Culture / Post

宋美玄 × 田中みな実が対談! 欲張りな私たちの今どき幸せ論

仕事も恋も結婚も出産も、選択肢の増加により現代女性の生き方が多様化している。その中でもコントロールできないのが妊娠と出産。女性が人生において考えておくべきポイントとは? これから結婚、出産を考える働く女性の代表としてフリーアナウンサーの田中みな実が、女性の性や妊娠について積極的に啓蒙活動を行っている産婦人科医の宋美玄(そん・みひょん)に直撃。女の人生を左右する妊娠と出産について話を聞いた。(Numéro TOKYO 2015年9月号掲載

出産のリミットに翻弄される女性たち

──いま宋先生が気になっている現代女性の傾向はありますか?

宋美玄(以下S)「以前であれば、女性は結婚して家庭に入り、子どもを育てることが一般的でしたが、今はそうではないですよね。私は39歳ですが、この年代になると不思議なことに『産んでおかなくていいの?』『もう一人産まなくていいの?』と焦り出す人が増えてくるんです。『出産は女の証し』『女は産んでこそ』という固定観念にどこか呪われているような気がします」
田中みな実(以下T)「きっと周りからの期待やプレッシャーもあるんでしょうね。一方で、芸能人の高齢出産がメディアで取り上げられることも多いし、私自身、今後の医学の進歩で40歳でもすぐ産めるんじゃないか、とどこかで思っているんですよね。私は今年29歳のアラサー世代で今は仕事を頑張りたいのですが、卵子の老化はやはり気になっています。今のうちに卵子凍結をしておけば、45歳くらいまでは大丈夫なのでしょうか?」
S「一応、子宮に戻すのは45歳までとはいわれていますが、やはり受精卵と未受精卵では成績が違いますね。29歳で未受精の卵子を10個凍結しておけば、まあ一人くらいはできると思うけれど、保存には毎年10万円はかかるはず。かといって、卵子の老化に怯える若い子たちが手近な男で妥協してしまうのはすごくもったいない!」

T「保存費用のことを聞くと『この人かなあ?』と思う相手と結婚したくなるのは理解できるような…」
S「3年前にNHKの番組でようやく大々的に報じられた『卵子老化』の衝撃により、当時ものすごい数のメディアから女性の産み時についてのコメントを求められたんです。40歳で産めるのは一部のラッキーな人なんだけれど、35歳であればほとんどの人が産めるわけです。でもあの番組以降、35歳を過ぎたら出産は難しいかのように思われていますよね。私が最初の子を出産したのも35歳のときでした」

free-thinking generation
free-thinking generation
仕事に邁進するアラサー世代の本音

T「先生ご自身のお話も聞いてみたいです。ご主人はどんな方ですか?」
S「今までも、スペックでいえば同じようなタイプとも付き合ってきたけれど、夫は初めて『この人の遺伝子が欲しい』と思えた人。いろいろ事故物件ではあるんですけど(笑)」
T「わあ! どういう基準で遺伝子が欲しいと思ったんですか?」
S「女はいろいろな男の子どもを産めない分、優秀な遺伝子を欲しいと思うものなんですよ。だから私にとっては、自分のコンプレックスを補うものを持っている人だったんでしょうね。相手にいろいろ欠点があっても、自分も35歳になると『ダメなところは私がカバーしよう』と思えるようになる。理想を下げるのではなく、ちょっとダメなところはごっそり捨てて、譲れないところを守っていかないとね」
T「もしその方と私の年齢の時に出会っていたら、同じ決断をしていたと思いますか?」
S「していたと思う。35歳まで産みたくなかったわけではなくて、結果的に産める環境になったのがその年齢だったので。みな実ちゃんは何歳までに結婚や出産をしたい、というのはある?」

T「25歳のときは、30で結婚して、32で一人目、34で二人目を産みたいと思っていましたが、フリーになると決めたとき、結婚も出産もちょっと遅くなるだろうなと感じました。私は仕事でここまでは成し遂げたいと思うラインがあって、達成したら仕事への執着がなくなり、出産や育児に向かうのかなという気がします。いいタイミングで結婚できて、子どもを授かったら当然産みたいけれど、そこから先のことは実際に産んでみないとわからないですね。それから今は、早く30代になりたいという気持ちもあります。」
S「それはどうして?」
T「局アナの頃に取り立てていただいた『ぶりっこ』のイメージがいまだに強いんです。良くも悪くもそれで名前を知ってもらえましたし、イヤなわけではありませんが、自分の可能性をもっと広げていきたいので。30歳を過ぎれば、それ以外の部分で説得力も増してくるのかなと思いながら勉強しています。ここからどう変わっていくかというのが課題ですね」

free-thinking generation
free-thinking generation
高齢妊娠・出産に伴う「リスク」、その本質

──宋先生から、田中さんを含むアラサー世代へのアドバイスはありますか?

S「まず、20代は能天気に過ごしてください(笑)。せっかく若いんだから。でも、出産の観点からすると、30代前半までには遺伝子のコラボ相手を見つけてほしいですね。だってお産には死のリスクもあるんです。どうでもいい男の子どもを産むために死ぬなんて絶対イヤじゃないですか。だから妥協せずに、好きな相手の子どもを産んでほしいですね」
T「でもそうしているうちに、高齢出産といわれる35歳を迎えるケースもありますよね」
S「でもみんなが怖がるほど、35歳で急激に妊娠の確率が落ちるわけでもないんです」
T「その辺りのリスクって実際はどうなのでしょうか」
S「まず、何のリスクかにもよりますね。妊娠の最大のハードルは『妊娠できるかどうか』なんです。その先にも流産、染色体異常、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病とリスクは続きますが、妊娠できて流産せずに、俗に安定期と呼ばれる時期に入れば、ほとんどの人はその先も大丈夫です。ただ、35歳なら頑張れば可能性も十分あるけれど、40歳だとやっぱり運のいい人になってくると思いますね。40歳以降の高齢出産は『後期高齢出産』と呼んでもいいと思っていて。だって、一般的には39歳までと40歳以上では、妊娠できる確率自体が全然違いますから。その境界線はやっぱり37歳あたりにあるのかな、と。生殖医療に携わる人たちはみんな、この時期にガクッと下がり始めると言っています」

T「そのラインは医学の進歩でもどうにもならないんですか?」
S「不妊治療にはいろいろな方法があるし、特に出産において母子の命を守ることに関しては日本は世界一なんですよ。それでも、卵子を若返らせることだけはできません。それから高齢出産の話題としては、高齢不妊よりもダウン症のことばかりが取り沙汰されるけれど、40歳でダウン症の子どもを妊娠する確率はどのくらいあると思う?」
T「うーん…、どうなんでしょうか?」
S「大体1.2%で、1%を超えるのが39歳。ただ、もし『99%はダウン症ではない』と言われたら印象が違いますよね。でも世間ではものすごく確率が上がるかのように、また若い妊婦にはあたかもリスクがないかのようにいわれていて、ダウン症の子を産むのは高齢出産の人の自己責任みたいな話になっています。流産については、35歳で20%くらいが流産し、39歳では40%になります。でも実は、20代でも15%くらいはリスクがあるんですよ」

妊娠を控える女性がしておくべきこと

──将来出産を考えている女性が意識すべきことはありますか?

S「数年先まで出産するつもりがない人はピルを飲んだほうがいいと思います。2014年の平均初産年齢は30・6歳なのですが、これは昔なら産み終わっている年齢なんですよ。今の女性は初潮から初産の30歳まで、毎月生理と排卵があるので子宮体がん、卵巣がん、子宮内膜症や子宮筋腫が戦後すごく増えていて、妊娠しにくい環境になってしまっているんです。妊娠のしやすさだけでいえば圧倒的に20代なので、生物としてのヒトにとっては不自然な状態。そこからは目をそらしながら、ホルモン剤については不自然に感じる傾向がありますよね」
T「ピルって、妊娠しないために飲むものというイメージが強くて、妊娠しやすい体づくりという発想はあまりないと思います。知識として知られていなかったり、面倒なイメージがあるのかもしれません」
S「生理に振り回されるのではなく、こっちからコントロールしていかないと。あとは後々、妊娠しにくいと思って受診したら子宮筋腫が見つかった、ということにならないためにも、少なくとも健康に問題はないかどうか、婦人科での定期的なチェックは絶対に受けたほうがいいと思いますね。ほかには禁煙、それから過度なダイエットをしないことくらいかな」

──働く女性に多い、ハードワークや不規則な生活についてはどうですか?

S「不規則、寝不足、ストレスはどれも排卵周期には良くないけれど、将来子どもを持つために仕事を辞めたほうがいいのかといえば、そこまでではないと思います。もちろん改善できるのであればしたほうがいいけれど。私の場合、プライベートにしても仕事にしても、やり切った感を得る前に産んでいたら、子育てがけっこう苦痛だったと思います。もっと割り切っている人もいるけれど、産んでみて初めて自分が、子どもと長い時間一緒にいたい、寂しい思いをさせたくないと考える母親なんだと気付かされたんです」
T「私も以前は仕事も育児もきちんとできるだろうと思っていたんですが、30歳が見えてくると、何一つ捨てることなく完璧にこなすことはできないかもしれないと思えてきました」
S「仕事で刺激を受けることで、それを子育てに生かせたり、子育てがまた仕事に生かせることもありますね」
T「もし私が子育てに専念することになったら、子どもに過度な期待をかけて、教育に没頭してしまいそうな気がします。子どもにプレッシャーを与えない意味でも、仕事は続けたほうがいいのかもしれないですね。今日は面白かったです。私が5年後まだ独身だったら、もう一度対談させてください!」

(田中みな実着用分) ワンピース ¥59,000/alice + olivia、(ルック)バングル ¥28,000/スタージュエリー表参道店
 
Photo:Ayako Masunaga Styling:Takako Ogawa
Hair & Makeup:Erina Shibuya Text:Misho Matsue Edit:Sayaka Ito, Saori Asaka

宋美玄(そん・みひょん)

1976年、神戸市生まれ。大阪大学医学部医学科を卒業し、同大学産婦人科に入局。現在は都内の病院にて診察に従事しながら、著書の出版やメディアへの出演も活発に行う。2012年に第1子を出産し、現在は第2子を妊娠中。性科学者としても活動し、女性の性や妊娠について積極的な啓蒙活動を行っている。

田中みな実(たなか・みなみ)

1986年、ニューヨーク生まれ。2009年にTBS入社、アナウンサーとして『サンデージャポン』など人気番組の司会を務める。14年に独立し、フリーアナウンサーとして活動開始。主な出演番組は『有吉ジャポン』『ジョブチューン アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』『ザワつく!?ウィークエンドTV ニュースな晩餐会』。

Recommended Post

Magazine

ec

November 2019 N°131

2019.9.28発売

Joyful!

幸せのエネルギー

オンライン書店で購入する