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伝説の写真家、ソール・ライターとは?

第一線で活躍しながら姿を消し、数十年後に思いがけず“発見”された鮮やかなる感性―。世界に衝撃を与えたその人生と作品史をたどりながら、来るべき展覧会に思いを馳せる。 (「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年6月合併号掲載)

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運命の“再発見”を経て東京へ
 
ソール・ライターが世界的に“再発見”された一番大きな要因は、優れた写真集やアート本の出版で名高いドイツのシュタイデル社が『EarlyColor』を出版したことだった。ライターの美しいカラー写真に惚れ込んだハワード・グリーンバーグ・ギャラリーが05年に開いた二度目の個展に、たまたまシュタイデルの創設者ゲルハルト・シュタイデルが立ち寄り、本の出版を即決したという。

この写真集の衝撃は、相当なものだった。フレームに瞬間の造形を捉える直感力、鮮やかな色彩、イデオロギーに縛られない自由な感性。無二の写真世界が現出していたからだ。いつもそこにある世界の片隅から美しい小片を切り取る……そんな感性に、多くの人々が共感したのだ。

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また、写真史を知る者にとっては、それらが主に40〜50年代の作品であることにも驚きを禁じ得なかっただろう。カラー写真が芸術として認められた70年代のムーヴメント、“ニューカラー”の時代よりはるか以前に、これほどの優れた作品が人知れず撮られていたのだから。

果たしてソール・ライターは、80歳を迎えてから世界的にブレイクすることとなった。06年にはミルウォーキー美術館で大規模個展が開催され、09年にアンリ・カルティエ=ブレッソン財団(パリ)で開催した展覧会は、同館の入場者記録を塗り替えるほどの評判を呼んだのだ。

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そして、待望の回顧展『ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展』が、ついに東京で開催される。カラー写真の傑作のみならず、初期のモノクロ作品やファッション写真も含めた本格的なレトロスペクティブになるという。

それにしても、こんなにも人々を魅了する作品でありながら、なぜ認められるまでにこれほどの時間がかかったのか? 映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』に映し出された、自己主張や自己顕示欲を極端に嫌うライターの気質を見れば、そもそも彼自身が名声を求めていなかったのだと納得するほかないが、しかし13年に逝去する前に、世界が彼の作品に気づいてよかったと思わずにはいられない。

ソール・ライターの写真を
numero.jpで一部公開

展覧会情報はこちら

Text : Akiko Tomita
Edit : Keita Fukasawa

Profile

ソール・ライター(Saul Leiter) 1923年、米ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。46年、画家を志してニューヨークへ。50〜70年代にかけて『ハーパーズ・バザー』『エル』『ヴォーグ(英国版)』などでファッションフォトグラファーとして活躍するも、81年に商業写真の世界から退く。2006年、シュタイデル社から初の写真集『Early Color』が出版され、一躍脚光を浴びる。カラー写真の先駆者として評価が高まるなか、13年に死去(享年89)。

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