山本耕史が切り開いた未来
「今までのことは全部、この結婚のため」
山本耕史(Koji Yamamoto)俳優。0歳のモデルデビュー以来、舞台やドラマなどでずっと活躍を続ける俳優、山本耕史。プライベートでは、昨年電撃入籍をして世間を驚かせた。長いキャリアの中で、役者としてひたすら前に進み続ける原動力とは? 役者として、一人の男としてのターニングポイントを聞いた。
(Numéro TOKYO 2016年5月号掲載)
──その消化不良が俳優業へとより駆り立てたのでしょうか。
「それはあります。ドラマ『ひとつ屋根の下』で三谷(幸喜)さんが僕に興味を持たれて、22歳で舞台『オケピ!』に出させていただきました。そこで本質がばれたんでしょうね。三谷さんは僕のこと、本を静かに読んでいる優男と思っていたのに、ものすごく怖い奴で近寄れなかったと。そのときの僕は誰にもなびかなかった。でもそれがきっかけで、三谷さんは大河ドラマ『新選組!』の土方歳三役を振ってくれたんです。見た目は柔らかいけど、中身は激しいからピッタリだと。要は『RENT』の理想を曲げなかったことが、後の作品につながっているわけです。作品ごとに生まれ変われればいいんだけど、そうはならないレジスタンスが、道を開いたともいえるわけで」
──山本さんは器用で自在に変化するイメージでしたが、根は頑固。
「結局、ジョナサンが『RENT』を作ったその精神なんですよ。彼はブロードウェーの音楽の古さに辟易して、いくら周りに認められなくても、よりカッコいいものを目指して作り続けた。『RENT』は、今あるものを否定することから始まっています。主流に、何かの共同体にのみ込まれるほど、アーティストとしてみじめなことはないと僕は思う。その後“共同体”の作品にもいくつか出たけど、そうはならないという気持ちが拭えない。だからこそ出合えた作品や人もいます。この道はまんざら間違いじゃないんですよね」
──私生活でのターニングポイントは? やはりご結婚でしょうか。
「二人になったことで、何かが形となり色付いていくのはこれからでしょう。ノロケじゃないけど、今までのことは全部、この結婚のために起きたことだと思っています。いつまで戦い続けるのか、死んじゃうんじゃないかと思ったりしたけど、ここにたどり着くための道のりだった、だからもっと戦わなきゃいけないと。ただし守るものができたわけだから、自分本位ではダメだけど。うちの奥さん、まだ僕の舞台を見たことがないんですよ。舞台で共演はしていても。僕の舞台をこれから初めて見てもらうというのも、二人の新しい体験の一つ。それに、初めて見る人がこんな近くにいるとなると、もっと本領を発揮しなければいけないなって」
Photos:Yasuyuki Ishii
Stylist:Tomomi Okano
Hair & Makeup:Kazuhiko Nishioka
Interview & Text:Maki Miura
Edit:Saori Asaka