと言うけどとんでもない労働)、やりたい仕事がその期間に舞い込んだとて断るのだそう。もちろん私にそんな勇気はなく、彼女の「欲に素直に生きる」という難しさを乗り越える姿を、あと20年くらいしたらそうなりたいという、欲深いくせにチキンな私の将来の夢に重ねている。仕事欲ばっかり優先させてプライベート欲を疎かにするのもよろしくないものですもの。

そんな欲に素直な彼女の顔からは日々幸せがこぼれ落ちており、だからなのか、彼女は実年齢よりめっちゃくちゃ若く見える。旅で見つけたかわいい雑貨や家具に囲まれ、海外で見つけたブランドの洋服を身にまとい、それらを仕事に活かし、少女みたいな顔をして笑うアラフォーの彼女。「ほんと年齢なんてただの記号だな」と思う。人は年齢じゃなくて、いかに生命力に溢れるか、なんだ。そして、彼女は欲とは生命力そのものだと体現している。私だって欲を最大限楽しみきらないと死ねない、これぞ生きる力、若さなんだ。

「異国ならではの見返りのない優しさを感じると本当に幸せ。台湾に何度も行くのは本当にみんな優しいから」と言う彼女。旅行で物欲や刺激欲以外にも人間欲もしっかりチャージしている。

幸せの見つけ方。彼女の場合…

「自分なりのエナジーをチャージする方法を知っているということ」

科学的に読み解く幸せとは?
科学編

現代の働き方、お金との付き合い方
経済編

女性3人が綴る幸せのヒントとなる「言葉」
言語編

Text & Illustration:Kamiko Inuyama
Interview & Edit:Sayumi Gunji
Edit:Etsuko Soeda

Profile

犬山紙子(Kamiko Inuyama) 1981年生まれのコラムニスト、エッセイスト。出版社で編集者として勤務後、ニート生活を送るが、美女たちのトホホネタをまとめたエッセイ「負け美女」で作家デビュー。雑誌、ラジオ、テレビなど、メディアでも活躍。『嫌われ女子50』『言ってはいけないクソバイス』また、峰なゆかとの共著『邪道モテ!』など著書も多数。6月に『私、子ども欲しいかもしれない。:妊娠・出産・育児の〝どうしよう〟をとことん考えてみました』を刊行したばかり。

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