人々が消えた街の現実を伝える写真展@シャネル・ネクサス・ホール | Numero TOKYO - Part 2
Art / Post

人々が消えた街の現実を伝える写真展@シャネル・ネクサス・ホール

パリと東京を拠点に活動する2人の写真家。人間には見ることも感じることもできない “それ” を伝える展覧会『Retrace our steps — ある日人々が消えた街』が、シャネル銀座で開催される。

Retrace our steps
Retrace our steps
街の光景を前にして、誰もがが “ありのままの現実” を伝えるべく葛藤する中、彼らが選んだのは、通常のドキュメンタリー的手法を超えて、その現実を “アート” として伝える試みだった。いったいどういうことか。その答えを、彼らの作品それ自体が物語っていた。 人の絶えた街路や廃棄された車に透明セロハンなどを施し、無味無臭で感知できない放射能の存在を示唆する作品シリーズ──『悪夢』。夜、闇を切り裂くフラッシュの光に浮かび上がる風景の記録『光影』。時の経過とともに市街をのみ込み、覆い尽くしていく草木を写した『不穏な自然』。スーパーマーケットの陳列棚で朽ち果てたパック肉や野菜などを収集し、それらをタイポロジカル(類型学的)な画角に収めた『パックショット』。廃墟化した街はそのままに、人々が帰還を果たした情景を描き出す『回顧』……。
Retrace our steps
Retrace our steps
「見ること、感じることのできないものは、どのように表現すればよいのだろう?」 (『悪夢』シリーズに寄せた作家コメントより) まさにこの言葉どおり、シャネル・ネクサス・ホールに展示される彼らの5つのシリーズ作品は、他のどんな手法とも異なる印象の下に、その街の風景と、そこに立ちこめる “何か” の存在を浮かび上がらせる。 それは、確かにその場所にありながら、人間には見ることはおろか、感じることすらもできないもの。あるいは逆に、それを目にする人それぞれの想いや欲求、思惑や欺瞞など、人間ゆえにどうしようもなくあふれ出て、決して逃れ得ないもの……。

目に見えない “何か” と向き合うため、シャネル・ネクサス・ホールへ。

Text:Keita Fukasawa

Profile

フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。

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